昭和36年
大阪府商工労働常任委員会
会議録(9月例会)

○若佐 健次君

 私は労働部長に一言お尋ねしたいと思います。先般あの釜ケ崎におきまして前代未聞の不祥事件が勃発いたしました。府の理事者各位におきましてその後善処していただいておることはよく存じております。しかしながら、寒川労働部長は労働対策にして万全なりとお思いであるか、その点お聞かせを願いたいと思います。

○労働部長(寒川 喜一君)

 どうも労働対策として万全かどうかということにつきましては、私はあの時点におきましては、万全な措置であつたとかように考えております。と申しますのは、ご承知のように、暴力手配師の取り締まりをあの事件発生を機会に警察がおやりになる、かようなことで、現在組の首謀者はおおむね検挙され、一部公判等が行われておりますが、そういうようなことで取り締まりをすると労働者は混乱をしてしまう、労働者の就職確保というような問題が非常に困難になつてくる、でありますので、われわれとしては、これを機会に、できますならば近代的な労使関係の確立をやりたいというようなことで、拙速ではございましたがああいう形をとりましたのは、職業紹介というような形になりますと、ご承知のように現在の職業安定法で国の機関で行なければならない、かようなことになつております。
 現行法上許されております問題は、事業主が直接労働者を募集される場合、これはむろん通勤距離範囲内という制限はございますが、該場所の労働者は、おおむね通勤距離内の就労実態でございますので、そういう直接事業主が募集されるお仕事を援助していく、こういう形でいたしますことが、最もやり方としてはスムーズであり、当面間に合うのじやないかというようなことで、西成分室を設置いたしたわけでございまして、将来の問題といたしましては、なお問題が残つておると思います。
 と申しますのは、労働者の諸君にいろいろな家族関係をお聞きするとか、あるいはどこで泊つておられるとか、過去にどういうふうなお仕事をしておつたかというような、一般職業紹介機関のルートに乗りますとそういうことをお尋ね申さなければいけないが、全部が全部とは申しませんが、あそこに集まつておられるかなりの人がそういうことをあまりお好みにならないというような事情があるのじゃないか。これだけの好況のさなかに、あそこに集まつて生活をされるということは、人間の本能的な面からすれば、私は不本意ながらそういう生活を続けられておる人が大部分じやないかとかように判断をいたしております。
 従つて、あぶれたらどうするかというような問題もいろいろ議論になりますが、私の率直な見解を申し上げるならば、軌道に乗ります人は、なにも職業紹介を受けられなくとも、職業安定所に日雇失業保険関係の手続きをしていただく、このためにはたとえば住民登録というような問題が必要になつてくるわけです。それの事務をできるだけ簡素化してやつていくというような形がとれますならば、あぶれた日には失業保険をもらう。これの手続等については、目下労働省と現在やつておりますことを何とかもう少し簡素にしてやれる方法がないかというようなことを交渉いたしておりますので、近く何とか結論が出るんじやないか。
 同時に日雇いの諸君の健康保険の問題も、そういう問題が片づきますと、問題がある程度だんだんと軌道に乗つていくんじやないか。
 さようなことをいたしましても、ご承知のように行政の立場でやりますと、最後にその網の目から残る人が私はできると思います。
 そういつたことになりますと、ひとり労働行政の問題でなしに、民生その他の関係ともかなり深い関係になります。従つて当初われわれは広域方針を作りまして、そういう機関でやつていただく、こういうことをたびたび申し上げておるのでございますが、総評の一部なりあるいは日雇労働者が組織をされております組合で反対を実はされておりますが、これは事の実態を十分ご理解をいただいておらないために起こつておる私は反対であろうと思います。役所の責任をのがれるためにそういう制度を作る趣旨のものではございませんので、役所は役所としてできるだけ簡素に方法を考えて下におろしましても、なおかつそれで問題が片づかない人ができるわけでございます。そういつた人々の対策のために、強力な広域方針を作つて総合的にお世話をしていく。
 のみならず、これから考えられますことは、それじや現在おる方々がある程度片づいたならば問題が片づくかとこう判断いたしました場合に、私はそれでは全部片づかないと思います。必ず第二、第三の人々があの地区を頼つて、生活の本拠にするために訪れてくるんじやないやないか、かように考えておりますので、お答えにあるいはならぬかもしれませんけれども、かような考え方を持つておりますので、ご了承いただきたいと思います。

○田中 俊二君

 先般の釜ケ崎の問題につきまして、労働者に対する当時の職業安定についてはさつそく相当な善処をされておりまして、大へんけつこうなことだと思つております。
 ただ私どもが先般来東京の山谷事件のあとを視察に行つたのでありますが、あの山谷のあとの問題なんかでも、非常に労働者に対する慰安、そういうふうな設備が行き届いております。で大阪府の方におきましても、ただ職業の安定とか、職につけてやるとかいう問題だけでなくして、もう少し労働者に対する慰安の機関を設けるかどうか、そういうふうなお考えがあるかどうか、ということもちよつと承りたいと思います。

○労働部長(寒川 喜一君)

 労働行政の立場から申し上げますと、ぜひさような配慮を願いたいのでございますが、ご承知のようにそういうお仕事をお願いする関係は民生行政でございます。なお直接働いておる人を対象にする場合にはわれわれの関係にもなるわけであります。
 あわせて府の労働部だけで労働対策が全部終わるのじやございませんので、労働基準局あるいはそれに関連して民主的な警察の継続的なバツクアツプ、そういうものの中におのずから問題解決の方向が見出していけるのじゃないか。これを深い関係にならない間に、二軍の存在が一軍にならない間に、なんとか解決してあげる安全弁というものが当然なければならない。
 これらのことにつきましても、お役人が、君どこからきてどんなことをしておつたんだというようなことではやはり問題が片づかないのじやないかとかように判断して、そういう問題も、役所が責任をのがれるというのじやなしに、弾力的な措置ができる広域方針によつて問題を解決することが適当ではないか、かように考えますと同時に この点まあ非常にデリケートでございますので、先刻ご答弁を申し上げましたように、何かそこに有機的にそういうことがやれるような組織と言いますか、これは大阪市のなわ張りだとか、これは府のなわ張りだとか、そういうことでなしに、受ける側からすれば、やはりつまらぬ競争があつたりしまして、あるいは片方がやつたから片方がすねてやらんとかいうことの態度があつてはならないわけでありますから、あり方としては多々ますます弁ずる、かように考えております。
 なお若干余談になりますが、例の釜ケ崎地区で働いていらつしやる方で集団的な形で就労をしておりますのは、港湾労働方面でございます。その他の面につきましては、それぞれの現場の異なった大阪府下の地区に散在して働いておる。さようなことから、分散対策ともにらみあわせて、国におきまして今回予備費で220人分の宿泊設備を港頭地区に作つていただくというような見通しがほぼ確定を見ております。
 のみならず、昭和37年当初におきましても200人分程度のことを考えよう。これが運用につきましては、当初は府で業界に融資して問題を解決しようという態度でございましたが、国におかれては建物自体は全額見よう、こういうような好意ある方針に実は変わりまして、土地等につきましては地元負担なりあつせん等の措置を講じてほしい、かようなことになりますと、ただいまご指摘のありましたように、家が建ちましても、独身労働者とか、あるいは家族を持つておりまして,当面考えられます問題につきましては、私たちも公共法人の本拠にそういつた施設を持ちたいと思つておりまして、労働省ご当局におきましてもそういう考え方で、昭和37年度の当初予算に若干ではございますがご準備を願つております。簡易食堂の問題とか、あるいは理髪、浴場、これも民間業界を圧迫するというような形じやなくして、シヤワー施設の問題とか、娯楽施設の問題とか、当然考えなければならない問題が次々と起こつてまいります。
 われわれも今度の予算にそういうことを実はお願いしようかと思つておつたのでございますが、土地その他の関係で、集団的に建物が建てられ得るような状態の目安がつきませんので、従つてある程度までの分散、港頭地区と申しましても分散的にさようなことが考えられますので、そういうことがほぼ確定をいたしました時期に改めてご審議をわずらわしたい、かように考えておりますので、その節にはよろしくお願いいたします。

○谷 槌造君

 実はこの前労働委員といたしまして山谷の方面にまいりました。ところが山谷方面と現在の釜ケ崎というものは、地形におきましても、またその家の構造におきましも、雲泥の差がございます。私ら山谷に行つてからそれを思つたのでございますが、まあ私は一番これに対しましては、どういたしましても業者の方々がこれに協力してもらわぬことには、絶対にあの土地はいかんと思います。業者がほつたらかしておいてただ管理人にまかせておいて、自分は見ているということでは、とてもあの土地に収容はできないと私は考えます。東京の方でもそれを聞いたのでございますけれども、東京の方々も設備は相当に改善されましたし、まず今田中さんから話がありましたように、慰安という問題につきましても、浅草の警察にまいりまして署長さんからいろいろ聞いたところ、一例を申し上げますと、午後四時からでないと酒を売らないというところまで向こうは協力されたということを承つておるわけでございます。
 それはいろいろあるけれども、やはり心の慰安というものが非常に大きな効果を得たと思う。たとえば子供にキヤラメルとか、本とか、いろんなものをやつたら非常に喜んだ。また時々映画会をやつて、そうした映画を見せたところが、決してそれにかぶれる者もなければ、みな喜んでやつているということでございます。またある業者におきましては、日曜とかいうふうに日をきめまして、そうしてなるべく労働者の方のお休みの日を選んでレクリエーシヨンをやつております。そういうようなことをやつておられて、これは非常にいいと思いますので、要はまあ民生委員関係はただいま部長さんからおつしやいましたとおり大阪市の関係もございますけれども、ひとつよくお話し合いを願いまして、
 それから最近ですね、これも大体お聞きしたのでございますけれども、この風水害以前とその後の就労状態はどうなつているかということをお聞きしたいのでございますが、私も昨日ちよつとあの付近に遅がけからまいりましたけれども、とてもあの付近は景気がいいと申しますか、どこもここも屋台店が満員でございます。まあそれは相当に労働賃もふところへ入るのが多いと思いますけれども、それがために彼らが働きにやはり相変わらず行つているかどうかということを心配しました。慰安されるのはけつこうですけれども、それがためにあくる日休んでおるということではどうかと思いますので、わかつておりますればひとつご説明を願いたいと思います。

○労働部長(寒川 喜一君)

 西成関係の問題で非常にご熱心なご質問をいただきました。私も山谷の実態を見てまいりまして、ご質問にありましたように、かなり事情が違っております。慰安の問題、レクリエーシヨンの問題、その他に創意をこらしましてご期待に沿うように努力をしてみたいかように思つております。特にご示唆をいただきました業界の協力の問題につきましては、業界の方からも、現在の西成分室、あるいはそれが発展的に公益法人になりましても、強力な組織を作つてやろう、これは有料のあつせん所というような形になればやはり問題がございますから、そういうことでなくして、先般も酒井議員さんからじかにランクを設けてそういうようなことをしてはどうかというようなご示唆がございまして、関係業者によりよりお話を申し上げたのですが,従いましてさようなことができてまいりますと、これは分室とかいう問題じやなくして、積極的にある程度のことがやられてまいるのじやないか、かように考えておりますので、
 お説のように、あの地区でも関西線の北側、馬淵町、ああいう方面と東京の山谷とがやや似通つているように私も判断いたしております。従つてあれから南の方の状態は大阪特有の事情でございます。従つて諸般の施策もかなり困難をきわめると思いますが、ああいつた人々に明るい気持ちを抱かすことがやはり先決問題であろうかと思います。

○酒井 朋三君

 先般の釜ケ崎の問題でございますが、この問題は去年の9月府会にも、ことしの3月にもずいぶん主張したのですが、これなんかもまあ人災と言つてええと思います。この間の本会議にも警察費が2億近く出ておりましたが、これが煙のように消えてしまつた。これを去年の9月からやつておつたら、建物になつておるか何かで残つておるのです。実にばかげたことです。 
 私ちよつと参考に読みますが、先般開所の状態を見に行つたんです。すると何か変わつた青年が現場におるから、ちよつとおかしいな、どうしてこういう人がここへくるのかと思つて聞いたら、法政大学の学生で、社会学研究のためにきておるのだという話。それでは実際に君が見た目で感じたことをひとつ僕に知らせてくれ、こう言つておいたところ、返事がきたんです。
 『初めて西成分室で御逢いした時、先生は原稿用紙とペンをもつていましたね。その時のことを正直に申し上げますと、失礼ですが新聞記者の偉方かなと思いました。自民党の府議の酒井ですと名のつてくれ著書を送つて呉れると約束しましたね、僕はなんとなく今の政治(生意気ですが)に余り期待をもつていませんので普通の政治家さんかなと思つて居りました、勿論毒舌ですが先生の名も顔も知りませんでした。しかし先生は覚えていますか、僕がオート三輪の荷台のわくに坐つていると「危いから中に坐つていなさい」とおつしやつて呉れた事を、つまらない一人の東京から来た好奇心の強い男、こんな僕に……と今も妙に印象に残つて離れません、あの日の状態をちよつと書いてみますが、釜ケ崎を真面目に考えてる先生に少しは役に立つかも知れない事を経験しました。
 八時前に大阪港第三突堤につき、最初、人夫をやり、沖仲仕、午後船底荷役等しましたが、一緒に仕事をやるいわゆる同僚(釜ケ崎ドヤ街の住人)はとても人が好く親切にして頂きました、彼等の話をきいたり沢山頭につめこもうとしたのですが、なにせ話の核心になるとぼけられてしまいました、なぜここに住むか、騒動の時はどうしてたか、家族は……が一例です、
 分室が出来たせいか仕事始めにもし話の違う仕事をやらされたら「ワテ帰るでー」と大変な鼻息でしたが、手配師から解放されたということが彼をそうさせたと想像されます、中には警察に行くといつている人もいました、その日その日暮しの彼等にとつて食べて行く為には少々の重労働でも我慢してやつて来たそうです、これからは身体一つが支えであつたがまだまだ幼稚ではあるが分室が出来希望に満ちた顔でした、段階的に生活環境を変えていけば絶対数とはいえないかもしれないが案外時間の問題で立ち直れる様な人が過半数を占めています、勿論資金やらもろもろの問題で大変ですが、先生の努力でなんとか彼等にも人並の生活を送れる様お願いします、
 昼時、僕と同年代の人に話をきいたのですが、和歌山から出て来たそうですが売春婦に呼びとめられ値をきめたそうですが(トラの子の700円で)女のアパートに行つた所男が出て来て殴られ時計を奪われたそうです、「畜生!」と口ばしつていましたが、この青年も釜ケ崎の住民となりこれから先どの様に変貌していくか目に見えています、自分のまいた種故、警察にも行けないのです、騒動については多くの報道で先生もご存知でしようがこの様なダニがブラブラ沢山居ますが僕の考えではあたかも国民の目には釜ケ崎の住人だけが暴動を起こして(勿論住民がやつたのだけど)影にこの様な者が居るということが余り衆目に映つていない事は遺憾です、善良な市民から甘い汁を吸う手配師は姿は消しても影を残し根強く生きていきます、人の好いこの青年も弱みをつかまれ愚連隊と売春婦の美人局にしてやられたのです、
 僕が東京だというと仲間のオツサンの一人がおれも山谷に居たことがあるが上野の山で青カンしておまわりにけ起されたといい、やはり大阪の方がこの点はええとつけ加えていました、恵比寿町のガソリンスタンドに余地のない程野宿しているが、驚きでもあり大阪の恥ではないでしようか、
 仕事の件に戻りますが、メザシとコンブのつくだにと揚げどうふとぎようさんある飯の昼食をすませ午後の仕事、その仕事場は御世辞にも恵まれてるとは申せませんしそれに対する労働値も手配師がいなくなつても変つてないと不平をいい西成分室の誕生したばかりで仕方ないが弱い点でもあり、まだピンハネをどつかでやつておるのではないかというように思われます、このピンハネをぜひ一つ直すようにお願いします』
 後はまだありますが省略します。大体これで釜ケ崎の一応内容の一端を申しておりますが、そこで私はひとつ労働部長に聞きたいのです。             ・
 そこで分室をお作りになつて対策を講じていただいておりますので、大へんありがたく存じております。しかしこの問題について、釜ケ崎の問題を一列に失業者とこう称しておりますが、この際ひとつ私は労働部長に、普通の職安に通つておる日雇労務者と釜ケ崎とは、別な角度ではつきりと労働部長の頭の中で分けてほしいと思います。
ということは、片一方の方は民生委員が証明して、そうして失業手帳をもらつて行つておる。片一方の方は失業者じやないのです、一定の固定した定着した仕事をやる人ですわ、いわゆる職のない人じやないのですね。その点をはつきりしておいてもらわんと、今後いろいろな問題が起こつてくる。                
 たとえばあなたのやつている分室の出しておる相場が一日800円、安定所の相場が300円、同じ府が取り扱う労働あつせん所において賃金がどうして違うのか、こういう問題が生じてくるわけなんです。従いまして、ここをはつきりと区分けしておいてほしい。
それから今申しましたように、この連中の就職を阻害している問題として、それは保証人の問題があるわけですね。これはこの間現場の分室で、ちよつと若い者がおるから、どうしたんやと聞いたら、運転手の免状を持つておるけれども、保証人がないので勤められない。こういう点も、今まで大阪の父親のない子のために大阪府知事がかわつて保証人となつて就職の道を開いておるのと同じように、これは何かの団体ですね、いわゆる知事の名において保証してやるというような制度を、そのためには損害が起こる場合もあると思います。従つてその損害が起こる場合を予想した予算をとつてですね、一応保証人制度をこしらえてやる。
 それからまた立ち上がり資金の問題も、なかなか二、三聞いてみると、やはりここひと月もおりません、いつ もおりません。大体その日食べるだけの金額で生活して、少々たまれば、少し衣装をこしらえて勤めに行きたいという連中もだいぶおるように見受けられるので、そういう立ち上がり資金の対策ですね、こういう点について、一番初めの性格の問題と両方部長からひとつ答弁願いたい。
 これはこの間山谷で視察したのですが、今度の陳情にも出ております、宿屋の共同組合を作るということについてのご指導を持つておるかどうか。

○労働部長(寒川 喜一君)

 従来から酒井議員さんには直接委員長さんを初め同様に現場を見ていただきまして、非常にこまかいご指示をいただいておりまして、われわれとしてもそういうことを十分参考にしつつ今日までやつてき、これからも対策を立てようと思つております。それにしましても、ただいまご指摘にありましたように、職業安定所に登録しております、いわゆる生活の本拠を正式に大阪府で持つて働いておられる人と、浮浪者と申し上げてはあるいは語弊があるかもわかりませんが、そういう面でははつきりしない立場の人とは、対策の上において截然とご指摘のように区別をしてかからなければならないと思います。
 しかしながら、議員さん方と同様、私も実は、労働部長が視察に行くというような形じやなしに、個人で非常に反覆してあそこを見ておりますが、非常に言うならば気の弱い、生活力の乏しい、善人の部類に属する人がかなりおられるわけであります。こういつた人々につきましては、先ほどご答弁を他の議員さんに申し上げたように、現在の手続きというものを労働省と折衝して簡素化するように実はいたしておりますが、それができて、それに応じてもらえる人は、はつきりした形でですね、労働部の行政のワクでめんどうを見ていく、それ以外の人につきましては、これは行政のどうしてもワクからはみ出る人でございますので、それはそれの対策をやはりほつて置くのじやなしに、行政に協力してもらえるような形で、言うならば当初から申し上げておりますように公益法人等を作つて幅のある運営をしてみたい、そのことが同時におつしやられました保証人の問題と言いましようか、保証制度の問題、あるいは立ち上がり資金の問題に関連を実は持つてくるわけです。ご指摘のように、現在の日本の制度としては、若いこれからの人々に対しては公的な保証制度もございます。しかしながら、中年以上のこういつた人々に対しての制度はございませんので、当初やはりこういう問題は公けの力でバツクアツプしてあげなければ、性格が性格でございますので、立ち上がりたくても立ち上がれぬ要素を実は持つております。これも役所が全部引つかぶるという形は、やはりいろんな相談をせねばなりませんのでかなり困難がありますので、強力な民間団体等で保証をする形をとつていただいて、府が再保証と申しましようか、いろいろの方法がございますが、そういう形で民間関係に安心して使つていただけるような、
 実は当時酒井さんにも申し上げましたが、かなりわれわれのところにも相談はございますが、雇いたいのだけれども、昼めしの間に電気ドリルを一つ持つて行かれると何のために雇つたのか実はわからなくなる。それが悪意でなくとも、次のところに行きたいというようなことで、背に腹はかえられず、つい手が出るというような形もあるので、何とかしていただきたいという実は要請もございますので、これらの問題についてはひとつ真剣に考えてみたいと思つております。
 それから共同で宿泊施設を作るという問題は、議員の皆さんも山谷の実態をごらんになつて、この面ではかなり進歩的と申しますか、前進的な運営をなされておりますことをわれわれも実は承知しております。従つて、本来労働行政の分野でございませんが、まあ災害が起こりましてちよつとこう頓挫の形になつておりますが、現在福祉対策協議会等がございまいが、ああいうものを将来の釜ケ崎対策委員会等の形に正式にしていただきまして、府市の関係者、あるいは学識経験者、議員の皆さん等にも入つていただいて、何とか抜本的なことに方向づけるあり方を常にしていただかないと、問題がなかなか片づかないのでございます。私見を申し上げて恐縮でございますが、お考えについては大賛成でございまして、これらについては、もしそういう組織ができますにらば積極的に申し上げて、ただ単に時間の経過で、うわさが消えたらまた従来どおりというようなことでなしに、再度こういつた問題が起こらないように、抜本的な措置を講ずることが適当と考えておりますので、将来とも変わらざるご鞭撻をいただきたいと思つております。 

○酒井 朋三君

 この間山谷に行つたときですね、山谷の宿屋の組合長が非常にしつかりしておりまして、この人が、大阪の組合長はもうひとつ弱体であると言つておつたから、これはやはり労働部からバツクアツプしてですね、あの公立の府営とか市営とかはいやがつて行かん性質を持つている、やつぱり何か宿屋におやじがおつて、そのおやじに一日百円払つて泊る、困つたときにはちよつと金を貸してくれるとか、けがしてきたらめんどう見てやるとかいうような状態で、特殊の存在であるから、必ずしも公営の住宅がええとは言われない。でこれはひとつ宿屋の組合を調査して、労働部でバツクアツプして善導していただきたいと思います。われわれの委員の中にも、谷さんみたいに非常に宿屋に経験の深い人もおりますから、こういう人の意見も大いに取り入れてやつたら、大阪として変わつたものができるのじやないかと思います。 ・
 ただ単に立ちのきをせよというようなことを申し上げても、現在の状態が、設備その他が悪くとも一流の旅館なみの収入が実際にある以上は、非常にやはり問題があるわけでございましてそういう人々を統合して株式会社組織の大きなホテルを作つていくとか、収入がありますので、公的な、あるいは公的に関連した融資措置等をとつて償還計画を作つてやつてもらうとか、 ・
 それから次に、実は手配師の問題、これが非常に極端に悪いやつや悪いやつやとありますがね、これはちよつと問題になるのは、けさの「大毎」に出ておりましたが、大阪港はマヒ状態が続いて荷役作業ができない、沖に泊つておるのが52隻、それからその中でもギリシヤの貨物船が45日泊つておる。それから一方労働者は、災害地の復旧工事で高賃金で奪われてしまい、求人連絡員が西成方面へ出かけても、賃金の値上げを要求するばかりでほとんど人が集まらない。
問題はここです。これが貿易の方に関係してくるのです。荷物を早く揚げてまた積まして帰さにやいかん。それが大阪の港は荷役ができないということになつたら、貿易業者が船に積まない、船荷証券くれませんから銀行も金を払いません、この点が大へんな問題です。そこでやはり荷役をするについては労働者がなければいかん。ところが今のあそこの西成分室では人間の市が 立つている。800円、1,000円、1,500円、こういう状態です。ここが問題で、大へん私は困つてくる問題やから、これをどうするかについて、労働部長さんはどうお考えになつておるか、一ぺん聞かしてもらいたい。

○労働部長(寒川 喜一君)

 その問題は実は非常に大きな問題でございまして、ひとり大阪だけの問題でもございませんが、同時に今酒井議員さんからご指摘になりましたように、国際的な問題にもなつているわけであります。私たちが承知しておる範囲内におきましては、月額1億3千万、年間15億以上の滞船料を実は支払つているわけであります。金が払えればそれで済むかという問題になりますと、国際的な問題になりますと、大阪の港に行くとあとのスケジユールが立たないということで、信用の問題にもなるわけでございます。先般運輸大臣が見えた際に、私もその席上に伺いまして、港湾の施設の問題と同時に、やはり人の問題が解決しないと問題が解決せないということをつぶさにお聞きしたわけです。
 戦前には常傭の労働力が60ないし65以上ありまして、残余のものは日雇いその他の関係で補つておつたのが、現在は逆転しておりまして、常傭が40弱しかない、あとは日雇いあるいは釜ケ崎のような状態の人を使わなければどうしても困るということであるわけでございまして、抜本的にはやはり他の地区から労働力を持つてくるということが先決問題であります。
 そのことにつきましては、西日本にも関係を持ちましていろいろとやつておりますが、現在までのところ、10人きますと2人ぐらいの歩どまりしかございません。と申しますのは、労務管理の実態が一番遅れておりまして、従来からおられる諸君とまあ一緒に生活をせなければいかん、いわゆる飲食のつき合いあるいはいかがわしい遊びのつき合いをせないとどうしても郷に入れないというようなことで、帰つて行かれるわけでございます。  そのことに関連して運輸ご当局も、やはり元会社が責任を持つて、まず生活を営みつつ労働に従事できるというような問題を考えなければやはり片づかんのではないか、いわゆる飯場へ入れてみんなと生活するような状態での労働では喜んできていただけないということで、先般閣議で運輸省が作るか労働省が作るかというような問題がございまして、その結果緊急港湾対策として、人の関係と直接関係がある労働省が家の問題も含めて同時に人の問題を解決する対策がよかろうというようなことで、さしあたり先ほども申し上げましたように予備費で家を作ることになつたわけでございます。
 これを機会に西日本から人を入れたり、同時に従来からの、現在もう準備が終わつておりますアパート二棟をも含めまして、先ほど申し上げましたような440人分と合わせますと、ある程度の労働力が確保できるのじやないかというようなことになつておりますので、われわれも関係方面に呼びかけて、特に沿岸漁業が最近は非常に不振でございます。従つて、山陰、長崎県の五島、そういう方面から人を迎えたいと思つておりますと同時に、引き受けられた方々が帰さないように、従来の感覚と違つた労務管理を会社の責任においてやつていただくというようなことで、業界ともいろいろ話し合い中のところ、やや結論らしいものができたときに、今度の台風が起こつておりますので、若干一段落がつきましたら、業界と十分最後的な話し合いを遂げまして、できるだけ努力をしてまいりたい、かように考えております。

○酒井 朋三君

 この状態を見たら、私は港湾荷役のストライキと一緒やと思う、具体的に言うて……。 であり当時あなたの方も分散策を講うぜられて、あの方面に、いわゆる釜ケ崎の連中を一部移動さすということをお考えになつておつたと思いますが、ところが相変わらず通つておると、これね、漫々的だやつておつたら大へんな問題が起こる。
 私に一つ案があるのですが、この際港湾荷役の会社ですね、これはみな倉庫なんかに関係があるから、海岸の倉庫を一つあけさすのです。それを急造して宿舎をこしらえて、たとえば釜ケ崎におる中でも比較的労働力のある、体力のある、あるいは性質のええ者をそこへ持つてくるのです。そうして100円で入れているやつを30円ぐらいで入れてやつて、一応300なら300確保してしまわんと、まあ各地から寄せることもけつこうですけれども、この際緊急にですね、やはり500人くらい移動さす、海岸倉庫があるのだから、その倉庫を一つあけて、二階にベツドでも入れて仕切つてやつたら500人くらい一棟に入ると思います。そういうものをひとつ、港湾荷役の関係と相談して、はつきりと500なら500その方へ早急に移動させなかつたら、今のままの分室で置いといたら、相場の高いところへ行きますから、依然として港の港湾荷役はスト同様になるから、先ほど言われたように、滞船料の問題だけでなく、国際問題もあるし、同時に輸出業者、輸入業者が受ける被害が大きいと思いますので、これひとつ時期が時期ですから申し上げておく。
 それと同時に、今あなたのおつしやつた財団法人のあつせん所ですね、早急にひとつ認可をとつて発足してもらわんと間に合わんと思うので、ひとつ部長の見解をお尋ねしたい。西成分室も災害のごみ片づけやなんかで1,500円の相場立てておるのに、800円では何ぼ言うても行きませんわ。現在西成から行つておつた労務者のうち、中谷組という組がもう百数十名直接作業の形で現在就労をいたしております。
 
○労働部長(寒川 喜一君)

 前段の点につきましては一ぺん築港の業界とよく話してみたいと思います。
 本船その他の関係からしますならばどうしても片道一時間半、往復三時間というようなロス等もありますので、業界自身も真剣になつておられます。そういうようなところはさしあたり普通一般民家に分宿さすとかいうふうなことで、一般業者に配慮を願つておりますが、ただいま申されたようにたとえば倉庫を改造するとかいうような点につきまして、は、業界とよく話し合つてみたい、われわれの予備費でやつていただけるものは、すでにあの二棟のものはもう建築に着手するわけでございますが、両々相まつてできるだけひとつご質問の趣旨に沿うような結果が出るように努力してみたいと思います。

○酒井 朋三君

 それはひとつ善処願います。大へんな問題ですからね。それから私がさいぜん申し上げました手配師、何々組というのは手配師のことですが、そのいわゆる暴力的な手配師と善良的な手配師とをよく区分けして、善良な手配師、すなわち何々組というふうな身元のわかる、むちやなあら取りをしないものはやはり育てていく方が、こういうときには数をそろえていくのにいいのではないかと思います。その辺も一律一体に考えないようにお願いいたします。 

○労働部長(寒川 喜一君)

 今の点ですが、実は何々組という良心的におやりになつておる組もないことはございません。しかしながら、職業安定法自体から言いますと、労務供給事業でございまして、現行法から申し上げますと、アウト・ロードになつておるわけでございます。
 従いまして先般中央に対して実情に即するように法を改正してくれということを要望いたしております。たとえばマネキンあるいは理髪、そういう関係につきましてはですね、有料の職業紹介を認めておりますのに、労務供給業だけが現行法ではそれができないというような事情になつておりますので、その点は中央にもそういうことを申し入れまして、できるだけ、大阪はむつかしくて人が逃げていくというのではご趣旨に沿いかねますので、そういう意味での善処をしてみたいと思います。

○酒井 朋三君

 そのとおりです。看護婦でもみなあるのですから、そういう考え方で大阪の実情に沿うように新しい道を開いてほしいと思います。                ・