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NPO釜ヶ崎 現場通信 108号

謹賀新年

2007年の年が明けました。「新年おめでとう。今年はよい年でありますように」とあいさつしたいところだが、はたして今年はどういう年になるのか。

今年は、「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」の制定から 5年を迎え、国の対策がどうなっていくのか、それに伴って大阪府や大阪市の対策がどうなっていくのかが決まる節目の年となる。新年早々から 2回目の「ホームレスの実態に関する全国調査」も行われる。大阪市内では、NPO釜ヶ崎や巡回相談員が調査に廻るので、声をかけられたら協力してほしい。この調査に基づいて、野宿から脱することができ、そして野宿しなくてもよくなるセーフティネットを、国が積極的に整備していくことが望まれる。国や自治体の財政危機が取りざたされているが、一方で企業減税が目指されながら、もう一方で野宿対策や社会保障への財政支出が削減されていくならば、今いわれている「格差社会」をさらに広げていくことにしかならない。

2007年は、特別清掃にとっても大きな節目の年となる。就労施策はどういうものに変化していくのか、2008年度から特掃が維持されるのか削減や廃止されていくのか、形が変わっていくのか。生活保護施策もまた、変化の方向が見えてくる。昨年末には、住民登録の問題であわただしい動きがあった。この1年、危機感を持って、施策の動向を注視してほしい。

今年がよい年でありますように。


釜ヶ崎での住民登録の問題について、昨年の12月27日、NPO釜ヶ崎とふるさとの家の両法人で、大阪市市民局に、「固定した住居を持つことができない人たちが市民としての権利を失うことのないよう慎重に対処し、住民登録できる所を大阪市が指定するなどの代替措置を早急にとってほしい」との要望書を提出してきました。

住民登録問題に関する要望

大阪市長 関 淳一 様

2006年12月27日

大阪市西成区萩之茶屋1丁目5番4号
特定非営利活動法人 釜ヶ崎支援機構
理事長 山田 實

大阪市西成区萩之茶屋3丁目1番10号
社会福祉法人フランシスコ会 ふるさとの家
施設長 吉岡 政子

本年12月20日に、大阪市市民局が「『あいりん地域』での住民登録問題について」と題する文書を記者発表し、その中で「市民局において調査した結果、新たに2箇所で同様の住民登録があることが判明しました。」として、西成区萩之茶屋1丁目5番4号にある釜ヶ崎支援機構に129人、西成区萩之茶屋3丁目1番10号にあるふるさとの家に27人の住民登録があることを発表しました。それに伴い、報道各社は、「架空登録」「違法登録」「虚偽登録」と報じました (以下、本件住民登録問題という) 。

釜ヶ崎支援機構とふるさとの家の両法人(以下、両法人という)は、本件住民登録問題により、釜ヶ崎(あいりん地区)の日雇労働者や市内で野宿生活を余儀なくされている人々などが、住民登録を失ったり、新たに登録できなくなることによって、市民的諸権利を得ることができなくなり、自立への道を閉ざされてしまう結果になることを深く憂慮しています。

日本において、「住所」として設定できる固定した住居をもつことができない状態にある市民が多数存在することを認め、その対策が国・地方自治体ならびに国民の課題であることを宣言した、ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法の精神に鑑み、大阪市がこれらの市民の住民登録問題に関して、当人たちが権利を失うことのないように慎重かつ十分に配慮して対処することを求めるとともに、この問題の解決のために下記の事項を要望するものです。

  • 1、住民登録は、雇用保険手帳の取得に限らず、選挙権・被選挙権、国民健康保険等社会保険制度への加入、年金手続き、運転免許証の取得(再交付ふくめ)、印鑑証明書・住民基本台帳カード等の身分証明の取得、預金通帳の作成など、ありとあらゆる市民的権利を得るために欠かせないものであることに配慮して、職権消除に偏ることなく、固定した住居をもつことができない状態にある市民が、どのようにすれば住民登録することが可能となるのか、ソーシャルインクルージョンの視点からの積極的施策として検討し、対処していただきたい。
  • 2、本件住民登録問題の解決は、「居住実態のない者に対する住民登録の可否」にとどまらない、「あいりん」対策とホームレス対策の一環としてはかる必要があるとの認識に立ち、本件に関する検討機関は、大阪市内部の関係各部局にとどまらず有識者等を含めて広く構成し、その中に利害関係団体として両法人の参画を認めていただきたい。
  • 3、検討機関による討議の結果、対策が実施されるまでの間、住民登録先として「住所設定」できる場所・機関を大阪市が指定して、そこに住民登録してもらう暫定的・臨時的措置を行っていただきたい。
  • 4、両法人の事務所・施設、ならびに既判明分として挙げられている萩之茶屋2丁目の釜ヶ崎解放会館を「住所地」として住民登録している人に対して、職権消除する前の通知をするだけでなく、西成区役所内に臨時的に、本件住民登録問題についての相談と援助のための窓口を設けるようにしていただきたい。そこで、他所に住民登録できない理由が、固定した住居がない場合であれば住居を与える、借金等であれば法律相談につなげる等の援助をおこなうなど、当該場所が住民登録先として認められない場合の代替措置を講じられるようにしていただきたい。
  • 5、3項における指定場所・機関が定まるまでの新規住民登録についても、4項の措置に準じて、相談窓口での対処と代替措置をお願いしたい。
  • 6、ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法に基づく国の基本方針の見直しにおいて、ホームレス等の住民登録対策を、必須の課題として国に求めるとともに、大阪市の基本計画の見直しにおいても、必須の課題として検討していただきたい。