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NPO釜ヶ崎 現場通信 109号

「住民登録についてのアンケート」に協力を。

「住民登録の適正化」が、「選挙人名簿からの抹消」 「住民登録の消除」ということになるとしたら、 野宿生活者や釜ヶ崎労働者から市民権を奪い、「住所不定者」「市民ではない者」との差別感を 強めることになる。

昨年 12月以降、特別清掃に来ている労働者の中でも大きな不安が出ている NPO釜ヶ崎をふくむ3つの支援団体の建物での住民登録の問題について、新しい動きがあった。今年の 1月 12日に、大阪市の選挙管理委員会が 2003年 4月の統一地方選挙から現在までの選挙での 3つの支援団体の建物にある住民登録者の中で、選挙に行った人の数を発表した。選管の発表では、3つの建物全体で見た投票率は、いずれも 4~ 13%程度と西成区の平均を大きく下回っていたとのことである。

ある新聞では、「投票率が低かったことから投票を目的にした住民登録ではないとの調査結果」であるが、統一地方選の告示日までに、選管は適正化をはかると報じていた。しかし他方で、選挙人名簿が確定する 3月 29日までに、居住実態のない人については、選挙人名簿から抹消する方針であると報じているところもある。

大阪市のおこなう「適正化」が、もしも選挙人名簿や住民登録の抹消になるとするならば大きな問題だ。

3つの建物に住民登録している人のほとんどは、簡易宿泊所(ドヤ)や飯場を転々とせざるをえない日雇労働者と、シェルター利用者をふくめ野宿生活を余儀なくされている人たちである。固定した住居をもてないがゆえに、実際に起居しているところを住民登録先にはできないが、大阪市内に生活の本拠を置いて居住しており、大阪市民として暮らしていることにかわりはない。

国外に居住する人でも「在外選挙人」として登録されていれば、国政選挙権は与えられている。大阪市内を生活の本拠とする市民が、特定の場所に「居住実態がない」との理由のみで選挙権を失う事態になるとすれば、大阪市は人権を侵害して市民権を剥奪しているといわれても仕方がない。また、どこに住民票を置けばよいか、代替策を示さないまま住民登録を消除するならば、大阪市が、固定した住居をもてない人(ホームレス状態の人)は大阪市民である必要がないと言っているに等しい。そうなれば、特別清掃に限ってさえも、新規登録時に3つの建物に住民登録があった500人をこえる登録者の市民的権利が、失われてしまうことになる。これは、大阪市自身が進めてきた「あいりん」対策・ホームレス対策の流れに逆行するものであると言わざるをえない。

当人たちが権利を失うことのないように慎重かつ十分に配慮して対処すること」を求め、「臨時的措置として、住民登録先として住所設定できる場所・機関を大阪市が指定する」「相談窓口を設けて、代替措置を講じる」「『居住実態のない者に対する住民登録の可否』にとどまらないあいりん対策・ホームレス対策の一環として解決をはかるため、検討機関を設け両法人を参画させる」ことを要望している。

大阪市は、市民局、選挙管理委員会など各部局別々に問題を考えるのではなく、関係各部局で統一した対応をおこない、この間のあいりん対策・ホームレス対策の流れに沿って、固定した住居を持つことができない市民を、市民として社会に迎え入れる方策を採るべきである。

このアンケートは、住民登録についての現状と労働者のこうむる不利益は何かを集約することで、適正な解決に向けていくために役立てていきたい。短時間で終わるので、各現場で書いてほしい。

いま釜ヶ崎解放会館・NPO釜ヶ崎・ふるさとの家に住民票をおいている人には、2月以降「実際に住んでいるところに住民登録を移してください」というような内容の通知が、西成区役所から送られてくる場合もありうる。もし通知書が来れば、それを持って西成区役所に「どこに移せばよいのか」相談に行く必要がある。行かなければ消除されて本籍地に戻ってしまうからだ。

簡易宿泊所(ドヤ)でも実際に泊まっていれば、住民票の設定は認められている。今ドヤに泊まっている人はそこに移す方法もある。ほとんど毎日シェルターに泊まっている人はシェルターで「居住実態」が認められるかどうか、寝場所が定まっていない人は「移せるところを教えてほしい」と、区役所で粘り強く相談する必要がでてくる。