ケースA D.C.セントラル・キッチン (ワシントンD.C.)
次に報告する団体は、「DCセントラルキッチン」といわれる職業訓練でも特に調理技術の訓練を行っているワシントンDCの非営利団体である。「食料の救出と貧困との闘い」をテーマとし、ホームレス問題を食べ物で解決しようとしているユニークな団体で、他の地域で同じようなプログラムの開発に対しても協力を惜しまない積極的な団体である。現在アメリカでは調理の就労トレーニングを行っているプログラムはアメリカでも数多くあるが、この団体の就労トレーニングはその中でも1番古く、その経験を手本として全米各地の様々な団体に摸倣されている。
この報告書で紹介するほかの2団体(ドゥ・ファンド、コモングラウンド)もDCセントラルキッチンのアイデアを摸倣している。DCセントラルキッチンはアメリカでは最も進化した「スープアンドキッチン」[1]としてマスコミや政治家、そして様々な活動からから注目を浴びている。以下に、団体の歴史及び活動主旨内容を報告しようと思う。
【団体の歴史】
DCセントラルキッチンは、団体の代表者であるロバート・エガ−氏によって1986年に貧困と飢餓と闘うNPOとしてアメリカ合衆国首都ワシントンDCに生まれた。ロバート・エガー氏は当時高級レストランのマネージャーとして働く傍ら、余暇を使って教会が行っているホームレスの為のスープアンドキッチンでボランティア活動をしていた。ボランティア活動を通し多くの空腹に苦しむ人々と出会い、自分が努めているレストランで使いきられずに捨てられていく大量の食料とホームレスの貧困との間に大きな矛盾を感じ始める。そして、その矛盾は「使い切られずに捨てられていく食料で、空腹に苦しむホームレスの問題をなんとか克服できないか?」という発想へと結びついていった。この発想をもとにエガ−氏は、廃棄されていく(しかし、十分食料として使用可能な)食材を集めホームレスの人々のために食事を作る小規模な非営利団体を、政府からのわずかの援助に頼って発足した。その後うわさがうわさを呼び、様々な地域のホテルやレストランからの寄付が集まり、エガ−氏の団体の規模はどんどん大きくなり、ついに現在のDCセントラルキッチンとなっていった。
ホームレスの人々の食料を作り、彼らの飢えの問題に貢献しつづけていく過程の中で、エガ−氏は食糧を配給するだけではホームレスの貧困と飢えの問題の根本的解決にはならないということにも気づきはじめる。そこで、エガー氏が率いるDCセントラルキッチンは、それまでのホームレスのための食料配給を続けながら尚且つより抜本的なホームレス問題の克服に貢献する対策として、食品サービス業(ホテルのレストラン、レストランチェーン、ケータリングサービス)の就労トレーニングプログラムをはじめることになる。こうしてはじめられた就労トレーニングプログラム、そして彼らの就職先の確保と団体の活動資金調達を目的としたケータリングサービス業(Fresh
Start Catering:フレッシュスタートケータリング)を総括したのが現在のDCセントラルキッチンである。
【DCセントラルキッチンの団体宣言】
DCセントラルキッチンは以下の任務を遂行するために発足した非営利団体である。
DCセントラルキッチンの目標任務とは…
1)ワシントンDC、バージニア、メリーランド州にある食料サービス業界から廃棄されていく超過食材を衛生的かつ安全な方法で「救済」し、その食料をもって社会福祉団体の子供と大人たちに食事を提供する
2)寄付された食材を栄養バランスの取れた食事に還元すると同時に不就労・失業者達の就労トレーニングをおこなう
3)全国各地域で、我々と同じような活動を行おうとしている団体との交流をし、情報提供、活動開発の支援を行う
4)毎日、市内のレストラン、ホテル、団体・学校の食堂、仕出業者、などの食品サービス業界から保冷車で使いきられず廃棄される食料の「救済」活動を行う。そして、救済された食材を調理場で日々3,000食の食事へと調理し、市内の130件以上にわたる諸団体へと提供されていく。我々は、空腹に苦しむホームレスとその子供達だけに限らず、地域の子供会の活動に参加している子供や老人ホームのお年寄り、そして地域の各種活動団体の人々にも食事を提供している。
(原文)
The
D.C. Central Kitchen is a non-profit organization dedicated to the following
missions:
1)
To safely recover unserved food from area food service businesses to feed
children and adults at social service agencies throughout D.C., Maryland, and
Virginia.
2)
To convert donated foods into balanced meals while at the same time training
unemployed individuals in basic culinary skills
3)
To freely provide information and assistance to programs seeking to develop,
open, and operate similar community-based kitchens nationwide
4)
Every day, the D.C. Central Kitchen uses refrigerated vehicles to safely and
efficiently “rescue
surplus food”
from restaurants, caterers, hotels, cafeterias and other food service
businesses. Once picked up, this
donated food is brought to the kitchen and used to prepare 3,000 meals every
Agencies receiving the meals include homeless shelters, community and your
centers, children’s after-school programs, and
senior-citizen lunch programs. (DCセントラルキッチン提供資料より引用・翻訳)
インタビューをもとに・・・・
(ロバート・エガーさんとスーザン・キャラハンさんとの会談から)
【自立へのハードル】
―DCセントラルキッチンが指摘するホームレスが職につくための困難な点
DCのホームレスの問題に取り組んでいるこの団体に、ホームレスが職について安定な職業につくのに困難な点は何かと聞いてみたところ、他の団体と共通した問題が沢山取り上げられた。ただし、この団体はCFTHのそれと違い男性のホームレスも就労トレーニングの対象であるのと、またワシントンDCと言う特殊な土地柄からNYの団体が言及しなかった問題なども取り上げられた。次にDCセントラルキッチンの関係者が述べたホームレスが自立するにあたって困難な点を列挙する。これらの点は次に紹介する他の団体が述べた点とも共通するので、他の団体の報告を読むときにも参照してもらいたい。
1)安定した住宅がない
2)安定した職業につくための技術、学歴、職歴がない
3)アルコール・麻薬依存症
4)仕事を探すために必要なネットワークが無い
5)紹介人がいない
6)身元保証人がいない(以前アルコールや薬物の中毒があったこと、また前科がある人こそ保証人が必要)
7)履歴のかき方を知らない、面接も受け方がわからない
8)自尊心が低い
9)相談をする人がいない (信頼できる友達がいない)
10)単純作業をして働く事になれていない
11)規則正しく働く事に対して価値を見出せない
12)過去の履歴に対して差別がある
NY市内と同様にDC市内でも住宅は慢性的に不足しており、住宅の確保はここでも大きな問題になっている。DCはNY州とちがいBedrock
Right (全ての人がきちんとした寝具(ベット)で睡眠をとる権利)が保障されていない。すなわち、誰もがシェルターで寝る権利が保護されていない。故に、シェルターに入るにあたっても、行政に申し込まないといけないため、何らかの事情[2]で行政への申し込みができない、あるいはしたくない人はそのまま路上に残ってしまう。DCのシェルターは、NYのシェルターに比べホームレス達にとっては敷居が高いのである。しかし、その一方で、全米で最大のホームレスシェルターをもっているCCNV(Community
For Creating Non-Violence)がDCに存在しているという一見矛盾した事実がある。ディレクターのエガー氏は、「CCNVは『ホームレス対策は無料のベッドと食事の確保が優先』という考え方に固執しているため、それ以上のプログラムがなかなか生まれてこない」と語る。シェルターとベットはあるのに、なかなか入れない、シェルターに入ってもそこから先の生活への道が無い等の問題がワシントンDCのホームレス救済活動において乗り越えていかねばならない課題としてあるようだ。
また、DCは他の州や市と違い「首都」という特殊な地域がらから、ホームレスの救済支援活動に対して様々な利点及び障害があるようだ。利点は、大統領を含むその他の政治家が多くいるということから政治家たちとの直接のネットワーク作りが可能であるということ。DCセントラルキッチンにはクリントン元大統領夫妻が訪れたこともある。しかし、その一方で障害も沢山ある。活動相手である役所が州や市という地方行政レベルではなく、直接国レベルであるためなかなか意見が通りにくい。通れば強いバックアップが得られる反面、通るまでの道のりが長いという困難がDCの非営利団体の活動にはあるようである。
また、DCは役所で成り立っている街であるため、産業拠点が殆ど無いのもこの地域の特徴である。つまり公的な職種以外には殆ど仕事がホームレスや失業者が密集するDC市内には無いのである。ただ、観光名所であるため、ホテル産業、レストラン産業などのサービス産業は沢山ある。DCセントラルキッチンの調理就労トレーニングが成功している理由の一つは、ホテル産業からのバックアップ(寄付、就職口)がある事が考えられる。しかし、職種が限られているという根本的な問題は以前として残っている。
【DCセントラルキッチンのプログラム】
[活動内容の概要と目的]
DCセントラルキッチンはその活動開始以来、寄付された350万ポンド(約160万キロ)以上に及ぶ多種多様の食材を安全かつ衛生的に調理し、これまで800万食以上の食事をつくり地域の人々に提供してきた。無料の食事配給だけで飢餓と貧困は解決する事は出来ないという基本理念、そして貧困と空腹の悪循環を根絶するには、現在貧困に苦しむ男女の生活改善ができるようにする中身のある就労トレーニングが必要だとDCセントラルキッチンは考える。故に、DCセントラルキッチンの調理就労トレーニング(Culinary
Art Job Training:キュウリナリーアート・ジョブトレーニング)はホームレス、あるいはアルコールや麻薬中毒などの様々な事由によって、ホームレスあるいは不就労・失業状態にある人々が食品サービス業界で立派に就労できるようになるための実用的な知識と技術、そして社会生活能力を得る機会を与えることを目的としている。ホームレス、失業・不就労者、そして社会福祉受給者といった様々な人々がDCセントラルキッチンのプログラムに参加し、自立した生活を築かんと日々努力している。
また、トレーニング、支援、そして共生というポジティブなサイクルを生産かつ再生産させるために、DCセントラルキッチンではフレッシュスタート(Fresh
Start)というケータリングサービス業を行い、活動資金源の確保と卒業生の就職先の確保、そして卒業生のさらに高度な就労トレーニングの機会の拡大に努めている。さらに、まだまだ続く路上のホームレスやシェルターで空腹に苦しむ人々の為に、ファーストヘルピング(First
Helping)という食事の無料宅配サービス、も行っている。以下に各プログラムの詳しい内容を記すことにする。
人種、年齢、性別に関わらずやる気があって訓練についてこれると基本的に誰でも参加してもよい。しかし、プログラムのカリキュラムをこなせ、継続できる可能性がなければならないので、精神・身体的に健全であることは必須である。また、中学校1年生レベルの読み書きができないとカリキュラムをこなせないので、もし申込者が非識字者の場合は、その教育を他の団体で受けさせてから参加させるようにしている。また、訓練時間に必ず出勤できる人でなくてはならない。訓練時間中に他の活動に参加しなくてはならない人はこの就労トレーニングには参加できない。
また、薬物アルコールなどの使用を続けている人はもちろん参加できない。就労トレーニング参加者は参加時だけでなく、参加期間中常に薬物及びアルコールを使用してはいけない。また重度の身体・精神障害がある人もそれらの障害の専門的なカウンセラーやケースワーカーがいないため参加するのは難しいが、過去の参加者の中には病気のため足が不自由(義足)な訓練生がいたが立派に卒業して就職したという例もあるので、基本的には本人のやる気さえしっかりしていて、カリキュラムさえこなせるというのであれば身体、精神障害の度合いに関わらず誰でも参加できるようになっている。
ただ、DCセントラルキッチンは通勤寮や補助住宅などのプログラムを持っていないため、市や他の団体が運営する支援住宅あるいはシェルターに住んでいる人、つまり住居がプログラム参加期間中安定している人でなくては参加できないことになっている。このプログラムは、ホームレス状態や依存症状態といった自立するにあたって努力するための基盤がまったくない人の為にあるのではない。最悪の状態から這い上がろうとしている人の為にあるためにプログラムのカリキュラムは設定されているので、住宅や心身の安定がある程度整っていることがプログラム参加の前提条件となっている。
参加者の構成は、大半がアフリカン・アメリカン(いわゆる黒人)の人々で、年齢は18歳から55歳ぐらいまで様々だが、参加者の平均年齢はおそらく40歳前後と考えて良いと思う。過半数以上が男性である。ほぼ全員が薬物あるいはアルコール依存症の経験を持ち、現在も皆その治療[3]を続けているが、参加時点で少なくとも3ヶ月以上アルコールや薬物を断ち切っている。学歴は殆どが中卒、また違法薬物所持の前科を持っている人が多い。女性の参加者の場合、小さな子供がいる未婚あるいは離婚したシングルマザーが多い。
参加の仕方は、他のエージェンシー(諸団体)からDCセントラルキッチンに紹介されて来ると言うのが一般的なケースで、しかし、路上のホームレス達のためのアウトリーチプロジェクト[4]から直接参加して来ると言うケースも少ないが中にはある。この場合、わざわざ行政の手続き[5]通さず本人のやる気次第で直ぐ参加できるようになるという利点がある。しかし、ホームレスの殆どの人が薬物、アルコールの依存症を持っている事が多いため、いったん更生施設に入ってからDCセントラルキッチンの職業訓練プログラムに参加すると言うのが一般的なパターンだと理解して良いと思う。
【給与手当】
働いてある程度の給与を受け取ると福祉を受けれなくなるのは日本もアメリカも同じだと思うが、現在のアメリカの福祉制度は、精神身体障害者以外の福祉受給者の場合、福祉援助受給期間中は就労能力を養成するプログラムに参加する事が義務付けられている。つまり仕事を見つけるための努力をしないものは福祉を受けることはできないのだ。しかし、行政が行っている就労トレーニングは安定した職業に結びつくトレーニングではないため、結局悪循環となってしまうケースが多い。DCセントラルキッチンの就労トレーニングは、参加者に給与を与えているが、行政から福祉受給中の就労能力養成トレーニング活動として認められているので、このプログラムの参加者は行政が行っている就労トレーニングに参加しなくても良い上、DCセントラルキッチンからの給与をもらいながら福祉受給を続けていく事が出来る。
DCセントラルキッチンからの給与は週50ドルで、トレーニングの参加者の殆どが福祉手当(TANF、メディケア、フードスタンプなど[6])を受けており、公共のシェルターや支援住宅に住んでいる。トレーニング参加中、食事はDCセントラルキッチンが出してくれる上に、政府からのフードスタンプ(食料配給券)で基礎的な食料(牛乳、肉、野菜など)は買えるので、贅沢は出来ないが3度の食事に困る事は殆どない。また、家賃は支援住宅に入っている場合は1万円程度を払えば良いだけなので、福祉手当てで十分まかなえる。
また、子供がいる参加者に対しては、持ち帰り用の夕食をDCセントラルキッチン側が用意してくれる。これは訓練生が訓練を受けて、帰ってからする家事を少しでも楽にするために行われている支援サービスの一つである。
【カリキュラムと規則】
DCセントラルキッチンでの就労トレーニングは12週間続く(13週目は試験)。月曜から金曜日まで、朝8時30分から昼の3時30分までの7時間で、休憩は昼休みの約30分以外は基本的には無い。もちろんトイレは自由にいけるが、タバコを吸うための休憩などは取れない。つまり、6時間ずっと就労トレーニングが続く。7時45分から8時15分までの間にくれば朝食を無料でとることが出来る。
初めの2週間は入門期間で、この間にDCセントラルキッチンのスタッフによって訓練生は一人一人この就労トレーニングを続けていけるかどうかが判断される。もし、この入門期間の終わりに、残りの訓練期間を続けても訓練生にとって有意義ではないとDCセントラルキッチンのスタッフが判断した場合(精神的な問題、依存症を克服できていない、指導に従えないなど)、訓練生はプログラムを去らなくてはならない。以下にこのプログラムの規則とカリキュラムの内容を紹介する。
@ 規則
[出席に関する規則]
(ルール1)
授業は8時30分から直ぐに始まるため、授業開始までにユニフォームに着替て準備するため、訓練生は少なくとも10分前に現場についていなくてはならない。遅刻は厳禁。朝食を7時45分から8時15分までに出されるので、朝食を取りたいものは其れまでに来る事。
(ルール2)
8時30分より後についたものはやる気がないと見なされる。遅刻でロスした時間は遅刻した週の間に取り戻さなくてはならない(つまり、休憩時間を減らすか居残って作業をする)。違反者は減点対象になる。
(ルール3)
遅刻するあるいは欠席しなければならない場合は、必ずDCセントラルキッチンに電話をかけ連絡をする事。丸1日の病欠は医者からの診断書・メモ書きを提出しなくてはならない。もし、病院との予約があることが前もって分かっている場合は、DCセントラルキッチンのスタッフに必ず1日前までに知らせる事。また、病院あるいは医師からの診断書を提出する事。
(ルール4)
個人的な予定は就労トレーニングが行われる時間帯以外に設定されなくてはならない。例外はケースワーカーによって許可が下りた場合だけ認められる。
(ルール5)
就労トレーニングのスタッフ、教官の許可なしにキッチン現場から離れてはいけない。違反者は減点対象になる。
(ルール6)
このコースを卒業するには一定の授業単位を修了しなくてはならない。もし欠席が10回以上を超えた場合は、たとえその欠席理由が正当なものであってもプログラムを卒業する事は出来ない。
(ルール7)
1週間の修業科目をこなせた場合、訓練生は毎週50ドルの給与を支給される。この給与は訓練生の交通費、お小遣いとして渡される。
(ルール8)
給与は毎週月曜日に、その前の週の科目を全てこなした場合にのみ支払われる。前払いされる事は無い。また、違反が改善されなかった場合は給与を受ける事が出来ない。給与小切手を現金に換えるために早退する事は出来ない。
(ルール9)
もし訓練生が1週間の授業科目をこなすことなく就労トレーニングプログラムを中退する場合、その週の給与は支払われない。給与は1週間(月曜日から金曜日)までの科目を違反無くこなされた場合にのみ支払われる。
(ルール10)
もし訓練生が何らかの理由で就労トレーニングプログラムを去らなくてはならない場合、全ての備品(ユニフォーム、鍵、本、トレーニングマニュアル、など)をDCセントラルキッチンに返却しなくてはならない。
[食事に関する規則]
(ルール1)
トレーニング現場(キッチン)から食料を私用で持ち出さない事。この規則を破ったものは直ちにトレーニングを辞めないといけない。
(ルール2)
トレーニング現場で味見以外の飲食をしてはいけない。
(ルール3)
スタッフ専用冷蔵庫はスタッフだけが使う事が出来る。この冷蔵庫から食料品を無断で取り出さない事。
[麻薬とアルコールに関する規則]
(ルール1)
トレーニング現場におけるアルコール、麻薬の所持は禁止されている。この規則を破った者は即時プログラムから除名される。抜き打ちの麻薬検査がトレーニング期間中に行われことになっている。この検査で違法の薬物使用の陽性結果が出た訓練生は即除名される。
(ルール2)
酒気を帯びていたりあるいは薬をつかった気配のある訓練生は、尿検査を受けなくてはならない。尿検査が陰性と出た場合でも、訓練生は直ちに帰宅をさせられ警告を出される。問題が解決されるまでプログラムに参加出来ない。問題が解決されない場合は、プログラムから除名される。
(ルール3)
抜き打ちの麻薬検査を正確に行うために、訓練生はプログラム参加期間中服用している医薬品名を提出しないと行けない。このリストは密封した封筒に収められ、検査の結果が陽性と出た場合、あるいはトレーニング中事故があった場合、開封される。
(ルール4)
動作や判断力に影響を及ぼす医薬品を服用している場合はDCセントラルキッチンのスタッフに、その薬を服用していても安全にプログラムに参加できるということを記した医師からの手紙を提出しなければならない。医師からの診断書および一筆は必ずトレーニングが始まった初めの週の終わり、あるいはトレーニング中にそのような薬を処方された場合は、処方をされた直後に提出しなくてはいけない。
(ルール5)
DCセントラルキッチンの敷地内での喫煙は禁止。
(ルール6)
訓練生はタバコを吸うための休憩はとれない。昼食時の休憩時間だけ喫煙(敷地外で)できる。
[制服に関する規則]
(ルール1)
規定の制服は、1)黒の業務用ズボン(ルーズフィットの綿ぱん)または調理師用パンツ、2)黒のゴム底靴(作業するのに適しているもの)、3)靴下、4)カッターシャツ、5)エプロン、6)ジャケット、7)DCセントラルキッチンの帽子 (帽子とTシャツは訓練の一週目が終わったら支給される)。制服の規定は訓練2週目から適用される。タンクトップ、単パン、サンダル、ノースリーブのシャツを着用している場合は訓練を受ける事は出来ない。制服の規則を破った場合は着替えて出直してこなくてはならないが、そのためにロスした時間はその週の間に残業をして補わなくてはならない。
(ルール2)
制服を失った場合は、新しい帽子やTシャツを自費で買わなくてはならない(帽子10ドル、Tシャツ15ドル)。
(ルール3)
9月から3月までのトレーニングを受ける訓練生はエプロンとジャケットを支給され、其れを常時着用していなくてはならない。ユニフォームを返さなかった場合は、給与からユニフォーム代は差し引かれる。
(ルール4)
4月から8月までのトレーニングを受ける訓練生は、Tシャツとエプロンを着用しなくてはならない。ジャケットは着なくて良い。各訓練生には3枚Tシャツを支給する。
(ルール5)
貴重品をトレーニング現場に持ち込まない。現場でなくなったものに関して、DCセントラルキッチンは責任をいっさい負わない。
(ルール6)
携帯電話、ポケベル、ラジオ、ヘッドフォンは現場では使用禁止。
(ルール7)
訓練現場に来たら作業の前には必ず手を洗う事。トイレの後には必ず手を洗う事。味見をした後は必ず手を洗う事。作業を変わるときは必ず手を洗う事。
(ルール8)
毎日入浴、歯磨きしデオドラント(制汗剤)用い、常に清潔にすること。つめは必ず短く切り清潔に保つ事。マネキュアはいっさい禁止。
(ルール9)
ネックレスや指輪の着用禁止。簡素な結婚指輪のみ着用可。
(ルール1)
プロとしての態度と姿勢を常に保つ事。
(ルール2)
現場のトレーニングに関する指導は全てシェフに託されている。彼らの指導に必ず従い、彼らの経験から学ぶ事。
(ルール3)
指導教官から割り当てられた活動全てに出席、参加する事は訓練生の義務である。
(ルール4)
いかなる理由でも暴力を振るった者は即プログラムから除名される。
(ルール5)
卑猥かつ暴力的な言葉の使用は現場ではいっさい許されない。
[電話に関するルール]
(ルール1)
緊急以外で電話をかけたり受けたりする事はいっさい許されない。
(ルール1)
全ての訓練生は現場において品行方正でなくてはならない。DCセントラルキッチンは人種、性別、宗教、国籍、年齢、同・異性愛者、身体あるいは精神的障害、その他法的に保護されている個人の性質による差別をいっさい行っていない。雇用主、従業員、訓練生が差別行為そしたり、他人に嫌がらせを行う事は固く禁止されている。DCセントラルキッチンは役員、雇用主、従業員、訓練生、ボランティアが当事者の意思に反して性的行為をする、あるいは要求する事を固く禁止している。さらに、雇用、プログラム参加等を交換条件とし身体及び言語による性的行為を他者にさせること、またそのような申し出に従う事を固く禁止している。また、脅迫的、攻撃的、無礼な行為ならびに就労空気を乱す行為をすべて固く禁じている。もし訓練生が、差別あるいはハラスメントを受けていると感じたときは、必ず指導教官あるいはDCセントラルキッチンのスタッフに申し出る事。DCセントラルキッチンは早急に問題の解決に乗り出すことを約束し、不適当な行動をしている者を見つけた場合事情によってはプログラムから即、解雇・除名される。
もし訓練生が以下の規則に従わなかった場合は、規則違反と見なされ減点や警告の対象ととなる。訓練生が3度あるいはそれ以上頻繁に違反を起こした場合はその週の給与(50ドル)を受け取る事ができない。もし、その次の週に違反が行われなければ受け取る事ができなかった週の給与を違反が無かった週にまとめて受け取る事が出来る。3週連続の違反は違反が起きた3週目に執行猶予が出される。
規則1)制服をきちんと着用していない。
規則2)授業の準備をきちんとしていない
規則3)プロとしての意識が欠落している
規則4)無断で休憩を取った場合
[執行猶予]
以上に記した規則を続けて破った訓練生は執行猶予が与えられる。
4度目あるいは5度目の欠席をした訓練生は執行猶予が与えられる。
執行猶予とは、訓練生が規則違反をもう一度繰り返した場合プログラムから除名されることになる状況を意味する。
[評価]
全ての訓練生はトレーニング期間中担当教官から評価を受ける。DCセントラルキッチンが定めた目標に訓練生が見合っていて、さらに成績が平均70%以上の場合、この修業訓練プログラムから卒業をする事ができる。
週ごとの試験(ServSafeSanitation:安全衛生テストをふくむ)50%
毎日の活動
50% (以下の内容を含む)
活動内容
1)出席 10%
2)態度 10%
3)チームワーク 10%
4)専門技術能力 10%
5)論理的理解 10%
[駐車に関する規則]
駐車スペースが限られているため、DCセントラルキッチンの敷地内での駐車は禁止。違反注射の罰金や強制撤去された車等に関してDCセントラルキッチンはいっさい責任を負わない。