東京地裁判決に見る

「段ボウルハウス」の評価

1) 東京都の一方的撤去に非あり

東京都青島知事は新宿への都庁移転に伴い、JR新宿駅西口地下通路(四号街路)に200メートルの「動く歩道」(水平エスカレータ)を約13億円で設置するため、

1996年1月24日に路上のダンボールの住居約200人分を撤去し、

抗議する住居者を警官によって公園まで連れ出し、且つ、バリケードや旗竿、卵などで撤去に抗議する約100人の支援者を弾圧し、3人を逮捕し、内2人を「威力業務妨害罪」で起訴した。

1997年3月6日、東京地裁は「撤去するためには、道路法に基づく撤去命令を出し、従わない場合には、代執行手続きをとるべきであった」のに、その手続きを都がしていない手続き上の落ち度があり、

「撤去業務は強制力を行使する権力的公務ではある」が、上述の手続きの必要な威力業務妨害罪の業務としての要件を構成していないため、その罪に問われている2人は無罪であると判決した。(求刑はいずれも懲役1年6ヶ月であった)

(2) 段ボール小屋はごみではなく住居

同判決で、段ボウル住居は清掃対象になるゴミではなく、所有者が明確な住居であるとの判断を示したことが特筆される。

判決文では「本件工事で撤去された段ボウル小屋は、路上生活者がそのに中で寝泊まりできる大きさで、複数の段ボール箱をつなぎ合せ、多くは屋根をも備え、風を防ぎ、通行人にものぞき込まれないようにした簡易な小屋状の工作物であって、

しかも現実に路上生活者の居住のように供している物であることを考慮すると、それが無価値の堆積物ないし廃材であるということは到底できない」「所有権が及んでいたもの」で「撤去がその(住居者)の意思に反するものであったことは明らかである」としている。

「段ボール小屋は・・生活の基本である住居として用いるものである」ので「その所有者の意思に反して、単に清掃作業の対象として撤去できるものとはいい難いといわざるを得ない」と判示している。

(3)立ち退き強制は本人と関係者の納得と事後保障が条件=国連決議

1993年「国連人権委員会」で、日本を含む53ヵ国代表が満場一致で採択した「強制立ち退きに関する国連決議」で

「立ち退きを強制することはひどい人権侵害であり、とりわけ家に住む権利の侵害である。」とし、

「強制立ち退きをせまられている人たちに対して、行政はその人たちの持ち物を法律で保障し、また関係者、関係グループをまじえた話し合いと交渉をもった上で、

その人たちが強制立ち退きから完全に身を守れるための、あらゆる必要な対策を打たねばならない」としている。

また「強制的に立ち退かされた人たち、家族に対し、行政は事前に関係者、関係グループ相互の納得のいく交渉をもった上で、

本人達の希望、あるいは必要にもとづいて、ただちに元にもどれるようにするか、賠償金を支払うか、適切かつ十分な替わりの住宅もしくは土地を提供するかしなければならない。」と規定している。

東京地裁判決は、「公道上の不法占拠」でもあり「劣悪な生活環境であるから」「行政には一人でも多くの路上生活者が路上生活から脱することができるように、就労の機会をできる限り提供するとともに、福祉を充実させるための適切な諸施策を講ずることが強く期待される」としている。

国連第2回人間居住会議(国連ハビタットU)でも「人々のシェルターの獲得と住居及び地域の保護と向上に、国家は義務を負う」と決議しているのである。

(4)東京地裁判決・国連決議を武器に第2回釜ヶ崎フォーラムを!

大阪でも浪速区日本橋西1の関谷町公園の改修工事をめぐって、公園内の野宿者排除に対し、野宿者ネットワークが抗議、行政担当者は工事済みの場所への移住を示唆したにとどまった。

就労保障や生活保護適用などの施策を一つもせず、その場しのぎの大阪市の態度である。

また2月20日午前10時、日本橋東3丁目の日東公園で、テント一張りと生活用具一式が公園職員によって本人に無断で廃棄された。現在補償要求中である。

東京地裁判決や国連の諸決議を武器に、行政当局に抜本的解決の施策を迫る必要がある。

そのためにも、第2回釜ヶ崎フォーラムの開催が望まれるといえよう。