特定非営利活動法人 釜ヶ崎支援機構 理事長 山田實
昨年秋、NPO釜ヶ崎支援機構に大阪府済生会より、「生活困窮者支援として、
釜ヶ崎(あいりん)地区でできることはないか」と支援協力の申し出があった。
NPO釜ヶ崎支援機構内部で検討したところ、特別清掃輪番労者を対象とした健康 診断を提案させて
もらった。特掃では、登録時に胸部レントゲンを義務化するこ とで、結核に対する取り組みは
一定程度すすんだのではないかと思われる。
しか し、血圧測定や血液検査などをふくめた総合的な健診は、平成15~17年度、大阪 府立大学の
黒田研二氏を中心とする研究会が、厚生労働科学研究費補助金で行っ てからすでに5年が経ち、
輪番労働者の一部が入れ替わっている。また、当時の健康診断では、結核の患者を入院させることで
手一杯で、野宿から抜け出して治 療を継続していくための積極的なフォローを十分に行うことが
できなかったから である。
ただ、日々雇用の輪番労働者の健康診断は、一般企業で働いている雇用 者の健康診断とは
全く異なり、番号がまわってきて就労する日にしか行うことが できない。
結果を返すにも、シェルターに泊まっている、または野宿している人 が大半で、番号がまわって
こないことには労働者と会うことができない。このよ うな状況下で、高血圧や糖尿病などの
生活習慣病に対して、どのように継続的な 治療を確保することができるのか、また服薬だけではなく、
生活全般を支えるこ とができるのか、暗中模索だった。
このような困難は予想されたが、大阪府済生会は「とにかく、やってみましょう」 と快諾してくれた。
昨年12月に済生会中津病院の協力を得て、1日だけではある が特別清掃プレ健康診断を
おこなうことで、健康診断、結果返し、その後のフォ ローと全体の流れがようやくつかめてきた。
プレ健診では203人が受け、6人が生 活保護を活用して野宿から抜け出すことができた。
今回の健康診断には、大阪府下8病院(中津病院、吹田病院、千里病院、野江病院、泉尾病院、
富田林病院、茨木病院、新泉南病院)から、医師、看護師、医療ソーシャルワーカー、事務スタッフなど、 大勢の方が特別清掃事務所に来て、特別清掃輪番労働者に対して、問診、血圧測定、
採血を行ってくれた。厚くお礼を 申し上げる。当初予想していたよりも、高血圧で要医療と
判断される輪番労働者の出現率が高く、10月18日以降の採血の結果返しでも、
継続的な支援を必要とす る人たちが多数おり、これからが正念場ではないかと思われる。
最後になるが、今回の健康診断、その後の継続的な治療は、釜ヶ崎地区にある無料低額診療事業を
提供している大阪社会医療センター付属病院の全面的な協力がなければ、実現しなかった。
日々大勢の受診者の対応に追われているなかで、さらに1週間で100人近い要医療者の診療を
受けていただけたことに、言葉では表せないほど感謝している。
また、健診時だけでなくアフターフォローにも全面的に協力して頂いている生活 サポート釜ヶ崎、
および健診時に協力して頂いたヘルスサポート大阪をはじめ、 健康診断に協力して下さった
すべての皆様に、この紙面を借りて厚くお礼を申し上げ、誰かが路上で倒れてそのまま亡くなって
しまうことがないように、今後と も協力をお願いする次第である。
血圧測定
採血
再血圧検査
■検診事業概要と要医療者(高血圧)速報
PDF 実施状況(速報)分析:生活・福祉相談業務統括 尾松郷子 (PDF 294kb)
9/17産経新聞からの抜粋
9/17毎日新聞の抜粋