ホーム > 各種発行物 > 現場通信

NPO釜ヶ崎 現場通信 124号

2008年度特掃登録2272人。59歳以下は減少・65歳以上は増加。
新規登録者の平均年齢は1歳上昇。

今年度の特掃登録者数は、最終的に2272人と昨年よりも99人の減少となった。4月1日では1908人だったので、大きく減少する可能性も考えられたが、4月の登録者が多く、結果さほどの減少にはならなかった。しかし、昨年度との違いも出てきている。登録や更新時点の年齢を比較した場合、55~59歳では昨年度よりも158人減り、逆に65~69歳では41人増えている。70歳以上は75人と12人増えている。平均年齢は60.6歳から61.0歳へと0.4歳上がっている。

だが、新規登録者(一度も特掃カードを作ったことがないと述べた人)では高齢化傾向がもっと強くなっている。58.9歳から60.0歳へと約1歳も上がっている。また、新規登録者数は昨年度の516人から455人へと61人、約12%減っている。55~59歳で42人(12.8%)、60~64歳で24人(17.3%)減っている。

ただ、55歳で新規登録した人は、昨年度105人、今年度110人と減ってはいない(新規登録者に占める割合は、20.3%から24.2%に上昇)。やはり、新しく55歳になった人が特掃を頼みの綱としている現状がうかがえる。一方で、新規登録者の高齢化傾向を引っ張っているのは、65歳以上の登録者が減っていないことによる。なかでも70歳以上の新規登録者は、昨年度の9人から11人へと増えている。いくつになっても働きたいという気持ちは分からないではないが、特掃は、野宿の危険を強いられる日雇労働者などに対する特別対策なのだから、高齢者の生きがい事業とは違う。ましてや、就労事業なのだから、高齢や慢性疾患が原因で生活保護を受けた場合、生保が打ちきられた後の生活を支えるセーフティネットなどではない。

大阪市内では、65歳以上で「資産がない」「最低生活費以下の収入」などの要件を満たしていれば稼働能力を問われることなく生活保護にいけるのだから、いま生活保護を受給していないとしても、65歳以上ましてや70歳以上では、特別対策の対象ではないといっても言い過ぎではないと思う。特掃事業を「野宿の危険を強いられる人たちのための事業」として守っていくためには、施策目的に照らした厳格さも必要になってくる。特掃全登録者年齢グラフ特捜新規登録者年齢グラフ


シェルター⇔炊出し⇔特掃の生活では命を縮める。

健康相談と生活相談(4月22・24日北宿所58名、22日禁酒の館8名相談)を実施。
早めに病院受診を。60歳以上の人は「就職努力とあわせて生活保護申請」を。
65歳以上は生活保護申請を進めて野宿・シェルターから抜け出そう。

2008年4月15日朝、6時半ごろ、西成区太子1丁目路上より、住吉区の急性期総合医療センターへ救急搬送され、西村信治さんが亡くなられました。心筋梗塞でした。

今年度初めての就労は4月1日生活道路、最後の就労は4月9日の環境整備でした。西村さんが特掃に登録したのは、1998年。更新は今年で10回目になります。65才になった時、生活保護申請をすすめると、まだ大丈夫。もう少しこのままでいく。と言われました。それから時々声かけをして、汐見橋線の西天下茶屋駅で野宿をしていること、40年ほど前に西成にやってきたことを知りました。そして、現在の境遇になったのは自分自身の責任だと思っている。といわれたことがはっきり記憶に残っています。

福祉を受けたくない。という理由が、長い年月を生きてきた人生のひとつの答だとしたら、誰も何もいえなくなってしまいます。ただやはり、言っておきたいのは、特掃が野宿の状況を維持するだけの仕事ではなく、〝野宿から畳の上にあがる〟ことを目的としていることです。今年度の特掃カードの顔写真をみると随分痩せていました。4、5年声をかけ続けて、もういいです。が当たり前の返事になってしまい、気がつかない。もう少し踏み込んで説得できなかったのか。やはりとても残念なのです。合掌。

確かに特掃に登録すれば、自分の稼いだ銭でメシは食えるかもしれない。しかし特掃だけでは就労日数が少なく、野宿から抜け出すことはできないのも事実である。特掃とシェルターは野宿を続けるためのものではない。何とか野宿から抜け出すためのものである。

輪番労働者が路上で亡くなったという話をきくが、せめて病院のベッドか畳の上で亡くなってほしかったと悔しくて仕方がない。これ以上悔しい思いはしたくないので、仲間には野宿からぬけだすために、一歩前に歩みだしてほしい。近くにいる指導員やNPO釜ヶ崎スタッフに気軽に声をかけ、今困っていることを伝えることから始まる。

また、北宿所と禁酒の館では、不定期ではあるが、健康相談と生活相談を行っている。前回の相談で、2人が社会医療センターにすぐ入院、施設入所、居宅保護になった人たちも何人かいる。健康相談では、血圧を測ったり、身体の悪いところを相談してもらえれば、病院への紹介状、かかり方、その後のことなども説明している。生活相談では生活保護のことはもちろん、自立支援センター入所の仕方、仕事をどこで探せばいいのか、借金のことなど、ありとあらゆることについて相談を受けている。

生活保護を活用して野宿から抜け出し、路上で亡くなることがない生活を目指していこう!