ホーム > 各種発行物 > 現場通信

NPO釜ヶ崎 現場通信 4号

高齢者就労事業の成り立ち ‐ 仲間の努力で

高齢者就労事業のセンター登録がほぼ終わった。(これを書いている時点で25日の登録日が残っているが、400、500と増えることはないだろう?と思う?)

4月18日現在の登録者数は2,596人。昨年が1,966人だから630人増えていることになる。これに25日の登録見込み数250人を足すと昨年より880人が増える事となる)。この増加は1997年から1998年への増加500よりも多いことになるが、この事業を頼りにせざるを得ない労働者の状況を考えればそう驚くほどの増加ではなかろうと思う(昨年、11月に登録の受け付けがあれば、その時点で増えていた数であるとも考えられる)。

4月18日までに登録した2,596人の内訳は、昨年からの継続が1,325人、新規登録が1,275人と思われる。まだ一日登録日が残っていることを考えれば新規登録者が登録者全体の半数を超えることになると予想される。

そこで、改めてこの「仕事」の意味をみんなで確認しておきたいと思う。

金でなく就労機会

高齢者就労登録者数とのべ就労者推移グラフ仲間の中には輪番に登録することを、輪番が回ってくることを、単にお金がもらえる機会がくるとだけ考えているものもいるかも知れない。確かにお金は支払われる。しかし、高齢者就労事業の目的は、お金をばら撒くのが目的ではなく、釜ヶ崎の高齢労働者に就労する機会を提供することにある。だから、酒が原因で働ける状態にないものには帰ってもらうことにしている。

多くの仲間が仕事を求めて努力して出来た制度だ。大事に守る気持ちが必要だ。

高齢者就労事業は1994年11月から始まったが、当初は4ヶ月だけのもので、求人数も一日50人に過ぎなかった。一年間としての制度となったのは1996年からだ。


「釜ヶ崎労働者が求め、勝ち取った事業」の認識を持とう

釜ヶ崎高齢労働者就労事業は、発足にあたって、多くの関係者が努力を積み重ねたものだ。

たとえば、「釜ヶ崎反失業連絡会」は1993年9月、大阪府・市に提出した要求書の中で次のように要求している。

「軽作業紹介窓口を開設されたい。軽作業紹介窓口は登録制、且つ輪番制とし、発足当所において最低一日500人分の職業紹介を確保するよう努めること。その後、登録数に応じ最低二日に一度就労保障できるよう大阪府が府下自治体へ協力を要請し、求人数の確保に努めること」

野営闘争の様子
↑ 昨年3月に1ヶ月近く行われた野営闘争

書面を出しただけで役所が動くところではないことはみんなもよく知っているところで、要求書を出すと同時に、何度も大阪府や市に対して要求デモや府庁前や市庁前での野営(居座り要求行動)が行われた。

その行動には常に多くの労働者が参加したので、今回輪番登録した仲間の中にも参加した経験のある仲間は多い事と思う。安定した事業とするため、毎年就労数をわずかでも拡大するため、多くの仲間が、反失業連絡会と共に要求行動を行ってきた。

勿論、成果は反失連や労働者の行動だけの手柄ではない。行政関係者、その他多くの人々の理解と協力のおかげであることも忘れられてはならない。

就労数の面でまだまだ不十分なものであるが、この制度が出来るまで積み重ねられてきた多くの人の努力を再確認し、「釜ヶ崎高齢労働者就労制度」を活用しての就労機会を大切にしていただきたいと思う。

日々の仕事現場でそれぞれの出来る範囲でがんばって仕事をしていただくと共に、未だ93年当時の要求就労数となっていないこと、とりわけ大阪府の出す就労数が少なすぎること、現在の就労数のうち90人分は2年先にはなくなるものであること、ようするに、みんなの必要には不十分であること、今後も努力をし続けなければならないことも、共に再確認しなければならないと思う。

NPO釜ヶ崎は野宿生活者と野宿に至る恐れのある人々を支えるために生まれた「特定非営利活動法人」です。目的達成のため、様々な活動を行いたいと考えています。