連合町村会議案

    前号に約せし同連合会議案の要領を左摘記せんに先づ其の支出案

   説明の概略を挙れば曰く近年府下に於て虎列拉病、窒扶斯病等の流

   行年々甚しきを加へ殊に本年の如きは最も激烈にして予防撲滅の方

   法充分尽せりと雖も未だ俄に芟除する能はず為めに府民一般に蒙ふ

   る所の不幸損害実に容易ならざる者あり是れ畢竟未だ病因の詳なら

   ずして治療の術を得ざるに由ると雖も抑も亦た之を誘発するものな

   かる可らず今大坂に於て斯の如く流行病の跡を絶さゞるもの職とし

   て貧民群居の矮屋櫛比し厠、井、相隣り溝渠相接し空気の流通を妨

   げ汚臭の人身を侵すに基かざるはなし而して彼が如き人家は日本橋

   以南及び高津新地に尤も多しとなす即ち年々伝染病の我府内を跋扈

   するは多く彼れ輩の不潔不摂生に誘発するが如し故に断然たる処置

   を施し誘発者の駆除を務めざる可からず既に我府庁は是等の事を慮

   りて長屋建築規則、井水取締規則を発せられたり然れども此の実行

   に際しては数多の細民忽ち住所を失ひ為めに却て一層の醜状を表す

   るに至らん故に今の為めに計るには先づ駆て彼輩を入るゝの居所を

   設け而して後府内の矮屋を改築し溝渠を疎通し漸次衛生の方法を実

   施するに非ざれば能はず因て今回西成郡難波村の西南隅に於て若干

   歩の土地を購ひ同郡及び四区共有の家屋二千七百戸を建設し之を一

   郭となし彼の貧民中目下差置難き者(十九ヶ町村二千七百戸此人員

   八千百人)を転住せしめんとす而して其方法は右の規則に準じて構

   造し其費用は四区一郡に於て之を負担し年々徴収する家賃を以て漸

   次消却する事とす今日一般衰幣の折柄斯の如き非常の経費を賦課す

   るは甚だ困難の情況なきに非ざれども府民全体の利害を計較すれば

   又遂に顧みるの暇あらざるなり云々

   支出予算議案

   一金百七十七円九十二銭 会議費

   一金四万六千九百四十一円八十二銭 土木費

   一金千二十九円八銭七厘 共有取扱諸費

   合計金四万八千百四十八円八十二銭七厘

    外金千三百三十四円六十一銭 西成郡津守新田外四十二ヶ町村負

   担額

   (以下次号)

   

   著者:大阪日報
   表題:連合町村会議案
   時期:18860905/明治19年9月5日
   初出:大阪日報
   種別:長町取払/連合町村会