「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」が、第154回国会会期末ぎりぎりの7月31日、参院厚生労働委員会で可決され、参議院本会議で追加議案として提案されて、投票の結果反対票ゼロで可決されました。
釜ヶ崎支援機構は、民主党から「ホームレスの自立の支援策等に関する臨時措置法案」が衆議院(第151国会)に提出されて以来、二つの点(実効性のある就業の確保・実施状況の評価機関の設置)で注文をつけながらも、基本的には、民主党案を支持し、連合・部落解放同盟と共に早期成立を求める国会行動を行うほか、全国各地の野宿生活者支援活動を続ける諸団体と共に、参議院選挙にあたって各政党への「法」に対する質問と回答の公開、早期制定請願署名運動などを、多くの人々の応援をうけ、展開してきました。請願署名総数は51,279名に達しました。
民主党案は自民、民主両党の一部議員が連携して成立すると一時伝えられましたが、しかし、拙速であると与党の一部が反発して棚上げとなり、与野党調整の上、改めて法案が検討されて今国会に提出されたものです。7月17日、衆院厚生労働委員会で、与党3党(自民、公明、保守)と民主、社民の5党共同で草案が提示されました。草案可決に先立ち、民主党案は、取り下げられ、委員長提出法案とすることが全会派一致で可決され、18日衆院本会議を通過後、参院に送られました。衆参両院で可決されたことにより、法律として成立したことになります。なお、衆院厚生労働委員会では、「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法の運用に関する件」が決議されています。
今回成立した「自立支援法」は、10年間の時限立法で、5年を目処に施行状況を検討して見直すこととされています。
「法」では、野宿生活者自身に、公の施策を活用すること等で自立に努めるよう求めるとともに、自立支援や発生防止のための施策を「国や地方自治体の責務」と明記しており、また、国民も野宿生活者に対する理解を深めると共に、地方自治体に施策に協力して、自立を支援することが求められています。
目標としては、雇用の確保や職業能力の開発、安定した居住場所と必要な医療の確保、生活相談の実施などにより、自立を支援することがあげられていますが、自立のためには就業の機会が確保されることが最も重要であることに留意しつつ、総合的に施策が推進されなければならないとされています。
就業の機会が確保されることが最も重要とされていること、5年で実施状況が検討されることになっていること、この2点で曲がりなりにも、釜ヶ崎支援機構が民主党案段階で提起した修正は満たされたように思います。
公共施設管理者が「適正利用を確保するために必要な措置をとる」と規定していることから生じた、運用によっては強制排除につながりかねない恐れがあるという懸念には、厚生労働委員会で、「必要な措置を取る場合は、人権に十分に配慮する」と決議しています。
法はあくまで出発点です。どのような計画で、どのような対策を取っていくのか、法の運用を注意深く見守り、働きかけていく必要があります。