目下の処にては人類館、世界一週館、薩摩館、動物園の四種にして
位置は会場に沿ひたる横手の道路即ち各府県売店に対したる西側な
り今四種に就きて其内容を記さんに
○人類館 斜に正門に対して其建物あり準備の都合にて開館は来る
五日頃となるべく夜間開館の事は未定なりと云へば当分は昼間の
みならん内地に近き異人種を聚め其風俗、器具、生活の模様等を
実地に示さんとの趣向にて北海道アイヌ五名、台湾生蕃四名、琉
球二名、朝鮮二名、支那三名、印度三名、瓜哇一名、バルガリー
一名、都合二十一名の男女が各其国の住所に摸したる一定の区画
内に団欒しつゝ日常に起居動作を見すにあり亦場内別に舞台如き
ものを設け其処にて替はる/\自国の歌舞音曲を演奏せしむる由
にて観客入場の口は表にありて出口は裏にあり通券は普通十銭、
特等三十銭にして特等には土人等の写真及び別席にて薄茶を呈す
との事
○世界一週館 人類館の南に「世界一週館」といふものあり本日よ
り開場の筈にて夜間も入場せしむる計画のよしなるが本館は一種
のパノラマにて日本、支那、欧州、米国の有名なる都市、港、古
跡の内十三箇を選びて油絵にて遠景を画き前景には人物、樹木、
家屋、船舶等を絵画的に配置し人物、船、水流等を時々動かして
観覧者の眼を悦ばしむる仕掛のよし先入口は神戸港の図にて海岸
より海上を見渡したる処、次は台湾土人の風俗、第三の香港は船
の乗客海上より港の町を遠望する処、第四古倫母、第五蘇士の運
河、第六巴里、第七瑞西第八伊太利《リー》、盂買の埋没家屋発
掘の処、第九伯林大学、第十倫敦市街、第十一セント、ルイズ博
覧会、第十二米国ナイヤガラの瀧、第十三布哇ホノゝル府の遠景
にて幾分か教育的意味を含み興行物としては最面白き趣向なり入
場料大供十銭小人七銭
著者:大阪朝日新聞
表題:博覧会附録 場外余興
時期:19030301/明治36年3月1日
初出:大阪朝日新聞
種別:第五回内国博覧会/人類館事件