野宿生活者問題について

 大阪市は、広報紙『大阪市政だより(19995月号..592)』の2面最上段に、「野宿生活者問題について」と題した一文を掲げ、「野宿生活者問題はすべての方の人権にかかわる問題でもあり、一日も早い解決をめざし、国と自治体とが力を合わせて、この問題に取り組んでいますので、皆さんのご理解をお願いします。」と呼びかけています。

 大阪市はその文の中で、野宿生活者増加の原因と対策の基本的な考え方を次のように示しています。

「近年、景気の低迷による企業倒産や求人の減少、高齢化した日雇労働者の雇用の制約等で生活困窮となり、野宿を余儀なくされた野宿生活者の数が市内全域で増加しています。/ 大阪市では、この問題について全市的に取り組んでいくため、昨年5月に「大阪市野宿生活者問題検討連絡会」を設置。就労、福祉・保健医療の援護、公園・道路等の適正管理など、さまざまな課題について総合的に施策の検討を重ねています。…従来から野宿生活者が多かったあいりん地域とその周辺をはじめ、市内全域に野宿生活者が増えてきています。日雇労働者の野宿生活者が多いことから、野宿生活者対策とあいりん対策とは密接なかかわりをもっています。」

 市内全域で増加していることの具体的な数字は、大阪市立大学を中心として昨年8月に行われた「夜間概数調査結果」に示されています(右頁表参照)。
野宿生活者数区別集計 (実数) 市内合計 8,660人
西成区1,910人 浪速区1,585人 中央区1,117人 天王寺区1,084人 北区1,079人
阿倍野区421人 東住吉区358人 住之江区174人 西区157人    淀川区143人
都島区134人  東淀川区 95人 西淀川区 64人 旭区 53人 生野区 41人
平野区 31人 港区 30人 住吉区 30人 東成区 30人 鶴見区 27人 此花区 26人
城東区 26人 福島区 26人 大正区 19人

 大阪市内では釜ヶ崎(あいりん地区)とその周辺に集中していますが、全国的に見ると、調査方法の違いがありますから単純にはいえないにしても、数字が明らかにされている都市の中で、大阪市の数字がきわめて突出したものであることは明らかです(右下表参照)。
各地の「ホームレス」の状況各自治体調べ昨年8月現在
       概 数  各自治体の呼び方
大 阪 市  8660人  野宿生活者
東 京 都  4300人  路上生活者
名古屋市   758人  住所不定者
川 崎 市   746人  野宿生活者
横 浜 市   439人  野外生活者  
   計   14903人

 この現状を大阪市は、

「全国から大阪市に流入し、増加し続ける野宿生活者全体に対する抜本的対策を行うには、もはや一地方自治体の取組みのみでは解決しえない問題となっています。」

と、述べ、今後の取り組みについては、

「国レベルでの統一した基本方針の提示と、財政措置や法整備等を機会あるごとに国等に対して要望…昨年の11月2日に磯村市長から小渕総理に野宿生活者問題についての取組みを要望したことが契機となり、今年2月12日に、関係省庁と大阪市を含む関係自治体で「ホームレス問題連絡会議」が設置され、国レベルでの対策が検討されることになりました。」

と、しています。

釜ヶ崎反失業連絡会はこう考えています

 釜ヶ崎反失業連絡会の正式名称は、釜ヶ崎就労・生活保障制度実現をめざす連絡会といいます。

 「バブル経済」崩壊後、釜ヶ崎(あいりん地区)には仕事がなくなり、多くの労働者が野宿を余儀なくされる事態となりました。野宿生活の中で多くの日雇労働者が体をこわし、路上で死を迎える労働者も増えました。そこで、これまで釜ヶ崎の中で様々な活動を行ってきた団体が連帯し、労働者を中心とし、行政施策としての就労対策と福祉対策を求めて活動するために結成した会です。

 わたしたちは、1993年以降、繰り返し大阪府・市に対策を要請してきました。しかし、行政側は小出しの対策に終始し、今日の状況をもたらしたのです。

 わたしたちには、大阪市の「市政だより」で示している姿勢は、地方自治体の責務を全うすることなく、国へ責任を転嫁しようとしているものに見えます。大阪市は、国に下駄を預ける前に、自らなすべき多くのことがあるはずです。大阪府が、「財政難」を口実に、責任の分担から逃れようとすることは、許されることではありません。

 しかしながら、国が責任を持たなければならない理由も数多くあります。

 そこで、わたしたちは、大阪府・市に要求すると共に、国へも対策を求めることにしました。

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