NPO釜ヶ崎 現場通信 111号
3月、特掃登録の切り替えが始まります。
今年も「生活保護についての同意書」がいります。
住民票など「年齢を証明する書類」は切替では不要です。今年のカードのみ必要です。
3月 13日から来年度( 4月 1日~)の登録のためのカードの切替が始まります。今年カードを持っている人については、再度住民票などの「年齢を証明する書類」の提出は必要ありません。今年のカードを持っていけば切替ができます。ただし、「生活保護を受けていないことを確認してもよいこと」に同意する大阪市長あての「同意書」の提出は必要です。今年も当初 2530人が登録していたが、生活保護を受けていることがわかって特掃の資格を失った人、生活保護を受けたからと自分からカードを返しに来た人が合わせて 359人おり、現在の実登録者数は 2169人である。
もともと特掃は生活保護の受給者は登録できない。今年度から「同意書」を書いてもらうようになったのは、それぞれの「良心」に訴えて「特掃は生活保護を受けられない高齢日雇労働者と野宿生活者のための仕事です。生活保護を受けた人が仕事に来るとその分受けられない人の仕事が減ってしまいます。」といっていても、生活保護を受けながら特掃に来る人があとをたたず、受けられない人からは「何とかしてくれ」といわれ続けてきたからだ。たしかに、生活保護の金だけでは余裕がない。しかし生活保護を受けている人まで特掃に来ると、受けていない人は就労日数が減りいっそう苦しい生活を強いられることになる。パイが限られているからだ。
それぞれではどうしてもでききれない部分があるので、制度として「生活保護を受給していないことを確認する」となった。年度途中に生活保護を受けるようになった人も同じように特掃にはこれません。今年度も 2回、年度途中での受給開始者の資格停止がおこなわれた。生活保護を受けている人、受けられる年齢の人、まだ受けられない人、それぞれの層がそれぞれの制度をきちんと利用してこそ、みんなが生きることにつなげられる。
65歳以上の人は生活保護、60歳以上の人は特掃以外の短時間の仕事と合わせての生活保護の利用が可能だ。そのためにも、NPO事務所 2階の福祉相談、南職安跡地のお仕事支援部での就職相談も利用してほしい。
住民登録「適正化」の問題は、職権消除では解決しない。
簡宿での登録周知で問題は解決するのだろうか。市は抜本的に再検討すべきである。
大阪市は、3月 2日付で釜ヶ崎解放会館・NPO釜ヶ崎・ふるさとの家の 3箇所に残っている住民登録を職権で消除する事務手続きを進めてきた。2月 23日に西成区役所から発送された「消除予告書」は 2643通であり、このうち 3月 2日までに他の場所へ移せない人は住民登録を失うというものだった。昨年 12月 20日の段階で 3箇所に住民登録していた人の総数が 3686人であるから、そのうちの 72%が住民登録を失ってしまうことになる。残りの 28% 1043人は他に移して消除をまぬがれたが、そのうちのほとんどは、なけなしの金をはたいて緊急避難的に簡易宿泊所に泊まり、そこに移した人である。つまり住民登録が集中して問題となりやすいか、あるいは拡散して目立たなくなるかの違いでしかなく根本的な解決には何もつながらない。大阪市は 3月 1日大阪高裁での消除差止の仮処分決定の後、予定を延ばして簡宿への登録ルール作成と周知期間を設けるとしたが、泊れる人はすでに移したと考えるべきで、泊まれない人は消除されてしまう。
1月 22日~ 29日に特掃登録者に実施した住民票についてのアンケートでは、1270人の対象者のうち 1226人(96.5%)から有効回答を得た。そのうち約 73%が住民票を置いている場所と実際に住んでいる場所が相違している。
現在住んでいる所に移せない理由は、「住むところが定まっていない」「シェルターや公園で設定できない」が空白回答を入れた全体で 66% 3分の 2、空白回答を除ければ 83%と 5分の 4以上を占めている。大阪市には、この現実をしっかりと見て、表れた問題を職権消除で解決しようとするのではなく、日雇労働者と野宿生活者が安定して就労でき野宿生活を脱して堂々と市民社会の中で生きていける施策を進める責任がある。