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NPO釜ヶ崎 現場通信 77号

厚生労働省来年度ホームレス対策予算概算要求 34億 3200万円
新規事業はホームレス就業支援事業(仮称) 1億 4500万円のみ

8月 31日は、来年度予算概算要求の締め切り日。厚生労働省の「ホームレス対策」概算要求額は、今年度予算より約 4億円増の 34億3200万円。増額部分の多くは、相談とか技能講習などで、新規事業はホームレス就業支援事業(仮称)のみ。

その内容は、「野宿生活を余儀なくされているホームレスのうち就業意欲のある者を対象に、ホームレスの就業ニーズに合った仕事の開拓・提供、就業支援相談や職場体験講習を実施し、就業による自立を支援する。」とされている。1億4500万円は 4地域分だから、単純に計算すると 1地域あたり 3625万円ということになる。対策メニューの豊富化は望ましいことであるが、いかんせん予算規模が現実の必要に対応していない。

現実の必要に対応するとはどういう事か。大阪でいえば、現状の就労事業を、「就業ニーズに合った仕事の開拓・提供」に沿うものと認め、予算規模を 100倍にし、10割国負担とすることだと考える。そうすることによって、大阪で野宿を余儀なくされている多くの仲間が、特掃で働き簡宿(ドヤ)で生活してご飯を食べられるようになる。そういった状況を一旦産み出して、職業相談や技能講習を押しすすめることによって、徐々に特掃の規模を減少することも可能となる。

残念ながら、概算要求の中では、特掃の継続・拡大につながるような内容を見いだすことはできない。

特掃を支えている予算のほとんどは、緊急地域雇用創出特別交付金であるが、8月 23日朝日新聞が伝えたところによると、厚生労働省が緊急雇用創出特別交付金の衣替えとして考えているのは、「地域提案型雇用創造促進(パッケージ)事業」というものらしい。市町村や経済団体などで協議会を造り、年 1回の「コンテスト」に応募、厚生労働省と有識者で審査し、認められると協議会に事業委託される。予算規模は単年度で 1協議会あたり 2億円。最大 2回更新できるという内容。

緊急雇用創出特別交付金の後継策がこれだけだとすると、特掃の見通しは暗い。


「ホームレス対策」予算確保請願署名 現在約 2万 9千名

ホームレスの自立支援等に関する国家要望(案)

平成16年8月24日(火)

自由民主党/東京都ホームレス議員連盟(東京都議会、区議会)/ザ・ホームレス・フォーラム(大阪府議会)/自民ホームレス問題研究会(大阪市会)

ホームレス問題は今や大都市ばかりでなく中小都市にまで広がる全国的な社会問題となっており、ブルーテントの見えない都市は、もはやどこにもない状態であります。―略―

ホームレス問題はホームレス自身の生活面に重大な影響を与えており、人道上も看過できない問題です。研究によればホームレスの路上死は、相当な数にのぼっており、先進国の大都市でなぜ餓死・凍死するのかと指摘されております。また、一方、ホームレスによる公園や道路、河川敷等の占有による地域住民の利用阻害は多くのあつれきを生じており、速やかに改善されるべき問題です。ホームレスを巡っては世間で様々な意見がありますが、ホームレスに対して厳しい見方をする理由は多くこの点にあると思われます。―略―

ホームレス対策は多岐に亘りますが、その中でも重要な下記の点について、国において取り組まれるよう要望するものであります。

  • 1 ホームレス等の就業機会の確保に関すること
    • (1) ホームレスの就労による自立に関すること
      • ○ 雇用政策の根幹を担う国においては、厳しい雇用情勢に対応した公的機関による雇用就労機会の創出策をはじめとして、就労による自立が可能となる実効性のある就労支援策を講じられたい。
      • ○ 河川、道路など国所管の公共施設の維持・管理業務にホームレスの就労支援策を組み込まれたい。
    • (2) ホームレスとならないための予防に関すること
      • ○ ホームレスの相当数が山谷・あいりん等の寄せ場での就労経験を有しており、ホームレス対策を進めるためには、こうした「ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者が多数存在する地域」を中心として就業の機会の確保、生活上の支援が極めて重要である。国においては、ホームレス化の防止の観点から特別の財政措置等の支援を講じられたい。
      • ○ また、山谷・あいりん地域等の寄せ場を就労拠点としている高齢日雇労働者に対し、特別就労事業の創設や雇用保険受給要件の緩和等の措置を講じられたい。
  • 2 ホームレスの生活保護に関すること
    • ○ 高齢や傷病等により就労自立することが難しく、他法他施策でも対応困難なホームレスに対しては、生活保護を適用してきている。しかし、ホームレスが全国から大都市に流れ込んでくる中、ホームレスが多く存在する大都市にとって、生活保護費の負担が過重なものとなっており、こうした財政負担を一手に大都市が負うことは不合理である。ついては、財政負担の新たなルールを創設するなど、ホームレスへの生活保護費の負担が大都市に大きく偏ることのないよう、国が特別の財政措置を講じられたい。
    • ○ 現在、国は、三位一体改革の中で、生活保護費国庫負担金の負担割合の引き下げを提案しているが、地方の自主性・自立につながるものではなく、大都市の財政に甚大な影響が及ぶ。そもそも生活保護制度は、憲法の理念に基づき、国が責任をもって最低生活を保障し、自立を助長する制度であることから、その経費も本来は、国が全額負担するべき性格のものである。したがって、国庫負担金については、少なくとも現在の負担割合を変更することなく堅持されたい。
  • 3 公園や道路、河川敷等、公共施設の適正管理に関すること
    • ○ ホームレスの自立支援策の充実にともない、ホームレスが占有した公園や道路、河川敷等を、その本来の目的にために再生整備し、地域住民の快適な利用に供することが重要な課題である。また、再びホームレスが当該施設を占有しないよう管理の強化など適切な措置が必要である。地方自治体が、公園や道路、河川敷等の再生整備等に取り組むため、特別の財政措置等の支援を講じられたい。それとともに、実効性のある適正管理ができるよう関係法令の整備を図られたい。
  • 4 無料低額宿泊所に関すること
    • ○ 無料低額宿泊所は、「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」において、ホームレス等生活困窮者の居宅生活移行を支援する場として位置づけられた。しかし、地域によっては宿泊所の開設の際、事業者が近隣住民の十分な理解が得られないまま届出を行おうとする事例もある。このため、悪質な事業者については、開設にあたって実効性のある規制を強化するなど、必要な方策を講じられたい。

* 8月 23日自民党地方議員など 60名が大阪で会合を持ち、上記要望をまとめた。国へうまく届くか期待。