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NPO釜ヶ崎 現場通信 116号

特別清掃はどう役立っているかを考える。(1)

今年度も 5月 21日から 30日までの日曜を除く 9日間、輪番が一巡するまで特掃登録者 1465人にアンケート調査を実施した。発表が遅れて申し訳ないが、アンケートをもとに特掃がどう役立っているかを考えてみたい。

アンケート項目のうち「先週 1週間の食事」について聞いた項目では、「毎日 3食食べた」と答えた人が 367人(有効回答者 1425人のうち 25.8%)であったのに対し、「 1日 1食は食べた」人が 891人(62.5%)、「 1日 1食も食べられない日があった」人が 167人(11.7%)もいた。特掃が「収入源の中心」と答えた人が 582人(有効回答者 1230人のうち 47.3%)、「廃品回収と並ぶ収入源の柱の一つ」と答えた人が 220人(17.9%)であり、全体の 65.2%を占めた。「現金・飯場の仕事がないときの臨時的な収入」は 332人(27.0%)、「年金などで足らない分の補填」 62人(5.0%)、「その他」34人(2.8%)である。特掃が「収入源の中心」となっている層にとっては特掃がなければ生き延びることさえかなわなくなってしまう。月 3~ 4回の就労であっても、そこで手にする 1日 5700円が、命の糧になっていることは確かである。「特掃でなんとか生き延びることができた」これはひとつの大きな現実的成果である。

しかしこれ以外にも、成果は次のアンケート結果に現れている。今年度の調査では「特別清掃(特掃)での就労はどのように役立っていますか」と聞いた。複数回答であるが、母数を有効回答者数 1399人(ひとつでも選択肢に○をつけた人)とし、その中で「 1、収入を得ることができる」と答えた人が 1054人(75.3%)であった。これは半ば当然として、「 2、就労意欲を継続できる」が 402人(30.7%)、「 3、社会に参加しているという感覚をもてる」が 244人(17.5%)いたことが大きな意味を持っている。「 4、仲間と一緒に働くことができる」と答えた人も 375人(26.8%)おり、これも大きくは「社会参加意識」といえる。わずか月 3~ 4回の就労であるため、アンケート結果での評価値はさほど高いとはいえないが、「 8、別に役立っているとは思わない」が 19人(1.4%)しかいないことと比べれば、うまく表現できないが何らかの形で役立っていると、ほとんどの人が意識していることになる。野宿生活やそれに近い状態におかれることで、日々就労意欲や社会参加意識が失わさせられてしまうことに対し、特掃が就労意欲を継続させ社会への参加意識をもち続けることに役立っていることを示している。グラフ

また「 6、健康維持に役立つ」が 375人(26.8%)いた。「定期的に就労できる」ことに加え、NPO釜ヶ崎では医療関係者のボランティア協力を得て毎週月・水・金曜に健康相談、木曜に歯科相談を、特別清掃事務所で就労後に受けられるようにしており、その効果も加わっていると考えられる。

他方「 5、草刈・ペンキなど基本的な技能の習得」に役立つと答えた人は、わずか 92人(6.6%)しかおらず「技能習得」の領域での不十分さが目立った。

就労意欲と社会参加意識そして健康がなければ、自立に向う土台が整備されず、支援策の効果は大きく後退する。

特掃の増減は、登録者や、来年度以降加わってくる人たちの生活にとっては死活問題である。だが税金を投入した事業である以上、ただ「飯が食えなくなるから仕事をくれ」というだけでは、社会全体に対する説得力としては弱い。特掃が労働者・野宿を余儀なくされる人の生存にとってどれだけ必要であるのかとともに、野宿からの脱却・自立にとって、また社会全体にとってどれだけ有用であるのかも訴えていく必要がある。特掃が縮減されれば、自立意欲の減退と現状へのあきらめを強め、ますます野宿生活から抜け出せなくなってしまうからだ。「野宿生活から脱け出し自立していくためには、就労意欲と社会参加意識を維持するための土台としての特掃が必要だ」と。そのためには、特掃事業を就労機会の提供から一歩進めて、もっともっと就労自立・社会的自立のための土台にできるものにしていく必要がある。

それには特掃を、除草や道路清掃という旧来の業務のみならず、基礎的な技能を養えるものへと、さらに作業種類や従事人数を拡げる必要もある。昨年 10月から地域内道路清掃班のうち 10名が、月に 3~ 4日間だけではあるが、地域の学校や施設の塀のペンキ塗り替え作業に従事するようになったのも、こうした理由からである。また、自転車修理や園芸作業の技能講習も大阪市からの委託で実施しており、講習修了後には技能向上作業に従事できるように、就業支援センターと連携して道を拡げる必要もある。

就業支援センターの役割

大阪ホームレス就業支援センターとは、野宿生活者の就労自立・就業自立を進めるために、大阪府と大阪市、連合大阪・社会福祉法人などでつくっている団体です。国の「ホームレス就業支援事業」の受け皿になって、市内府内の各自立支援センターやNPO釜ヶ崎に就職相談・就職支援事業などを委託しています。また、センター事務局は、各自立支援センター・NPO釜ヶ崎お仕事支援部などに寄せられた常用雇用・期間雇用・パート・アルバイトの求人情報をそれぞれの委託先に届けて全体に広げるなどターミナルの役割と、財界や企業からのホームレス雇用や作業依頼の窓口を担っています。