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NPO釜ヶ崎 現場通信 79号

衆議院本会議(10月14日) 横路孝弘(民主党・無所属クラブ) 対 小泉総理
自殺・ホームレス・生活保護受給者の増加をどうする

現在、第 161回臨時国会が開催されている。この臨時国会に、釜ヶ崎支援機構は「ホームレス対策予算確保に関する請願」を、7月から準備した請願署名を添えて提出することにしているが、冒頭の代表質問でも、すでに質疑が始まっている。これを受けて、今後、厚生労働委員会等で論議が深められる事が期待される。国会の動きを見ながら、請願提出をおこない、論議の具体化を促進していく。

10月14日、横路孝弘衆議院議員は、民主党・無所属クラブを代表しての質問の中で、自殺の増加、生活保護受給者の増加、ホームレス全国調査の数字、所得格差の増大、自営業の廃業数等々、具体的に数字をあげ、「行財政改革」が弱者切り捨てになっており、小泉総理がどのような社会を目指しているのかと問い質した。

それに対して小泉総理は、「弱者を切り捨てるのでなく、努力が報われる社会を目指す」と述べた後、引き続き次のように述べた。

「自殺者、ホームレス、生活保護受給者の増加についてでありますが、これら増加の原因につきましては、バブル経済崩壊後の長期にわたる経済の低迷が大きな要因の一つと考えています。政府としては、精神面・経済面で問題を抱えた方々が、勇気と誇りを取り戻して、再び安定した生活を送れるよう、それぞれの方の実情に応じた、自殺予防のためのきめ細かな対応、自立・就労支援策の強化に努めていきます。」

とりあえず、小泉総理大臣は、「政府としては、自立・就労支援策の強化に努めていきます」といったということだ。それを踏まえて、「ではその中身は」という現状施策の再検討、現状で欠けている施策の新たな提起という論議に進んでいくことが期待される。

政府の対策強化の中身が、緊急雇用創出交付金の打ち切り、概算要求で明かな厚生労働省の34億円という予算規模と自立支援センターや相談事業を軸とした対応策等の現状の肯定であれば、それは「実情に応じ」ていない、「強化」になっていないと強く指弾し、請願実現を求めなければならない。


野宿者の命綱 風前 / 交付金、年度末で廃止 / 釜ヶ崎

日雇い労働者の街、大阪市西成区の釜ヶ崎で、高齢者や野宿者らが頼みの綱にしている大阪府と大阪市による清掃事業が存続の瀬戸際にある。国の緊急地域雇用創出特別交付金が今年度末で打ち切られるが、財政難の府と市が財源を肩代わりするのが厳しいからだ。公園や道路などを清掃して日給 5700円。1日 250人の枠に平均 60歳の 3100人が登録するが、雇用枠が大幅に削られることは確実で、「一日一食」もおぼつかない人たちの不安は大きい。

推定で約 2万 1千人の日雇い労働者が暮らす釜ヶ崎。ここでの生活が 20年という男性(57)は 7日朝、大阪市内の廃校となった小学校で、約 20人の人たちと雑草を刈り集めていた。

釜ケ崎での収入は、月に数度の清掃の仕事と、空き缶拾いを合わせて約 3万円。1日 1回、支援者からの弁当を食べ、後はパンの耳をかじって空腹を紛らわす。「掃除の仕事が減ったらどうやって飯を食えばいいのか」。体を壊してこの 6年公園やガード下で野宿を続けている。

「特別清掃事業」は 94年度から始まり、府の西成労働福祉センターが 55歳以上を対象に仕事をあっせんする。04年度の予算は 7億 7千万円で、うち 6億 2千万円を国が、残りを府と市が負担している。交付金は当初、01年度で時限的に打ち切りになるはずだったが、不況のさなかの緊急措置として違う名称で残った経緯がある。だが、今年 5月、坂口厚労相(当時)は国会で、「失業者に一時的に職をつないでもらい、本格的な雇用にどう結びつけるかということでスタートした。今後も続けることはできない」と答弁した。

釜ケ崎での求人状況は悪化の一途をたどる。同センターによると、55歳以上の求人は 95年度、11万人あったが、03年度には 2万 4千人に激減。清掃事業の登録者を対象とするアンケートでは、今年 5月の収入が 2万円以下の人は半分近くを占め、7割強が野宿生活か、大阪市が設置したシェルター(臨時夜間緊急避難所)にいた。

NPO法人「釜ヶ崎支援機構」の今年 5月の調査では、直近 1週間で「毎日 3食」の人は 4人に 1人。「 1日 1食は食べている」と答えた人は 3人に 2人にも満たず、「 1日何も食べられなかった」経験のある人は 1割を超えた。

同機構は新宿ホームレス支援機構(東京)と北九州ホームレス支援機構(福岡)とともに、新たな支援策を求める署名活動を実施。3団体で 7月から集めた署名は 3万人を超え、12日に開会の臨時国会に請願を出す。

「一自治体で対応できる問題ではない」などとして、府と市はあくまで国に助成を求める方針だが、経済団体や連合大阪などと連携し、路上生活者の就業支援の検討も始めた。しかし、財政の厳しさに変わりはなく、府は 05年度から、釜ヶ崎の日雇い労働者に年 2回支給していた冬の「モチ代」( 1万 8400円)、夏の「ソーメン代」( 1万 6900円)をやめる。

朝日新聞・大阪・夕刊・2004年 10月 12日 より