行政の野宿生活者対策と効果
先に紹介した「市政だより」では、野宿生活者対策の概略が次のように述べられています。
「公園や道路の機能が阻害されている場合には、撤去等の指導・勧告を行う一方、野宿生活者の中で、高齢や病気等で働けない人には、生活保護制度による入院や施設への入所等の措置を行ってきました。…10年度は年間延べ約1万人の高齢日雇労働者の雇用創出をはじめとしたさまざまな自立支援事業も実施し、11年度には、引き続き、野宿生活者の実態把握に努めるとともに、新たに野宿生活者の生活相談や生活ケアセンターの整備なども予定しています。」
具体的な内容は、民生局総務部保護課が作成した「平成11年度あいりん対策及び野宿生活者対策新規・拡充事業」の一覧表によって知ることができます。
それによると、平成11年度のあいりん対策及び野宿生活者対策新規・拡充事業の総額は8億6010万6千円で、そのうち半分以上(4億8262万5千円)が、定員100〜150名の施設建設と、1年365日の内の7日間だけの対策(越年対策)に向けられていることが分かります。
野宿を余儀なくされている労働者が期待している、たとえ短期(14日以内)でも安心して寝泊まりでき食事と入浴が提供される生活ケアセンターの定員は、20人から170人の増員に過ぎません。大阪市が言う高齢日雇労働者の雇用創出事業は、あいりん生活道路清掃の定員が1日22人から33人と増員され、あらたに地域外軽作業が加えられるとしています。地域外軽作業の1日定員を10名と見ても、1日当たり43人の高齢日雇労働者が就労できるに過ぎません。府が実施するセンター清掃の10人を加えても53人です。
あいりん生活道路清掃は、就労を希望する高齢労働者が、西成労働福祉センターに登録し、登録した番号順に就労する「登録輪番制」をとっています。昨年度の登録者数は1749人でした。今年4月の登録者は1966人です。計算すれば、37日に一度しか就労できないことは誰にでも容易に分かることだと思います。労働者の得る賃金は1日5700円です。1ヶ月5700円の収入で野宿生活から脱することが可能でしょうか。
大阪市は、公園や道路の機能が阻害されている場合には、撤去等の指導・勧告を行っています。今宮中学校南側道路では強制排除が行われました。
そのことで、たとえその道路に限ったとしても、「問題」は解決したでしょうか。野宿を余儀なくされる労働者の多くは、南側公園に移動しそこで生活をしていますし、4ヶ月経った今、テントこそありませんが、再び多くの野宿生活者が寝泊まりする場となりつつあります。
大阪市のことばかり言いますが、大阪府の「野宿労働者対策」は、センターのシャッターを開けることと、10名の就労枠の提供しかない、という問題があります。
▲強制排除前の今宮中学南側道路の様子。右が中学校校舎。左の木が見えるところは野宿生活者が移動した公園