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NPO釜ヶ崎 現場通信 11号

野宿の苦難は続く ‐ 襲撃・シノギ・病気・等々

少し前、新聞やテレビなどで、野宿生活者が会社に雇われ、雇い主に生命保険をかけられて殺されるということが報じられた。また、野宿を余儀なくされている仲間が、若者に襲われたり逆襲して逮捕されたりしたことも報じられている。それらのことがどのくらい広がりをもつ話なのかを知るために、夜間宿所で11月5日、アンケート調査をおこなった。

襲撃事例はとどまることなく

日本橋で中高生に花火を投げられる。今年のお盆の間に北花園の交差点にあるガソリンスタンドで、バイクに乗った高校生に花火を投げ込まれた。

昨年2月に日本橋の裏通りで、リヤカーに積んであった段ボールにガソリンがかけられ、放火された。9月に難波で若者から寝ている時に火のついたタバコを投げられた。

10月末午前12時頃に新開筋商店街で若者らしき人に、エアーガンによって撃たれた。

今夏に長居公園で若者から石やブロックをなげられた。また、夜寝ているとガソリン持ってきてテントにかけるタチの悪いのまでいるから、怖くなって帰ってきた。

8月ころ、阿倍野区内の小公園で、2~3人の若い男から石を投げつけられた。

自分が実際に被害を受けた仲間は293名中42名(14.3%)、見たことのある仲間は31名であった。中には、センターの周辺や四角公園など、釜の中での被害を訴えるものもあった。安全な寝場所の必要性は高いといえる。

「生命保険」はさすがに
30~34歳 3人
35~39歳 6人
40~44歳 9人
45~49歳 26人
50~54歳 42人
55~59歳 68人
60~64歳 74人
65~69歳 10人
70歳以上 2人
総数 240人
平均年齢 55.8歳

生命保険をかけられそうになったというのはさすがに少なく、2名であった。しかし、住民票や戸籍が金になるという話は、偽装結婚や養子の形で、20人が実際に持ちかけられている。

他の都市で西成に行けと交通費を支給された例は1件(神戸市立更生センター)にとどまった。しかし、大阪市内で、区役所の窓口や公園などで警察官に、西成に行けと言われた例は多い(7件)。

襲われ、追い立てられる苦難は続き、経済的に弱い立場に付け込んで食い物にしようとする輩が跋扈する。お先真っ暗とは言わずとも、未だ曙、山際ようよう明かりての状況。長居だけでなく市内100箇所の避難所が必要。

ちなみに、年齢を答えてくれたのは240人で、平均年齢は55.8歳であった(右の表参照)。


幾つかのお願いとお知らせ‐カードの貸し借りは禁止!

先日、再発行の輪番登録カードを持って就労にきた仲間に、顔写真を貼ろうとしたら、実物と写真が違っていた。事情を聞いたところ、足の悪い人が変わりに行けと貸してくれた、ということであった。特別就労の登録は、個々人でおこない、重複登録は許されていない。したがって、登録カードも一人一枚で、輪番就労できるのはカードの所持者、登録した本人だけということになる。

カードの貸し借りが横行すると、登録輪番制度ではなくなるし、以前のように、登録カードを無理やり奪って就労にくるという極端なことまでおきることになる。カードの貸し借りが目に余るようになれば、朝の受付や賃金支払い時に、顔写真によるチェックを念入りにやらざるを得なくなり、無駄な待ち時間が増えることになる。お互いに不愉快で迷惑となる事を避けるために、他人にカードを貸したり譲ったりすることはやめよう。

「施設」と輪番就労

そう多くはないが、時々こんな苦情を聞くことがある。「生活保護受けてるもんに、(就労を)遠慮してくれ、いうのはよく聞くけど、施設に入ってるもんが仕事にくるのもおかしいやろ、同じように言わんとアカンで」と。

もっともな意見だと聞いた。働きたいという気持ちを皆が持っていることはよくわかる。それを満足させるには、仕事をもっと増やすしかないのだが、現状では皆を満足させられるほど仕事はない。仕事拡大に向けて努力しながら、今のところは、より困難な立場にある、野宿している仲間へ、仕事をまわすことに協力を呼びかけざるを得ない。

「施設」にいる間は輪番就労を遠慮して下さい。

自立支援センターについて

大阪でも「自立支援センター」が実際に動き始めている。どうやったら入れるのか、と聞かれることも多くなった。入所できる人数に限りがあるので、あまり宣伝したくないのだが、入所の方法を紹介する。

原則として、市内の公園などを巡回する相談員が個別に声をかけて、入所希望などを聞いて回り、入所決定することになっている。各区の福祉事務所に相談すれば、巡回相談員と連絡をとってくれ、日にちと場所を教えてもらって面談を受けることができる。釜ヶ崎(あいりん地区)内で野宿している場合(大テント・夜間宿所を含む)は、市更相が受付窓口となり、巡回相談員につないでくれる。面接したからといって確実に入所できるわけではないし、すぐ入所できるわけでもない。

長居公園の避難所について

長居公園の避難所に反対している周辺住民は、反対の理由の一つに、野宿者も反対しているから、といっている。つくるのなら北海道か舞島にともいっている。

NPO釜ヶ崎は、長居のような避難所が市内に20ヶ所は必要だと考えている。避難所はいらないというのが、本当に仲間の多数意見か!