NPO釜ヶ崎 現場通信 103号
特別清掃の目的、お仕事支援部の目的
特掃は月平均3.5回就労 その他の就労支援は?
今年度の特掃の輪番登録者数は2530人、ただし、生活保護を受けているため登録取り消しになった人が147人おり、実数は2383人となっている。一番登録者が多かった2001年から比べれば実数で920人、2004年の3100人から比べれば実数で717人減ったことになる。
しかし、この現象は、特別清掃を必要とする人が減ったことによるものではない。2001年から2002年にかけて482人減ったのは、この時期から本格的に「生活保護の受給者は特掃はだめです」と訴えたことによる。2004年から2005年にかけて316人減ったのは、国の特別交付金がなくなって大阪府と大阪市の単独費用に移行したことによる特掃存続への不安などがあったと考えられ、今年度実数で401人減ったのは、今年度から生活保護受給者への登録取り消しが制度化されたことによる。
年度 | 登録者数 |
---|---|
1999年 | 1,966人 |
2000年 | 2,815人 |
2001年 | 3,303人 |
2002年 | 2,821人 |
2003年 | 2,893人 |
2004年 | 3,100人 |
2005年 | 2,784人 |
2006年 | 2,530人 ( 2,383人) |
昨年度、特別清掃事務所でおこなわれた健康診断(7月末)の総受診者が1446人、9日間で行われ、毎日20人がセンター清掃であったことを考えれば、その時期の実就労人員は約1600人であり、今年度も7月前半で輪番が一回りするのに紹介実日数で約7.5日だから、実就労人員は約1600人と昨年と変わらない。
ということは、次の施策が十分に動き出し、この就労層を包摂できるようになるまでは、特別清掃の存続は不可欠であるということだ。ただ、特掃自体が自己目的なのではなく、働ける人は働いて収入を得、高齢や病気の人は安心して暮らせる、みんなが畳の上で暮らして自立し、社会に再参入していける仕組みを作っていくことが目的であり、そのために、釜ヶ崎支援機構では特別清掃以外にもさまざまなメニューを進めている。
ひとつはお仕事支援部での就業相談・就業開拓や内職の提供事業、住之江公園・住吉公園での就労体験事業など。ひとつは主に60歳以上の人などの生活保護への移行を支えていくための福祉相談、また、技能を修得し就業自立していくための自転車や園芸等の技能訓練と事業化の準備、憩いと交流の場を提供するための「禁酒の館」など。この中には受託事業で行っているものもあればNPO釜ヶ崎自身の事業として行っているものもある。さまざまなメニューを用意することで、一人でも多くの人が自立に向けて歩みだせるようにしたいという趣旨だ。しかし、独自事業の維持は財政的に極めて厳しい。また受託事業もそれを必要とする人に十分にいきわたるだけの量はない。だが、いずれも野宿生活から脱出していくための自立支援策として欠かすことができないものばかりである。そこで必要になるのは財政的裏づけと、それぞれの支援メニューの目的をしっかりと捉えることだ。この間NPO釜ヶ崎がうったえてきた特別清掃からの生活保護受給者の卒業も「特掃定年制」化も、その流れの中にある。
特別清掃は、あくまでも野宿を余儀なくされる人への事業であり、現実にはなかなか生活保護の受給へとつなげることが難しい層を対象にしている。生活保護を受けられる層の人たちは生活保護を積極的に受け、アパート生活を土台に就労・半就労・病気療養を目指す、その他の人が特別清掃を利用するという棲み分けが必要だということだ。現実の生活保護適用においては年齢基準が大きなウェイトを占める。同時に、さまざまな事情で年齢以外の基準を満たせない人には、その事情を解決して生活保護に移行していくためのさまざまな支援方法がある。それぞれの層が現実に生きていくには、個々人の思いにゆだねるだけでは限界がある、どこかで線引きせざるを得ないということだ。
棲み分けが必要ということは、お仕事支援部での公園の就労体験も同じことである。就労体験の目的は特別清掃とは異なり、建設日雇い以外の常勤やパートの仕事を探していこうとする人に就労体験を提供して、就労リズムを整えていってもらおうというものなので、第二特掃や第二輪番ではないということを認識してほしい。仕事がない中で少しでも現金を得られる仕事がほしいという気持ちは重々わかるが、求職活動を積極的にしていきたいという人の就労体験への参加が圧迫されることにならないようにしたいものだ。
7月13日市民検診、65人受診
萩之茶屋小学校で行われた市民検診には、予約した100名のうち62人とその他3人の合計65人が受診した。去年まで行われた特掃検診は、2003年917人、2004年1238人、2005年1446人と毎年受診者が増えており、血液検査などレントゲン検診だけでない総合検診への期待と需要が大きかったと考えられる。
新たな予算での特掃検診の再開が望まれる。