釜ヶ崎済生会病院健康診断事業のお礼
更新情報
2012年10月13日
特定非営利活動法人 釜ヶ崎支援機構

大阪府済生会、大阪社会医療センター、大阪市立更生相談所、自彊館パーソナルの協力のもと、今年で3年目を迎えた、特別清掃輪番労働者を対象とした健康診断が、9月10日から14日までの5日間実施され、昨年とほぼ同数の889名が受診した。大阪府済生会からは、千里病院、野江病院、泉尾病院、富田林病院、茨木病院、中津病院、吹田病院、新泉南病院、支部事務局から延べ252名の職員に参加いただいた。今年は、夏の暑い時期に行われた釜ヶ崎フィールドワークに、医師、看護師、MSWに限らず、済生会病院で働いている様々な職種の方々に参加していただくことができた。百聞は一見に如かずではないが、日ごろ釜ヶ崎に来ることがない多くの人たちに、釜ヶ崎の現実の「末端」を少しでも見ていただく場を提供できてよかったと思うし、これからも続けていきたいと思っている。

健康診断当日、血圧測定の結果、済生会の医師の判断ですぐに病院受診が必要(要医療)だった人が68名いた。採血のデータも加味しての健診の結果は、「C判定(要医療):206名(23.2%)」、「B判定(要注意。経過観察):456名(51.3%)」「A判定(特に治療の必要なし):277名(25.8%)」となった。割合からみると、去年とほぼ同じ傾向と言える。ただ、毎年血圧が高く医師からすぐ病院に行ってくださいと言われている特別清掃輪番労働者が、今年もまた血圧が高く医師から病院受診をすすめられているという光景がそこにはひろがっていた。労働者の中には、毎年健康診断をするので、今年は血圧高いと言われないようにしっかり病院に行っているという人もいた。しかし非常に残念で辛いことだが、病院受診をしたけれども、なかなか治療を継続できなかった人の方が多かった。

一方で、健診当日、血圧が高かったので大阪社会医療センター内科に受診した人の中には、「昔(病院に)来たけれども、その後通院が継続してないから薬をだしても…」とか、「ちゃんと治療をする気があるのか!」と医師からツメラレル場面が多かった。また、健診受診者からも、「今まで薬を飲んだことがないから薬を飲むのは…」、という不安の声も聞かれた。

―治療は、始まって、なおかつ、継続しないと意味がない―

ここで私たちが考えなければならないのは、いかにして治療を開始、継続していくかということだ。本人はもちろんだが、周囲にいる私たちが、本人たちの置かれている状況を理解しながら、それぞれの役割を担うことが必要だと思う。今まで、体調が悪くなり救急車で運ばれるという方法でしか医療につながることがなかったので、医師や看護師から治療を続けなければ今後どうなるのかという「リスク」の説明を何度もきかないと、治療の大切さをわかることは難しいのではないかと思われる。置かれている状況が厳しいからといって、自暴自棄になり、体が不自由になってもいい、死んでもいいと言うかもしれないが、それが本心からのものだとは思わない。治療がはじまり、そこでようやく生活を考えていくスタートラインに立つのではないだろうか。1人でスタートラインに立つことは難しいかもしれないが、かかわっている人たちの支援があれば、スタートラインに立つことはできるということを確信し、あきらめることなく社会資源のネットワークをつくっていけたらと三年目にしてさらに強く思う。

今年の健診は、大阪済生会では、結核や採血の際の針刺し事故がないように「感染」に対する注意、来年以降の健診に向けてのマニュアルづくりなど、細かい点への配慮がなされていたと思う。しかし、それはすべて「なでしこ魂」がベースにあってのこと。健康診断当日の朝礼で、長年培われていた「なでしこ魂」という言葉を何度も耳にした。大阪済生会の職員は、「なでしこ魂」、つまりは、「『施薬救療により生(いのち)を済(すく)う』という創立の原点に立ち返り、現代社会の中で新たに果たすべき役割を担っていく」使命を帯びて健診事業に参加していただいていることを再認識させられた。

最後になりましたが、健康診断事業とその後のアフターフォローに協力してくださっているすべての皆様に、この紙面を借りて厚く御礼を申し上げます。


 
問診   採血用のスピッツ渡し
 
採血   済生会医師による血圧再測定