野宿者簡易アンケート集計結果
(98年6月29日午後6時〜6時30分実施)センター夜間解放にともない乾パン配布が午後7時から行われている。乾パンを受け取る労働者は午後5時にはすでに列をなしている。連日
1,800名を越えるその集団の性格を把握するために、聞き取り調査が企画され実施された。午後6時にセンターのシャッターが一時閉まるまでに、乾パンや毛布などを運び込み、
6時45分に一部のシャッターが開いて、ブルーシートを敷く作業が始まるまでの時間を利用して、夜警メンバーによって聞き取りが行われたので、全数調査というわけにはいかず、列の先頭から聞き取りを始め541名の聞き取りに留まった。列の先頭部分と他の部分とに性格の違いがあるかどうかは検証できないが、おおむね大佐はないものと思われる。聞き取りの項目は次のとおり。単純集計
年齢 |
30-34 |
35-39 |
40-44 |
45-49 |
50-54 |
55-59 |
60-64 |
65-69 |
70-74 |
不明 |
合計 |
人数 |
3 |
17 |
30 |
83 |
104 |
136 |
125 |
33 |
6 |
4 |
541 |
平均―54.7歳・中央値―56歳・最頻値―60歳・最小―32歳・最大―73歳
上の棒グラフと円グラフは、5歳きざみで作成した今回調査の年齢構成である。
上の棒グラフと折れ線グラフを組み合わせたものは、あいりん職安の白手帳の年齢構成(
97年3月末現在)と比較したものである。平均年齢は53.5歳で、今回調査より1.2歳若い。今回調査の方が、
45-59歳の割合が低くなっているものの、全体としては、似通っているといえよう。このことは、野宿を余儀なくされる層が特定の層(高齢・病弱)ではなく、釜ヶ崎日雇労働者全体にわたっていることを窺わせるものであるといえよう。仕事の落ち込みと照らし合わせて考えれば、当然といえる調査結果ともいえる。在釜年数 |
0-1 |
1-5 |
6-10 |
11-15 |
16-20 |
21-25 |
26-30 |
31-35 |
36-40 |
41-45 |
46- |
不明 |
総合計 |
人数 |
55 |
113 |
104 |
57 |
90 |
19 |
48 |
18 |
25 |
6 |
1 |
5 |
541 |
平均―
14.2年・中央値―10年・最頻値―10年・最小―0.5年・最大―51年在釜年数は正規分布(平均値を中心として左右対称)を示しておらず、それぞれの山に特有の性格があることを示している。それぞれの山の特質を説明するものは、釜ヶ崎の歴史であり、日本経済の動向である。
1960
年以前の第一次釜ヶ崎拡大期の山、1970年以前の万博準備期の山、1980年以前の景気対策としての公共投資拡大期の山、そして、バブル期と震災復興期。だが、ここ数年は、仕事量との関係が逆転しているように思える。釜ヶ崎で仕事が減少し続けているここ
3年間に127人もの増加を見ている。1年未満も1割存在する。もはや釜ヶ崎に仕事を求めてくると言うことではなく、世間一般の不況が厳しく、「一般水準」の生活を維持できなくなった層が、生きる余地を求めて、身の置き所も求めて、釜ヶ崎へと集まり始めていることを示しているように見える。
2日 |
4日 |
5日 |
7日 |
12日 |
20日 |
1ヶ月 |
2ヶ月 |
3ヶ月 |
4ヶ月 |
5ヶ月 |
6ヶ月 |
8ヶ月 |
9ヶ月 |
10ヶ月 |
1 |
1 |
1 |
2 |
1 |
1 |
14 |
8 |
7 |
3 |
1 |
9 |
1 |
1 |
2 |
1年未満の内訳は上記の通りである。一ヶ月までは
21名、2ヶ月以上は32名で、センター夜間開放による影響と説明することはできない。野宿期間 |
0-1 |
1-6 |
7-12 |
12-24 |
25-36 |
37- |
不明 |
総合計 |
人数 |
59 |
376 |
44 |
18 |
14 |
15 |
15 |
541 |
平均―7.2ヶ月・中央値―2ヶ月・最頻値―1ヶ月・最小―0.5ヶ月・最大―240ヶ月
野宿期間については、多くの説明を要さないほど傾向ははっきりとしている。更にはっきりとさせるために、3ヶ月、つまり今年の
3月以降野宿生活に入った人数を示せば374名である。また、1ヶ月未満については以下の通り。
野宿期間 |
1日 |
2日 |
3日 |
4日 |
5日 |
7日 |
8日 |
9日 |
10日 |
人数 |
1 |
1 |
3 |
5 |
2 |
8 |
1 |
1 |
8 |
野宿期間 |
12日 |
14日 |
15日 |
17日 |
20日 |
21日 |
22日 |
25日 |
|
人数 |
1 |
10 |
1 |
1 |
10 |
2 |
1 |
1 |
日々野宿を余儀なくされる層が増え続けていることを示している。
4.野宿場所
野宿場所 |
人数 |
あべの |
40 |
なんば |
25 |
釜ヶ崎周辺 |
311 |
四天王寺 |
26 |
日本橋 |
90 |
その他 |
46 |
不明 |
3 |
総合計 |
541 |
釜ヶ崎周辺で上がっている地名は、「山王町・鶴見橋・花園・センター」など。
その他で上がっているのは「恵美須町駅・津守・玉出・大阪城・ドヤ」など。
ドヤが上がっているのは、「主に寝る場所」という問いかけによるものと思われる。野宿はしているが、月の半数近くは、アブレ手当や仕事に就くなどの収入でドヤに宿泊する層が含まれていることを示すものである。ここでも、「現役」と「野宿」の差がなくなってきていることが窺われる。
在釜年 |
|||||||||||||
来釜年齢 |
0-1 |
1-5 |
6-10 |
11-15 |
16-20 |
21-25 |
26-30 |
31-35 |
36-40 |
41-45 |
46- |
(空白) |
総計 |
0-14 |
2 |
2 |
|||||||||||
15-19 |
1 |
1 |
6 |
3 |
1 |
12 |
|||||||
20-24 |
1 |
1 |
1 |
9 |
4 |
11 |
1 |
28 |
|||||
25-29 |
1 |
4 |
3 |
6 |
4 |
9 |
10 |
4 |
41 |
||||
30-34 |
8 |
7 |
6 |
24 |
4 |
21 |
4 |
4 |
78 |
||||
35-39 |
4 |
7 |
21 |
16 |
24 |
7 |
7 |
86 |
|||||
40-44 |
5 |
15 |
19 |
15 |
28 |
2 |
84 |
||||||
45-49 |
12 |
27 |
32 |
13 |
6 |
1 |
91 |
||||||
50-54 |
9 |
24 |
11 |
3 |
2 |
49 |
|||||||
55-59 |
15 |
19 |
6 |
40 |
|||||||||
60-64 |
7 |
6 |
1 |
14 |
|||||||||
65-69 |
3 |
4 |
7 |
||||||||||
(空白) |
2 |
2 |
5 |
9 |
|||||||||
総計 |
55 |
113 |
104 |
57 |
90 |
19 |
48 |
18 |
25 |
6 |
1 |
5 |
541 |
年齢から在釜年数を差し引いて来釜年齢を求め、あらためて在釜年数とクロスさせたものが上の表であり、下のグラフである。
55歳以上の高齢で釜ヶ崎に来た人々の総てが、在釜年数10年未満であり、60歳以上では5年未満であることが、釜ヶ崎の新しい問題(日本の高齢社会化の問題)を指し示している。
6.簡単なまとめ
6月29日に列を作った人々の8割強が今年に入って野宿を余儀なくされている。その半数近くは、10年以上釜ヶ崎で働き続けてきた。彼らに必要なのは、明らかに仕事である。それが満たされなければ、福祉対策による寝場所と食が必要である。野宿期間の集計から見て対策は急を要する。
釜ヶ崎の労働者の失業問題と労働者の高齢化にともなう問題とがここに見える。それが主要な問題点である。
その上に、新しい問題が加わってきている。在釜年数と野宿期間が同一あるいは接近した層の出現である。これは、日本全体の高齢化の問題であるし、大不況のもたらした問題でもある。今回の調査では大きな比重を占めていないが、拡大しつつあることを示している。
これは釜ヶ崎の問題ではないが、今や釜ヶ崎で解決が迫られている課題となった。
これまでの説明は、回答者の範囲に留まるものかも知れない。列の先頭部分と中段部分、後段部分がほぼ均質であるとすれば、少なくとも1、500人について説明するものである。さらに、5月下旬に確認された3,422人についても説明するものであるかも知れない。
野宿期間 |
||||||||
在釜年数 |
1ヶ月未満 |
6ヶ月未満 |
1年未満 |
2年未満 |
3年未満 |
3年以上 |
(空白) |
総計 |
0-1 |
10 |
40 |
2 |
3 |
55 |
|||
1-5 |
13 |
75 |
13 |
4 |
4 |
3 |
1 |
113 |
6-10 |
7 |
82 |
5 |
3 |
1 |
3 |
3 |
104 |
11-15 |
8 |
44 |
1 |
2 |
2 |
57 |
||
16-20 |
10 |
56 |
8 |
4 |
5 |
6 |
1 |
90 |
21-25 |
2 |
14 |
2 |
1 |
19 |
|||
26-30 |
6 |
32 |
5 |
2 |
1 |
2 |
48 |
|
31-35 |
2 |
8 |
4 |
1 |
2 |
1 |
18 |
|
36-40 |
1 |
18 |
2 |
2 |
1 |
1 |
25 |
|
41-45 |
5 |
1 |
6 |
|||||
46- |
1 |
1 |
||||||
(空白) |
1 |
1 |
3 |
5 |
||||
総計 |
60 |
375 |
44 |
18 |
14 |
15 |
15 |
541 |