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NPO釜ヶ崎 現場通信 110号

釜ヶ崎解放会館・NPO釜ヶ崎・ふるさとの家に住民票をおいている人は、
1月 26日に届く「届出催告書」を持って、西成区役所の相談会に行こう。

「住民登録の適正化」が、「選挙人名簿からの抹消」「住民登録の消除」ということで動き出した。
野宿生活者や釜ヶ崎労働者から市民権を奪い、「住所不定者」「市民ではない者」との差別感を強めることになる。大阪市は「居住実態」を理由にするなら、全員に生活保護をかけ、居住場所を与えるべきである。

昨年 12月以降、特別清掃に来ている労働者の中でも大きな不安が出ているNPO釜ヶ崎をふくむ3つの支援団体の建物での住民登録の問題について、大阪市がいよいよ職権消除に向けて動き出した。住民登録できる先も代替策も示さないところで、「届出催告」や「消除予告」の事務手続きを進めていくことは、固定した住居を持つことができない人にとっては、住民登録の消除とならざるをえない。

3つの建物に住民登録している人のほとんどは、簡易宿泊所(ドヤ)や飯場を転々とせざるをえない日雇労働者と、シェルター利用者をふくめ野宿生活を余儀なくされている人たちである。固定した住居をもてないがゆえに、実際に起居しているところを住民登録先にはできないが、大阪市内に生活の本拠を置いて居住しており、大阪市民として暮らしていることにかわりはない。

国外に居住する人でも「在外選挙人」として登録されていれば、国政選挙権は与えられている。大阪市内を生活の本拠とする市民が、特定の場所に「居住実態がない」との理由のみで選挙権を失う事態になるとすれば、大阪市は人権を侵害して市民権を剥奪しているといわれても仕方がない。また、どこに住民票を置けばよいか、代替策を示さないまま住民登録を消除するならば、大阪市が、固定した住居をもてない人(ホームレス状態の人)は大阪市民である必要がないと言っているに等しい。

NPO釜ヶ崎は、昨年12月27日に、ふるさとの家と連名で大阪市に要望書を提出した。「ホームレス自立支援法の精神にかんがみ、当人たちが権利を失うことのないように慎重かつ十分に配慮して対処すること」を求め、「臨時的措置として、住民登録先として住所設定できる場所・機関を大阪市が指定する」「相談窓口を設けて、代替措置を講じる」「『居住実態のない者に対する住民登録の可否』にとどまらないあいりん対策・ホームレス対策の一環として解決をはかるため、検討機関を設け両法人を参画させる」ことを要望してきた。

それゆえ今回の決定は、きわめて遺憾である。大阪市は、この間のあいりん対策・ホームレス対策の流れに沿って、固定した住居を持つことができない市民を、市民として社会に迎え入れる方策を採るべきである。「居住実態」のみを根拠にするならば、固定した住居を持つことができるよう、全員に生活保護をかけて野宿生活から脱出させた上で安定した就労を提供すべきであるし、それがすぐには難しいのであれば、住民登録できる場所を暫定措置として定めるべきである。市民権を奪う消除をするのではなく、堂々と住民登録できる状態をつくることが行政のとるべき施策である。

【現時点でわかっていること】
  • ① 現在、国民健康保険・介護保険・障害者手帳などが生きている人は、住民登録が消除された場合でも、当面保険関係を継続させる措置がとられる。
  • ② 白手帳の保持や更新(紛失のときの再交付は除く)は、住民登録が消除された場合でも、当面影響は出ない。
  • ③ 年金受給の継続に影響が出るかどうかは、まだ詳しいことがわかっていない。