「特別清掃事業」は、釜ケ崎の高齢労働者の強い要望と行政に対する働きかけによって1994年11月から、大阪市と大阪府がと同時に実施したものである。
特別清掃事業は、登録輪番制がとられ、就労現場として、「あいりん地区」内道路と「あいりん総合センター」フロアーの2ケ所があり、このアンケートは、大阪市の街路清掃の寄り場で、就労する労働者にアンケート用紙を配付し本人が記入、その場で回収する方法でおこなわれたものである。
「特別清掃事業」への登録労働者は、九四0人にも及んだが、94年中にアンケート結果をまとめるという時間的制約のため、回答者は286名に留った。それでも、調査対象者の30.4%をカバーしており、登録労働者全体の傾向を把握するに充分な数であるといえる。
生別は男性のみで、登録者全体の中にも女性はいない。平均年齢は62.2歳で、登録対象者が55歳以上であることを考えてもかなり高齢にシフトしているといえる。最高年齢は84歳であった。最小年齢は49歳で、「障害者手帳所持者」である。
現実に野宿を余儀なくされている労働者は169名(59%)に達している。
また、その日は野宿をしていないが今でも時々するという人を含めると188名(65.7%)となり、野宿を経験したことがあるものを加えると236名となる。
この数字はドヤ居住者と現在野宿を余儀なくされている人との合計(223名)とほぼ見あっており、野宿をしたことがないと回答したもの(31名)はアパート・文化・借家に住んでいると回答した人(33名 )とほぼ見あっている。
今までに年齢を理由に仕事を断られたことがあると答えたものは全体の79.7%(228名)にのぼっている。
最近半年間に現金で仕事につけた者は77名(26.9%)で、平均して週に2.2日働いている。単価13000円として週に28600円の収入となり、7日で割った一日平均では4085円となる。
契約仕事の回答は実働日数を答えた者が極端に少なく、収入の推計はできないが、62名(21.7%)が飯場にいっている。飯場にいった平均回数と平均滞在日数から、1ケ月平均して2日就労しているに過ぎないと推察される。
特別清掃事業は釜ケ崎の現実に対応しようとする、小さいながらも、前進する一歩であったと認められる。
だからこそ、清掃事業に今後も続いて就労したいとするものは、他に条件のよい仕事があれば移りたいとするもの(31.8%)を大きく引き離す56.3%にのぼっているのであり、
就労内容や場所に付いても、「今の仕事よりも労働時間や内容で多少キツクなっても就労を希望するか」の設問に対し、51.4%が「単価が同じでも就労日が増えるのであれば就労する」を選択、
「単価や就労日が増えるのであれば就労する」を選択したものとの合計は、88.8%にものぼるという期待の高さを示しているのである。
現実的には就労日が少なく、賃金も低いので、野宿の状態を脱するほどの効果を持たないものであるが、就労するものは「久しぶりに風呂に入れる」と喜び、350円の自弁の仕出し弁当にすら「久しぶりに人間らしいものが食べられる」と、感激している。
このような人々を、清掃事業を打ち切ることによって切り捨てることがあってはならない。
平均年齢と平均在釜年数から算定される平均来釜年齢は42.6歳で、登録労働者の平均像は、働き盛りで釜ケ崎に来て高齢化した人々と言える。
しかし、在釜4年以下の登録労働者の平均年齢は、全体の平均年齢に近い62歳であり、高齢化して釜ケ崎に来る人々が増加していることを示している。これは、行政の高齢化対策の遅れが釜ケ崎への高齢者の集中を招き、野宿者の増加となっていることを示しているものといえる。
以上
アンケート回答者 286名
最小年齢 49歳 最高年齢 84歳 平均年齢 62.2歳
49-59歳 89名 60-64歳 124名 65-69歳 52名 70-84歳 21名
最小在釜 1ケ月 最大在釜 45年 平均在釜 19.6年
0-4年 37名 5-9年 14名 10-14年 47名 15-19年 26名 20-24年 43名
25-29年 42名 30-34年 44名 35-39年 16名 40-45年 14名 無回答3名
最小1年 最長50年 平均15年
農業(22名)・漁業(3名)・林業(4名)・炭坑(12名)・港湾 (13名)・繊維(9名)・造船(10名)・鉄鋼(20名)・石油(3名)・建設土木(99名)・他(47名)・複合(20名)・無回答(24名)
複合内訳ー農業4名 港湾10名 炭坑3名 造船6名 建設14名 他7名
イ・それは事務職でしたか現場労働でしたか。
(事務職−24名・現場労働−177名・無回答−85名)
(現金−110名・契約−75名・半々くらい−86名・無回答−15名)
回答者77名の平均 だいたい週(2.2)日位。
回答者62名の平均(3.6)回で、平均滞在(3.2)日・実働(16.1)日
(ある−199名・ない−67名・無回答−20名)
(ある−228名・ない−44名・無回答−14名)
(ある−184名・ない−68名・探す方法が分からなかった−24名・無回答−10名)
(新聞で−28名・職安を訪ねて−23名・西成労働福祉センターで−47名・センター及び周辺で−32名・知り合いのツテで−25名・他−8名・複合−30名・無回答−93名)
(ガードマン57名 ビル・公園など掃除34名 片付け23名 会社雑役4名 遺跡掘4名 他に、テキヤ・皿洗い・土工・等々)
(建設土木工事46名 ガードマン34名 清掃22名 片付け10名 遺跡掘5名 草むしり4名 他に、ヨセ屋・飯場賄い・皿洗い等々)
(単価 時給 平均958円 日給 平均11,068円)
(今の前日紹介でよい−119名・当日の朝紹介するほうがよい−161名・無回答−6名)
(満足している−231名・不満である−38名・無回答−17名)
お金が少ない12名 仕事を増やして22名 週に2回は−34名 週に3回は−18名 他に、ガードレール・公園の仕事も・8時間にして上積みを・仏作って魂入れずということ
(満足している−139名・不満である49名・無回答−98名)
時間が遅い31名 週3回は−21名 もっと仕事を出すこと8名 毎日4名 他に、終了時間を5時までに・朝10時からの方がよい・ もう少し隅々まで洗うような点・センター清掃の方も弁当出して欲し い・足が悪くて出来る仕事を等々
(今後も続いて就労したい−161名・他に条件のよい仕事が有れば移りたい−91名・両方に丸−2名・無回答−32名)
(単価や就労日が増えるのであれば就労する−107名・単価が同じでも就労日が増えるのであれば就労する−146名・両方に丸−11名・無回答−22名)
(白手帳を作ったことはない−68名・印紙を貼れなくなったので更新していない−48名・職安に取上げられた−22名・金融屋におきっぱなし−3名・失った−37名・持っていた70名・無回答−38名)
(あった−20名・なかった−161名・無回答−105名)
(する−148名・しない−42名・無回答−96名)
(とれる−203名・とりにくい−46名・とれない−10名・無回答−27名)
(ドヤ−64名・アパート−23名・文化−3名・借家−7名・持家−0名・野宿−169名・無回答−20名)
(したことがある−48名・今でも時々する−43名・よくする−64名・長くしている−81名・したことがない−31名・無回答−19名)
(目の衰え−25名・耳の衰え−10名・手が不自由−3名・足が不自由−17名・腰−22名・肩−0名・歯−49名・複合−108・無回答−52名)
(ない−126名・ある−112名無回答−48名)
(ない−70名・入院した−36名・入寮した−35名・お金を借りたー40名・相談に乗ってもらえなかった−20名・ほか−6名・複合−69名・無回答−10名)
(今受けている−12名・手続き中−5名・手続きすれば受けれると思う−17名・ない−223名・無回答−29名)
(連絡する家族は居ない−59名・時々連絡する−64名・よくする−19名・全くしない−135名・無回答−9名)
(生活ー居宅保護を受けたい−117名・自彊館等の施設に入りたい−98名・家族を頼る−16名・考えていない−47名・無回答−8名)
(行く−155名・行かなくても済みそうだ−25名・行きたくない−27名・年末の状態による−60名・無回答−19名)
(平均11.7日間)
(行けた人15名の平均は2.1回 行けた・それ以外の人は行けなかった)
以上総合目次