NPO釜ヶ崎 現場通信 123号
2008年度は1908人で開始。昨年度同時期よりも219人の減少。
1日の輪番数は196人+ガードマン26人で昨年度と同じ。
ただし、府・市とも7月末までの暫定。
今年度の特掃は、1908人で開始となった。新規登録日の3回目が終わった段階で、昨年度より219人の減少になっている。まだ4月の8日、15日、24日と3回登録日があるので、最終的な登録者数はわからないが、昨年度よりも減少するのは確かだろう。
原因としては、年齢が下がるほど労働者の数が減っているだろうこと、65歳以上の高齢者では生活保護が進んでいることが考えられる。登録者数が少なくなれば、登録している人にとっては、その分仕事がまわってくる回数が増えることになる。
だが、この事態は喜んでばかりはいられない。特掃の発注者である大阪市も大阪府も多額の負債をかかえ、財政支出の削減の必要性に迫られている。大阪府では、1年間の予算が策定されず、「見直し」を掲げて7月末までの暫定予算しか組まれなかった。特掃は何とか昨年度と同じ人数が確保されたが、やはり7月末までの暫定予算となってしまった。それに引きずられて、大阪市のほうも1年間の予算は策定されたにもかかわらず、「府市共同事業」については、府と同じように7月末までの4ヶ月間の執行となり、8月以降については保留ということが決定された。特掃も「府市共同事業」にあたるとされて、年間予算が組まれながら、とりあえず7月末までが確定、その後は保留ということになってしまっている。財政危機のあおりが、8月以降どう波及してくるかが心配な状況になっている。
きわめて不安定な新年度の滑り出しになってしまった。前号の「現場通信」では、大阪市については今年度の特掃が確定したかのように書いてしまったが、結果は違うことになってしまった。申し訳ない。大阪府については、本予算で前年度並みの特掃予算を組むこと、大阪市については年度予算どおりに全面的に執行することをおこなってもらわなければならない。その上で、生活保護に移っていける人は移っていくことを目指してもらいたい。特掃をめぐる状況は年々不安定になってきている。今年度が不安定だということは、来年度予算ではもっと不安定になる可能性がある。生き続けるために、できるだけ早く「特掃+シェルター+炊き出し」という不安定な構図から、自ら抜け出していく選択をしていってほしい。
国のホームレス対策予算1億8200万円の減少、総額30億9800万円に
今年度の国の予算が成立した。厚生労働省のホームレス対策の予算は総額30億9800万円で、昨年度に比べて1億8200万円の減少になっている。国のホームレス対策予算は、大きくは「就業機会の確保」と「自立支援事業等の実施」に分かれている。減っているのは、このうち「就業機会の確保」であり、この分が1億8300万円減少して9億8900万円になっている。「自立支援事業等」については、「セーフティネット支援対策費等事業費補助金」195億円(昨年度より15億円増額)の内数として、昨年度と同じ21億400万円が計上されている。「就業機会の確保」が減少させられた理由は、昨年の1月に実施された2回目の「ホームレスの実態に関する全国調査」で、ホームレス数の概数が、前回調査のときよりも6732人減って、18564人になったからだといわれている。
しかし、概数自体は減ったとしても、「高齢のホームレスの割合の増加」と「長期間野宿生活をしている者の割合の増加」が、調査検討会の分析結果でも指摘されている。「直ちには就労自立が困難な層」が野宿状態で取残されていると考えられる。よりきめ細かな支援が就労と生活両面で必要となるため、果たして予算を削減することが妥当なのかどうかには疑問が残る。
昨年5月に、NPO新宿ホームレス支援機構・NPOふるさとの会・NPO北九州ホームレス支援機構・NPO釜ヶ崎など全国約40団体で結成した「ホームレス支援全国ネットワーク」では、国に対し、次の項目で要望を出している。
- ①「ホームレス」定義(施策対象)の見直しと不安定居住層への支援
- ②多様な「自立支援」
- ③「就労自立」概念の見直しと、社会的就労による「総合的就労支援策」
- ④民間団体との連携した脱野宿後のサポート体制の強化
- ⑤野宿状態から直接居所確保をするための支援の実施
- ⑥少数点在地区の施策
- ⑦医療単給の実施
- ⑧野宿状態からの生活保護申請の徹底
こうした施策をおこない、全国規模でホームレス問題を解決していくためには、30億では少なすぎるといわざるをえない。十分に必要な対策が行き渡っているとは言えないからだ。釜ヶ崎の高齢日雇労働者の問題にしろホームレス問題にしろ、施策の正念場は「自立支援法」の残された今後4年間の取組みにかかっている。