6章 野宿生活者の就労による自立に向けた支援方策の検討

6-1.就労・自立支援の取り組みの拡充・強化

(1)自立支援センターの機能強化

  自立支援センターが野宿生活者の就労のよる自立において大きな機能・役割を発揮していることは、この間の取り組み経過からみても明らかである。また、一方では自立支援センターの機能充実を図っていかなければならない点も生じている。

 このため、次の点での取組が必要である。

 ○自立支援センターの量的規模拡大

 ○大阪市を除く府内市における野宿生活者への対応(自立支援センター設置等)

 ○効果的な就職先の確保(協力企業の開拓等)

 ○野宿生活者に限定した求人開拓、民間企業・業界団体等への協力要請

 ○職業訓練・キャリアアップのためのプログラム検討実施(国・府との連携)

 ○勤労意欲向上・生活習慣づくりのプログラム実施(ex.常用雇用促進事業)

 ○自立支援センターの出口問題(入所3ヶ月、6ヶ月経過後)への対応

 ○自立支援センターの早急な量的規模拡大が困難な場合の代替策の検討

 ○ケースワーカーやカウンセラー等配置によるきめ細かな対応策の検討

(2)民間諸団体の取組支援

  民間諸団体の取組が一定の成果を上げ、取り組みの輪が広がりつつある中で、そうした取り組みを加速させる国・府・市、民間企業等との連携強化が不可欠である。

(3)新たな雇用・就労の場の創出事業の検討

 野宿生活者の雇用・就労の場を確保していくためには、今日の厳しい経済情勢の中で民間企業等の雇用に依存するだけでは、すでに見てきたように限界がある。

 また、外国の先進的事例を見ると、ホームレスを支援する非営利団体が政府や当該自治体等の支援を受けながら、自らホームレスの雇用創出、就労先の開拓(民間企業への協力要請)を行っている。このため、野宿生活者の就労による自立支援を図るためには、独自の新たな雇用・就労の場を創出する事業を検討していく必要がある。

(4)野宿生活者に係る特別法の制定

  野宿生活者問題は、全国的な取組が必要な課題であり、地方公共団体や民間団体のみの取組では解決できない問題である。このため、国の責任と役割を明確化し、雇用など自立支援策の確立等を内容とする野宿生活者対策に関する特別法を制定し、全国的な取り組みを展開する必要がある。


6-2.開拓可能な就労創出事業の検討

(1)事業分野の可能性

 開拓可能な就労創出事業を検討していく上で、これまで検討してきた野宿生活者の就労特性や現在の就職困難な状況等を踏まえ、開拓可能な事業分野についての考え方を整理する。

 @社会構造の転換期

 今日、産業構造のみならず社会制度、社会システムそのものが大きな構造転換を迫られている。また、国の垣根が取れ人も産業も自由に行き交うグローバルな時代でもある。

 野宿生活者が増大している今日的状況もこうした社会の構造変革と無関係ではありえない。というよりも変化のしわ寄せが社会の最も「弱い部分」に突出的に出現した一つの形態として野宿生活者問題が位置づけられるかもしれない。

 A環境・地域・自然回帰がキーワード

 大きな社会構造の転換期にあって、これからの時代をどのように捉え、開拓可能な事業分野としてどこに焦点を当てて行くかが重要になる。

 今日新たな社会システムを構築していくためにのキーワードとして、「環境」「地域」「自然回帰(自然共生)」の3つをあげる。平成12年5月に成立した「循環型社会形成推進基本法」は有限な地球資源を有効利用することなしに人間社会に未来はないし、「環境」「自然回帰(共生)」がそのキーワードとなることを明示している。また、平成7年5月に成立した地方分権推進法と平成12年4月に施行となった「地方分権推進一括法」や「介護保険制度」の動きからは自らの責任と能力において、地域づくりに取り組むことの重要性を明示している。

 言い換えれば「環境」「地域」「自然回帰(共生)」の3つのキーワードから導かれる分野に成長の活力があり、新たな社会創造に不可欠な分野といえる。

6-1.社会動向による対象分野

B対象事業分野の検討

 対象事業分野の可能性については、図6-2に一覧のかたちで示している。関係企業や業界団体へのヒアリング調査、文献資料より当該事業の現状および就労創出の可能性に基づき、事業可能性の評価を行っている。

 さらに、事業の一連の過程においてどの段階で就労創出ができるか、事業化に必要な施設・設備、組織はどうか、事業化に向けた課題としてはどのようなことが考えられるか、事業立ち上げに要する期間は、などの概略の検討を通じ、総合評価を行った。

 その結果、廃パソコンや紙等の分別回収、空き缶回収等のリサイクル(再資源化)事業、酒類共同配送センター事業、営繕リフォーム事業、農業(就農・帰農)の各事業が対象事業として評価が高くなった。

 なお、主要な事業のいくつかについて次項以降で検討する。


(2)参入支援連帯組織(人材派遣事業・仕事請負業)

 野宿生活者のために仕事を探し、その仕事へ人を派遣もしくは請け負うことにより、野宿生活者の社会への再参入を実現していく組織として「参入連帯組織」をイメージする。類似の業としては人材派遣業であり、仕事請負業である。

 1)業界動向

@人材派遣の現状

 雇用形態の多様化が進み、新しい就業形態の1つとして人材派遣が脚光を浴び始め10年余が経過した。これまで派遣できる業務は、財務、経理、貿易事務、OA機器操作、文書ファイリングなどの26業務に限定されていたが、199912月からは、a)港湾運送業務、b)建設業務、c)警備業務、d)医療関係業務、e)物の製造の業務を除き、原則自由に派遣できることとなった。

 人材派遣は、以前はスポット的に活用されていたが、最近では正社員の採用を押さえて、派遣社員を活用する企業が増加してきた。その背景には、経営の効率化、新入社員の一括大量採用の見直しなど、日本企業を取り巻く環境が変化してきたことがあげられる。

 一方、、就業者の心理も変化し、積極的に人材派遣を志向する傾向が出てきた。若い人の中には定職に就かず、わずらわしい企業との関係から一歩退いて、勤務日、勤務時間の自主選択が可能な派遣を選ぶ「フリーター」も一般化してきている。賃金もパートタイマーより高水準である。企業側にとっても、不況が続くなかで、固定費が確実に増える正社員より、雇用調整が行いやすい外部人材のほうが、経営的なリスクが少なくてすむ。就業者と企業との思惑が一致して、人材派遣は今ブームとなっている。

 A我が国における人材派遣の経緯

 我が国で初めて人材派遣業が誕生したのは1966年で、アメリカで人材派遣業を成功させたマンパワー社が日本に上陸し、マンパワー・ジャパン社を設立してからすでに30年が経過している。当時は職業安定法において、労働者供給事業が禁止されていたため、人材派遣ではなく、事務処理請負サービス業という形でスタートした。1986年労働者派遣法が施行され、人材派遣業は社会的に認知され、発展を続けてきた。

 施行当時は、産業構造の変化に伴い、常用雇用だけにとらわれない雇用制度が求められており、一方で女性の社会進出が進む中で労働形態の多様化を求める人々のニーズが高まっていた。当初、派遣可能な職種は16の専門的な業務に定められていたが、その後1996年の規制緩和により26業務までに拡大され、1999年には原則自由化になった。

 パソナ、テンプスタッフ、キャリヤスタッフなどが日本では代表的な人材派遣会社である。バブル経済崩壊後は、特に人材派遣へのニーズが急激に伸び、労働者派遣市場は推定1兆3千億円(1997年)規模となっている。

 労働者派遣とは「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする」(法第2条)と定義されている。派遣と請負は、雇用関係と指揮命令権とが切り離されているかどうかによって区別されている(図6-3)。

 派遣労働者には、基本的には派遣元の雇用主従業員規程が適用になる。派遣労働者を採用・配置するのは、雇用関係のある派遣元事業主の固有の権利となる。したがって、派遣先が派遣労働者の面接や選考を行い、派遣労働者を指名して派遣元にそれを拒否する余地を与えないことは、原則として禁止されている。

 派遣料金は、「役務の提供」を受けることになるので、経理上請負で処理した場合と同じく、業務委託費ないしは外注加工費で計上処理するのが通常である。すなわち経費は、アウトソーシングと同じ性格を持ち、固定費ではなく変動費となり、企業にとってメリットが生じる。

6-3.派遣と請負

2)参入支援連帯組織の枠組みと雇用創出

 @参入支援連帯組織構想の枠組みと野宿生活者の就労創出は図6-4に示すイメージである。

 A参入支援連帯組織は、具体的にはNPOにするか、一般組織法人その他か、今後検討を進め

  ていく必要があるが、官民の連携のあり方も視野において検討する。なお、業法上の問題も

  併せて検討する必要がある。

 B参入連帯組織が、どれだけの企業、組織団体、行政と連携関係をつくり、どれだけの協力企

  業や協力組織をつくれるかが、参入支援連帯組織にとっての仕事確保、野宿生活者の就労実

  現につながる。

 Cまた、その前提として、自立支援センターの取り組み活動を教訓の一つとすべきであるが、

  「居住」施設の確保が前提となろう。さらに、就労を実現していく上での支援プログラム(職

  業訓練等)が重要となる。

6-4.参入支援連帯組織のイメージ


3)廃パソコンリサイクル事業

 再生資源化(リサイクル)事業の一つである廃パソコンリサイクル事業について取り上げ、事業可能性を概観する。

1)再生資源化(リサイクル)事業の動向

@循環型社会形成に向けた法整備動向

 循環型社会形成は21世紀における新たな社会システムを構築していく上での大きなテーマである。これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄という社会構造や国民のライフスタイルを見直すことによって初めて実現されるものであり、21世紀において避けて通れない政策課題である。

 このため、平成12年5月、「循環型社会形成推進基本法」が制定されたところである。法では「循環型社会」を、「第一に廃棄物等の発生を抑制し、第二に排出されたものはできるだけ資源として利用し、最後にどうしても利用できないものは適正に処分されることが徹底されることにより、天然資源の消費が抑制され、環境への負荷低減される社会」として定義している。

 「循環型社会形成推進基本法」の制定と合わせ、平成12年5月には「廃棄物処理法改正」「食品リサイクル法」「グリーン購入法」などの法が整備され、「家電リサイクル法」(平成10年制定)等ともに、「循環型社会形成推進基本法」のもとで今後は廃パソコンリサイクルなどの法整備が図られていく予定である。

6-5. 循環型社会形成のための法整備

A家電リサイクル法と廃パソコンの再資源化取り組みの現状

 平成13年4月から家電リサイクル法が施行され、特定家電4品目(電気冷蔵庫・エアコン・テレビ・電気洗濯機)の再資源化が行われる。パソコンについては、事業所からの排出分については回収が義務づけられたが、特定家電並みに一般家庭から排出される廃パソコンについてもそのリサイクル化が義務づけられることは確実で、今後大量発生が予測される廃パソコンリサイクル事業で新たな雇用創出の可能性が高い。

6-6.家電リサイクル法に基づく排出〜再資源化フロー

 

 

 我が国において、パソコンは1995年(平成7年)のWindows95の発売を契機に増加し、近年の急激なインターネットブームで一般家庭でもパソコンを所有するところが増えつつある。平成11年度、パソコンの国内年間出荷台数は約1,000万台近くあり、日進月歩の技術開発で数ヶ月〜半年くらいでモデルチェンジした新機種が発売され状況にある。

 日本電子工業振興協会(現:(社)電子情報技術産業協会)によれば、2002年以降にはWindows95の発売以来のパソコンが大量に廃棄されてくるとの見通しを示している。

6-9.パソコンの国内出荷台数の推移

 現在、廃パソコンの再資源化の取り組み状況は、法人のリース契約等については回収から廃棄処理のルートがそれなりに確立されている。また、メーカーにおいても特定家電への組み込みを視野に入れた取り組みがなされつつあるが、回収から廃棄の枠組みが確立されているわけではない。

(新聞等情報)

●電子協、PCリサイクルなど自主行動計画とりまとめ

 日本電子工業振興協会(電子協、秋草直之会長)は13日、パソコンのリサイクルなどに取り組む、業界自主行動計画をとりまとめ、発表した。

 リデュース(廃棄物の発生抑制)、リユース(再使用)、リサイクル(再資源化)を三本柱(3Rと総称)としており、一般市場への本格的需要拡大を前にシステムを確立し、循環型経済システムへの転換と地球環境保全への配慮を推進する考え。

 この自主行動計画には同協会未加盟を含めて22社が賛同した。

[日刊工業新聞社2000114日]

 

●電子協がPCリサイクルに関する宣言---家庭ユーザーにも協力求める

 日本電子工業振興協会(本社:東京都港区)は1999319日,パソコンのリサイクルに関し,業界全体として取り組む意向をまとめ,アピールを発表した。

 アピールでは,メーカーが製品の開発段階からリサイクルに配慮することや,回収システムの整備確立への努力を宣言すると同時に,一般家庭ユーザーにはリサイクル費用の面で協力を呼びかけた。

 今回のアピールは,電子協のパーソナルコンピュータ業務委員会(委員長:溝口哲也・東芝上席常務)に加盟するメーカー18社の総意としてまとめた。アピールのポイントは(1)環境に配慮した製品作り(2)回収システムの整備確立(3)リサイクルの普及促進,の3点。

 電気製品のリサイクルでは,テレビや洗濯機など家電4製品のリサイクルを義務付けた「特定家庭用機器再商品化法」(家電リサイクル法)が,9812月に施行された。パソコンは対象とならなかったものの,将来は対象候補とする方針が国会で法案を議決する際の付帯決議に盛り込まれている。

 また電子協は986月,パソコンのリサイクルに関する調査報告を発表している。その中で,Windows 95で急速に普及したパソコンが寿命を迎える2002年前後から,廃棄処分されるパソコンが急増するという予測を示している。電子協のアピールにはこうした予測が背景にある。

 まして現状では,まとめて導入するケースが多い企業向けでこそ回収ルートは確立しているものの,家庭向けはほとんど手がけていない。このため,家庭用パソコンのリサイクル問題ではメーカーに常に厳しい視線が向けられている。家電リサイクル法では廃棄するユーザーが回収費用を負担することを定めている。このアピールでメーカー自身の努力を訴える一方で,家庭ユーザーにも回収費用負担への協力を求めたのもそのためだ。

 ただ,現状の家電リサイクル法をそのままパソコンに適用させることについては,「リサイクル法の対象4製品はいずれも配達が伴うので回収が容易。また量的にもまだ少ないパソコンをすぐ次にというのも疑問がある」(電子協の田中達雄専務理事)と,異論を唱えた。

Cyber Manufacturing Net 日経メカニカル・ニュース 324日号 no.422

 

●日本IBM、大口対象の廃パソコンリサイクル支援サービス

 日本IBMは、企業や自治体を対象に廃棄予定のパソコン製品、プリンターなどの周辺機器から再利用可能な製品・部品を選別したり、産業廃棄物処理委託に関するデータの提供などを行うサービス「PCリサイクル支援サービス」を18日開始した。

 昨年12月に改正廃棄物処理法が成立、今後、パソコンを大量に使用する企業や自治体に産業廃棄物管理票(マニフェスト)の作成など、廃棄物管理が義務付けられることに対応したサービス。現在パソコンの業界団体としては日本電子工業振興会が中心になって廃パソコンのリサイクル問題に取り組んでいるほか、メーカーが個別に廃パソコン利用についての研究を行っている

 日本IBMは、改正廃棄物処理法によって緊急に対策が必要となるユーザーを対象にしたサポートを行う。サービスは有償で、規模や製品種別などによって金額は異なる。

MainichiDailyMail Computing 1999-01-18


(4)リネンサプライ(おしぼり)事業

 リネンサプライ(おしぼり)事業は、授産施設として稼働予定の同事業を、施設設備を有効利用(夜間利用)し、野宿生活者の就労の場としても多目的に活用できないか検討する。

1)業界動向

@クリーニング業の定義

 クリーニング業は、衣服その他の繊維製品及び皮革製品を原型のまま洗濯する事業をいうが、日本標準産業分類によれば、このうち「繊維製品を洗濯し、これを貸与してその後回収して洗濯し、さらにこれを貸与することを繰り返して行なう」ものを「リネンサプライ業」とし、その他のものを「普通洗濯業」に大別している。後者は主として家庭から委託される洗濯物を扱うもの(ホームクリーニング)であるが、これには水を媒体として扱う「ランドリー」(ワイシャツを中心とした白物を洗濯)と水以外の溶剤(有機溶剤)を用いる「ドライクリーニング」(背広などの黒物を洗濯)がある。殆どの業者がこの二つを兼業している場合が多い。

Aクリーニング業の沿革

 室町時代に染物屋の副業として始まったとされる洗濯業は、江戸時代には専業としての基盤ができあがったといわれる。日本の近代クリーニング業は、東京大井町に明冶40年に開設された白洋舎のドライクリーニング工場が草分けであるが、昭和20年代までは大衆化の実現を見なかった。しかし、昭和25年に「クリーニング業法」が制定され、公衆衛生思想の定着、所得水準の向上、衣服の洋風化等の要因から、昭和30年代には需要も大幅に拡大した。

 リネンサプライ業は、昭和25年にアメリカの企業が、進駐軍向けに開始したのが最初であり、国内向けにはホテルや病院を中心に成長してきた。特に、昭和30年代後半から、東京オリンピック(第1次ホテルブーム)、大阪万国博覧会(第2次ホテルブーム)を経て、最近の大型ホテル建設(第3次ホテルブーム)までホテルの客室数は増加を続け、リネンサプライの経済性、ホテル施設内での洗浄処理の困難化(経済性、用地難、公害規制等)とあわせて急速に成長した。一方、病院における入院患者用の寝具設備は、病院自身による保有・管理・消毒・洗浄などの法令上の処理義務とされていたものが、昭和30年代後半にリネンサプライの利用が認められることとなり、病院リネンも急成長し、ホテルリネンと並ぶ当業界の2大分野となった。

Bクリーニング業の業態分類

 クリーニングの業態は、需要源を主として事業所等におくリネンサプライ業など産業クリーニングと、一般家庭を主な需要源とするホームクリーニングに大別される。

 ホームクリーニングは業態により、自家処理能力を持つ「一般クリーニング店」と受注品の受取り・保管・引渡しのみを行なう「取次店」、取次店を多数展開して大規摸工場で集中処理を行なう「集中処理業者」、一般クリーニング店から委託を受けてワイシャツなどの白物や皮革・着物等の特殊物を処理する「ホールセール」に分類できる。量産方式による料金の低廉性と被洗濯物の広範性を武器とし、直営店もしくはフランチャイズ店を展開する「集中処理業者」以外は、生業的色彩の強い小規模零細事業者が多い。

 リネンサプライ業は、主にホテルやレストランなどで使用するシーツや浴衣等の寝具その他のリネンをクリーニング業者が所有し、これを洗濯つきで貸与するホテルリネンと、病院の基準寝具を扱う病院リネンを中心とし ドライブインや飲食店などのおしぼりを扱う貸しおしぼり業や、貸しおむつ、貸しモップなどの特殊な品物のみを扱う事業など多岐にわたる。主な事業分野と取扱品目を表6-1に示す。  

6-1.リネンサプライ業の需要分野別主要品目

呼  称

需要分野

主要品日

ホテルリネン

ホテル・旅館等の宿泊施設

シーツ、毛布カバー(包布)、枕カバー、                        タオル、バスタオル、バスマット、浴衣があり、通常7点セットと呼んでいる

病院リネン

病院・診療所

布団のほか、毛布及び毛布カバー(包                        布)、シーツ、枕カバー、浴衣(病衣)等があり、通常基準寝具と呼んでいる

産業リネン

事業所・工場・研究所・その他

作業服、ユニホーム、白衣等

貸おしぼり

飲食店・喫茶店等

おしぼり

タオルリネン

スポーツ施設・サウナ等

タオル、バスタオル等

貸おむつ(ダイアパーサプライ)

産科病院・特養及び一般家庭

おむつ(ベビー用、老人用)

フードリネン

飲食店・喫茶店・結婚式場等

テーブルクロス、ナプキン、おしぼり等

鉄道リネン

電鉄、船舶、航空、バス、ハイヤー等

座席カバー、寝台用の寝具類等

ダストコントロール

事務所・一般家庭・その他

モップ、クロス、マット、ウエス(油汚れ用の雑巾)等

((株)矢野経済研究所「リネンサプライ白書、99年版」より)

Cクリーニング業界の動向

(ホームクリーニング)

 クリーニング施設数は年々増加してきたが、その中心は取次店の急増で、一般クリーニング所は、1982年(S57)の57,000施設をピークに年々減少している。取次店の増加傾向が業者間の過当競争を生み、地域によっては過飽和状態となっている。1999年(H11)には取次店の減少もみられ、総施設数自体が減少傾向となっている。2000年(H12)3月末現在の一般クリーニング所数は47,324施設、取次所数115,703施設、総施設数163,027施設となっている(厚生労働省調べ)。

 クリーニング組合の調査では、1店舗当りの従業者数が5人以下の店が4分の3を占め、雇用従業者がおらずその労働力を家族従業者に頼っている店も約半数となっており、クリーニング所の小規模零細性がうかがえる。

 年々上昇を続けてきた1世帯当りの年間洗濯代金の支出額は、1992年(H4)の19,243円をピークに下降し、1999年(H11)では13,778円となっている。全国世帯数から推計したこの年のクリーニングの需要額は、およそ670,000百万円となっている(総務庁調べ)。ウォッシャブル衣料の増加や、家庭でドライ指定の洗濯物が洗えるファッションドライ洗剤の普及が大きな影響を与えているが、景気低迷が長期化する中で家計支出が抑えられている状況がわかる。

(リネンサプライ)

 総務庁の事業所統計(表6-2)によると、1996年(H8)のリネンサプライ事業所数は4,463社、従業員数は102,009人となっている。

 リネンサプライ業界は、経営組織的には少数の大企業と多数の中小企業によって構成されている。1981年(S56)からの推移では、事業所数、従業員数とも著しい増加がみられ、96年までの15年間で、事業所数で1.9倍、従業員数で2.7倍に膨らんでおり、近年の過当競争を裏付けている。また、1事業所当りの従業員数も拡大傾向がうかがえ、96年には22.9人となっている。

6-2.リネンサプライ事業所数、従業員数の推移

 

事業所数

従業員数

l事業所当り従業員数

l981年(S56)

2,372

38,652

16.3

1986年(S6l)

3,399

55,270

16.3

1991年(H3)

3,999

78,615

19.7

1996年(H8)

4,463

102,009

22.9

総務庁「事業所統計」より)

 リネンサプライ業の市場規模は、民間調査による算出では1997年(H9)で658,000百万円となっている。分野別ではダストコントロールが市場の約半分を占め、次いでホテルリネン、産業リネン、病院リネン、貸おしぼりとなっている。

 市場全体の傾向としては、拡大傾向のみられるダストコントロール、ホテルリネン、ダイアパーに対し、病院リネンや貸おしぼりの需要には若干のかげりがみられるものの、需要の開拓や効率的な設備稼働を行えば、野宿生活者の就労の場として有望な分野である。


(5)就農・帰農プロジェクトリンケージ

  我が国の農業・農村を取り巻く環境は、後継者不足や輸入農産物との競合など厳しい環境におかれている。一方、都市では野宿生活者が職に就きたくても雇用の場は極めて限られている。

 「就農・帰農プロジェクトリンケージ」は、こうした点を踏まえ、「農」を核に野宿生活者の就労の場を確保し、そのリンケージづくりを検討する。

 1)「農」をめぐる動向

@民間諸団体の野宿生活者の生活支援・就労支援

 現在、野宿生活者の生活支援、就労支援においてさまざまな民間諸団体の取り組みが行われている。釜ヶ崎再生フォーラムは、野宿生活者の「居住確保」を視野に入れた取組を展開し、NPO元気100倍ネットは、住宅の手すり取り付けや段差解消といった福祉住宅への改修工事、簡宿ホテルの福祉マンション化工事等の営繕事業や介護ヘルパーの養成と派遣、といった取組の中で野宿生活者の就労の場の確保を視野に入れた活動を展開している。そして、前述したNGOシティズンホームライフ協会での生ゴミ・リサイクル事業でも、野宿生活者の就労機会づくりの取り組みを行っている。

 兵庫で始まった「お米の勉強会」の取組は、消費者や生産者、流通関係者等の会員で月1回の例会による勉強会で、会の名称そのもの、「お米」の勉強会として始まったが、その後食糧問題、農業問題、環境問題へとさまざまな問題へと「勉強」(活動)内容は広がっていった。そして、食べるのことに困っている人たちへ「食」の提供をした取組が、野宿生活で「職」に困っている人に、就農で「職」を提供する取組に発展し、実績をあげている。

 こうした民間諸団体の取組を支援拡大して行くことが、野宿生活者の雇用拡大を図っていくことにつながる。

A都市と手をつなぎ農業再生の必要性

 「お米の勉強会」は、「お米」だけの問題から出発して、今日、過疎化・高齢化していく日本の農村、農業衰退への危機感をもち、日本の農業再生のために都市と手をつなぐことが必要であるとの認識である。今日、日本の農業は、農業人口の減少、農家経営の兼業化、休耕田の拡大、耕作されず放置される農地など、深刻な問題を抱えている。一方、都市住民においては農業体験へのあこがれ、自然に触れることへの憧れがあり、実際、棚田のオーナー制度で農業体験をする人やサラリーマン生活から農業に従事する人がマスコミ等で紹介されたりする。

 しかし、今日、農村においては、かつては農業の忙繁期には共同、助け合いで対応してきたことが、人手不足で困難になっていることであり、過疎化・高齢化で農業の継続が危ぶまれる状況が少なからず生まれていることである。都市には仕事がなくて野宿生活を余儀なくされている人々があり、また、農業に憧れをもつ人々も存在する。都市と農村が手をつなぐことで、我が国の農業再生を図っていくことの必要性は大きい。

6-10.都市と農村のマッチング

2)就農・帰農プロジェクト・リンケージの枠組みと雇用創出

 農業の人手不足を補うかたちで野宿生活者の雇用機会が創出される。しかし、農業にも閑忙のサイクルがあり、農家経営そのものが厳しい状況の中で、恒常的な雇用(就農・帰農)を実現していくためには農業のあり方が変わっていく必要がある。

 食品リサイクル法が制定され、平成13年4月からは一定の事業者に対しては食品廃棄物の再生利用、発生抑制、減量促進が義務づけられることになる。すでに触れたようにNGOで生ゴミリサイクル事業が試行され、その利用拡大と今後の規模拡大が必要となる。

 生ゴミリサイクルで生産された肥料を農業生産で利用し、生産物の販売、消費され排出された食品廃棄物をまたリサイクルしていく一連の循環システムを構築し、そのシステムの中で雇用創出を図っていくことが考えらる。

 こうした循環システムのイメージを「就農・帰農プロジェクトリンケージ」として図6-11に示す。

6-11. 就農・帰農プロジェクトリンケージ


(6)(酒類)共同配送センター事業

  運送事業の効率化(環境にもやさしい)と厳しいコスト競争下にある中小運送事業者と酒問屋にとって、生き残っていくためには共同配送システムを構築することが必要であり、共同配送センター事業で新たな雇用も創出可能となる。

1)業界動向

@厳しいコスト競争環境

 現在、運送業は厳しいコスト競争環境に置かれている。運転手一人が何百キロも休むなく走り続けて荷物を運んでいる状況で、助手を乗せて走る余裕はない。こうした状況の中で交通事故は起こって当たり前、トラックが関係する交通事故は多い。これには、運転手自身が事故の怖さを知らなさすぎる面があり、きちっとした運転手教育を行えば無理な運転はしなくなるはずである。また、運転免許の資格制度を導入する必要がある。現在は、普通の免許を所持していると、すぐトラックの運転ができる。しかし、バスやタクシーでは運転するための「免許」(cf.二種免許)が必要になっており、運送業界もそうした方向に行くべきである。

 運送業で「雇用」を増やす方法があるとするならば、共配システム(例えば、酒類)を作ることである。普通であれば、運転手一人ではせいぜい2〜3サイクルが限度であるが、一人の運転助手を置くことで5〜6サイクルの配送が可能となる。

 酒類の共同配送システムは、かつて大阪府の音頭で構想検討が行われたことがあったが、それぞれの利害が合わず、その時はお蔵入りか、棚上げの状態になってしまった。

A酒問屋の現状と生き残りの方途

 現在、酒類はメーカーから酒問屋を通して、小売店に流れる流通ルートが基本となっている。酒のディスカウンターは、酒問屋の中間機能の存在によって、その「中抜き」による仕入れコストの低減、あるいは、ロット買いや現金買いによる値引き等で仕入れコストを下げ、ディスカウント店での低価格販売を実現している。こうした酒のディスカウンター等の出現で、酒問屋は厳しい状況に置かれ、廃業するところも少なくない現状である。

 酒問屋は、かつて構想検討した共同配送システムを実現することなしには生き残っていけない状況にきている。かつて共同配送センターの構想検討を行ったときは、事業費の負担と自社倉庫の活用方法がネックとなって、構想の実現ができなかった経緯があるが、現在では倉庫の活用(跡地含め)さまざまな可能性が考えられる。

 また、各酒問屋が個々別々に小売店への配送を行っているような現状は、地球環境問題(東京都はディーゼル車規制に動き出そうとしている)や効率性の面からみても問題である。これは酒問屋に限らず、酒造メーカーにとっても同様である。

 さらに、酒問屋は自らが消費者機能を持たなければ、今後厳しい状況になっていくと思われ、その点からも共同配送センターの必要性が指摘される。

6-12.酒問屋の配送システムの現状

2)酒類共同配送センター構想の枠組みと雇用創出

 今後、酒問屋が生き残って行くためには、IT化、非効率部門の外部化(アウトソーシング)等により経営資源の集中を図っていくことが必要である。また、自社倉庫(跡地含)活用した新たな事業展開の可能性も生まれる。

 共同配送センター事業では、酒問屋のみならずメーカー及び運送事業者含めメリットがあるような、事業化構想に仕立てる必要がある。

 雇用は、酒問屋の「合理化」を図る面があるが、共同配送センター業務及び関連業務で新たな雇用を創出可能である。

 共同配送センターの事業化は、問屋自身が核となった事業主体づくりが必要であるとともに、メーカーや運送業者をも事業に引き込んでいくことが重要である。

 また、システム構築及び事業費の低減が実現化の一つの鍵となり、交通ネットワークに優れ、低廉なヤード確保等が必要となる。さらに、扱い品目(関連品目に限るとしても)増やしていくことが、センター機能の向上、関係事業者の利便性に繋がっていくと考えられる。

 なお、共同配送センターの事業化においては、コンセンサス形成に一定期間を要することには留意が必要である。

6-13.(酒類)共同配送センター構想


6-3.今後の取組課題

 我が国の野宿生活者(ホームレス)問題への対応はスタートしたばかりともいえる。今日、我が国は、産業構造等含め大きな時代の転換点にあり、バブル経済崩壊後の景気回復もなかなか進まず、雇用情勢も厳しい状況にある。

 一方、野宿生活者自身も高齢化が進み野宿生活が長引くことで健康面での心配もあり、早急に就労・自立へと誘導を図っていく必要がある。

 そのためには、国・府・当該自治体(市)、民間諸団体、雇用の受け皿となる企業等との連携を強化し、府民の理解・協力のもとに、それぞれの役割分担のもとに野宿生活者の解消を目指した取り組みを図っていかなければならない。

 そのためには、今後当面の取組課題としては本章6-1で触れた事項案件およびその他で、次のような点について検討、実施を図っていく必要がある。

@自立支援センターの機能強化

 ○勤労意欲向上・生活習慣づくりのプログラム実施(ex.常用雇用促進事業継続実施)

 ○効果的な就職先の確保(協力企業の開拓・民間企業・業界団体等への協力要請等)

 ○職業訓練・キャリアアップのためのプログラム検討実施(国・府との連携)

 ○自立支援センターの出口問題(入所3ヶ月、6ヶ月経過後)への対応

 ○自立支援センターの早急な量的規模拡大が困難な場合の代替策の検討

 ○ケースワーカーやカウンセラー等配置によるきめ細かな対応策の検討 等

 ※やや短中期的には、

 ○自立支援センターの量的規模拡大

 ○大阪市を除く府内市における野宿生活者への対応(自立支援センター設置等)

A野宿生活者の就労・自立に取り組むNPOを始め民間諸団体との連携強化

 ○民間諸団体と府・市との連携強化

B新たな就労創出事業の事業化検討

 ○本年度検討の開拓可能な就労創出事業の事業化検討

 ○新たな就労創出事業の事業化における連携・支援のあり方の検討

C野宿生活者に係る特別法の制定