「釜ヶ崎対策」についての請願(93.10.)
釜ヶ崎就労・生活保障制度実現をめざす連絡会
(略称・釜ヶ崎反失業連絡会)
請願人 山田 実
住所 西成区萩之茶屋1ー10ー20
本田哲郎
住所 西成区萩之茶屋3ー1ー10ふるさとの家
村松由夫
住所 西成区萩之茶屋2ー8ー18 喜望の家
参加団体
釜ヶ崎日雇労働組合
釜ヶ崎高齢日雇労働者の仕事と生活を勝ちとる会
釜ヶ崎キリスト教協友会
西成署の暴行を明らかにする連絡会
連絡先
西成区萩之茶屋2ー5ー25釜ヶ崎解放会館内
釜ヶ崎日雇労働組合 電話・632ー4273
西成区萩之茶屋3ー1ー10ふるさとの家気付
釜ヶ崎高齢日雇労働者の仕事と生活を勝ちとる会
電話・641ー8273
紹介議員
1993年10月5日
大阪府議会議長 八木ひろし殿
請 願 主 旨
私たち釜ヶ崎(あいりん地区)で日雇労働者と共に生き、活動する諸団体・個人は、「バブル経済」崩壊後の釜ヶ崎において、多くの労働者が仕事に就けず、野宿を余儀なくされ、路上での無念な死を迎える状態にあることの打開を目指して、本日(9月27日)大阪府・大阪市の行政当局に対し、切実なる要望をいたしました。
大阪府会議員諸氏におかれても、釜ヶ崎の現状はすでにご承知であり、これまでも府会において対策が真剣に討議され、対策の実施に向けて努力が積み重ねられていることとは存じまが、私たちの要望についても一考を加えられ、なお一層、一日でも早く路上で死を迎える労働者がいなくなる施策の実施にむけてのご努力をお願いもうしあげます。
釜ヶ崎日雇労働者の苦況は、すでに2年を越えて続いております。にも関わらず行政当局の対応は遅々としたものであります。
そこで、苦況にある労働者を励まし、行政当局のより迅速な対応を促すために、左記事項の採択を請願いたします。
請 願 項 目
@大阪市と連名で国に対し、「釜ヶ崎総合対策に関する要望書」を提出されたい。
本来、釜ヶ崎日雇労働者の存在は、日本全体の経済や政府の政策に起因するものであり、大阪府・大阪市の2自治体だけが責任追求され、財政負担して対処しなければならないものではない。また、現行行政制度では運用上問題に対応しきれない面もある。よ って、現状内での精一杯の問題解決へ向けての努力を前提としつつ、より根本的対処にむけて国に責任を取らせる要望書が提出されるべきである。
そのために、府に諮問機関を設置されたい。なお、諮問委員メンバーには釜ヶ崎現地で活動する団体から推薦されたものを必ず含め、大阪市と調整した上それぞれの諮問委員メンバーの半数以上は意見調整を容易とするために府・市両諮問委員会兼任となるようにすること。
A日雇労働者の就労保障制度を確立されたい。
これまで日雇労働者の就労可能性は、景気の好・不況や季節によって大きく左右されるがままに放置されてきた。しかしながら、日雇労働者の存在が皆無になるということはこれまでなかったし、これからもありえないであろう。そのことは、日雇労働者の存在が現状の日本社会では欠くことのできないものであることを示している。
であるならば、景気の好・不況にかかわらず、一定数の労働者が安定して就労できる制度を設け、層としての日雇労働者の社会的認知が高められなければならない。
それは、業者を啓蒙してなされるのではなく、公共事業落札業者への吸収率の義務付けなどの実効性のある 規定を設けた制度として実現されるべきであると考える。
日本社会に必要があって存在している日雇労働者の就労保障制度を早期に確立されたい。
具体的には、すでに第一次石油危機当時より東京都で実施されている、公共事業への日雇労働者吸収制度ならびに福岡県のものを参考に、「あいりん職安」に紹介窓口を開設し、府発注の公共事業への日雇労働者就労保障制度を実施すること。
Bあいりん職安南分室の現在の職務の上に、次の機能を加えられたい。
イ・軽作業紹介窓口を開設されたい。
軽作業紹介窓口は登録制、且つ輪番制とし、発足当所において最低1日5百人分の職業紹介を確保するよう努めること。その後、登録数に応じ最低2日に一度就労保障できるよう大阪府が府下自治体へ協力を要請し、求人数の確保に努めること。賃金日額については、現行雇用保険一級印紙貼付を目標とすること。各自治体などでの就労の場合、雇用保険印紙貼付については、スタンプ代用などを考慮すること。
ロ・分室敷地に高齢労働者支援センターを建設、以下の業務をおこなうこと。
○自分たちで就労先を開拓し、仕事を回しあっている労働者グループについて、事務・連絡場所を提供し、小なりといえども企業活動となるように援助・育成する。
○内職的共同作業場を設け、運営をおこなう。
○年金その他社会福祉制度活用についての相談業務。
○仕事以外での社会参加の可能性を広げるためのボランティア養成講座など、高齢労働者の能力拡充のための成人学級の運営。
C毎年、繰り返される梅雨時期(4月ー7月)と年末年始の仕事減少については、特出し
(特別就労事業)をおこなうこと。
D白手帳(雇用保険日雇労働被保険者手帳)の運用について
イ・新規発行については、制約をもうけることなく、交付を申し出たものに対してすみやかに交付すること。
ロ・傷病・労災などの事情で窓口に出頭することができず、手帳更新時期を逸したものについては、再交付扱いとせず、通常の更新扱いとすること。
ハ・「不都合」により「罰金」を請求される立場にある元手帳保持者については、職安が被った実害のみの請求にとどめ、「罰金」部分請求は猶予すること。
E健康保険(日雇特例被保険者)制度について
イ・「みなし」適用における休業保障の等級を引き上げること。
ロ・現行制度では健康保険印紙を貼付しているものでも、一度入院などで健康保険印紙が貼付できない状態になった場合、再び働いて印紙を貼り被保険者の確認を受けるのは3月目からになる。その間は、無健保状態となる。例えば、1ヶ月毎に健保の資格確認をうけているものが、胃カイヨウで1ヶ月入院したとすると、退院後には健保の資格がないことになり、歯医者にもいけなくなる。
これは制度上の不備であり、休業保障受給停止後2ヶ月については、無条件に資格の継続を認めるー確認スタンプを押すー措置をとることとされたい。
F単身労働者用低家賃勤労者住宅を地区内あるいは隣接地に建設すること。
G「ホームレス・シェルター」を設置すること。
緊急的に、南海電車天下茶屋線跡地に越年臨泊並のプレハブ二棟を建てること。
設置にいたるまでは、現地野宿者援助活動団体に補助金をだすこと。
H「越年対策」のありかたを見直すこと。
イ・あいりん職安は年末年始においても業務をおこなうか、あるいは、12月末日に翌年1月について受給資格が確認できる者については、職安休日分について前払いの特例措置をとること。
ロ・臨時宿泊所の設置場所を地区隣接地に求めること。
ハ・大阪府においても状況の正確な把握を期すために、職員を派遣・常駐させること。
I釜ヶ崎労働者が「技能士」の資格を持つことのできる道を開くこと。
技能士養成講座・職歴の代替証明の発行など。
Jなお一層各種工事への日雇労働者吸収を図るための努力をおこなうこと。
以 上
大阪府議会議長殿
請願51号に関連し、
「あいりん地区」特別清掃事業の継続・拡大に関する請願書
請願51号紹介議員
内藤義道・塩谷としお
請願51号に関連し、「あいりん地区」特別清掃事業の継続・拡大に関する請願
本年1月4日、すでにご承知のごとく、当会は大阪府知事に対し、「特別対策事業の継続・拡大の申し入れ」をおこないました。
その後「阪神大震災」という不幸な出来事が有り、釜ヶ崎を取り巻く環境に変化がおこりました。多数の人々に不幸をもたらした天災が、釜ヶ崎への仕事増の元となったのです。
もとより他国の戦争を喜ぶ「死の商人」の感性を共有するものではありませんが、災害地の後片付けや新たな出発に向けての建設の必要性から釜ヶ崎の仕事が増え、現役日雇労働者の生活の一時的安定に繋がっていることは事実です。
西成労働福祉センターの調べによると、一日の現金求人数は5千人から6千人にものぼっており、なお現金・契約共に未充足が出ている状態であるとされています。
ある大阪府労働部の職員は、「地震の後、釜ヶ崎の求人は増えている。民間活力により釜ヶ崎の労働者は就労可能な状態にあるので、今、就労できない人達は労働行政の対象者ではなく、福祉行政で対応すべき人達であると思う。」と、個人的な感想を洩らしていますが、この考えは余りにも現実から離れたものであり、これから迎える「高齢化社会」に適したものであるとも言えないと考えます。
確かに特別清掃事業に登録した労働者の中にも求人の増加から現役復帰した人も居るし、地震以降何日か現金仕事で働いた人も居ます (勿論、仕事は地震から直接派生したものとは限りません)。
しかし、すべての労働者が、同じ体力、同じ健康状態にあるわけではありません。釜ヶ崎への求人が増えても、その求人内容に対応できない高齢労働者もいます。だからといって、働く気力が無いわけではありません。ただ、その人達にふさわしい仕事が限られているに過ぎません。
今後増え続けるこういった人達を、もはや「労働者」ではないとして労働行政の枠から切って捨て、いたずらに福祉行政の枠に追いやることが、「高齢化社会」を迎えるにあたっての正しい方針なのでしょうか。その逆に、なるべく長く生産活動の中に留ってもらうことが社会的に求められているのではないでしょうか。
府労働部は、特別清掃事業を臨時的なものであると位置付けています。確かに、府の実施する「あいりん総合センター」の清掃事業は、労働者の生活を安定させるほどの就労日数を保障しておらず、また、社会的生産効率の面からも不能率なものです。その上に、提案者には将来を見据えたヴィジョンの持ち合せがない。だから、緊急避難的かつ臨時的と説明せざるを得なかったのだと想像されます。
事業実施から4ヶ月、未だに同様の説明しかできないとすれば、説明者は怠慢の謗りを免れえないものであると思います。
なぜならば、就労している労働者の中に輪番で生じるグループに対する所属意識や仕事に対する愛着が芽生えているからです。いうなれば、特別清掃事業は、野宿を余儀なくされ個々ばらばらに存在していた先の見えなかった高齢労働者を、行政が対処可能な、条件が整えば自力で生活のできる層として組織した画期的なものであるわけです。
そう正しく現状を認識するならば、もはや臨時的とか緊急避難的といった説明が不適切であることは明らかです。
今後の課題は、登録労働者の所属意識をもっとたかめ、登録労働者の中の各グループが、それぞれに職域の開拓にあたるようになるまで、行政が方針を立てて支えることです。そのためには、当面、特別清掃事業の維持・拡大がなされるべきであると考えています。
「高齢化社会」に向けて、自活できる高齢者のグループづくりは、釜ヶ崎でなくとも急務とされているのではないでしょうか。
よって、特別清掃事業就労労働者や就労希望労働者の署名簿を添え、次の事を請願致します。
記
1.特別清掃事業の維持拡大を議会で決議され、理事者に予算的裏付けを求めること
2.本年3月分の特別清掃事業について、中断とならないように予算措置をなすこと
3.請願51号の各項について引続き審議をなすこと
以上
1995年2月17日
請願者 大阪市西成区萩乃茶屋2−5−25
釜ヶ崎就労・生活保障制度をめざす連絡会
代表 山田 実