子どもたちも抗議している

ー月刊「別冊フレンド」の西成差別問題ー

鶴見橋中学校・梅南中学校のとりくみから

1996・8・3
午後一時ー
於;大阪府総合福祉センター

[資料作成]
大阪市同和教育研究協議会
事務局(電話561−2407)


月刊「別冊フレンド」の西成差別問題に取り組んだ子供たち

大阪市立鶴見橋中学  

本校での取り組みの発端は2月15日だった。

偶然、日曜日に買った漫画に許せないことが書いてあると、3年生の女子生徒2人が「別冊フレンド」を持って訴えてきた。

 「注」に書かれた「大阪の地名 気の弱い人は近づかないほうが無難なトコロ」。

子ども達はこのことばに怒りながら、

「こんなん書くから西成が恐いと思われんねん」

「日本全国でこの本が売られている。読んだ人はみんな、西成とかかわったらあかんと思うで」

「自分の住んでいる、自分の好きな西成がなんでこんなふうに描かれなあかんねん」としっかり問題点を指摘していった。

怒りとともに、このことが西成に対する差別と偏見に満ちていることをきちんととらえていたわけである。

それから、鶴中の取り組みが始まった。

生徒会が中心になって自分たちの取り組みをつくりだしていった。

まず、全校生徒にこの問題を提起し、生徒全員から意見を吸い上げていった。怒りと悔しさと、そして西成が好きやねんという多くの声が寄せられた。

生徒会執行部はそんなみんなの気持ちを3月21日に開かれる西成区あげての講談社への抗議集会にぶつけようと、毎日おそくまで残って話し合いをつづけ、鶴中としての抗議文と質問状をつくっていった。

生徒たちが一番言いたかったのは次の2つである。  

1)講談社は全国に広がった西成に対する差別や偏見をどのようにして解消していくのか。

2)作者みやうちさんと実際にあって話し合いたい。そして互いに本音で話し合うことによって、作者の気持ちを知りたいし、私たちのことももっとわかってほしい。

ということである。 このことの実現のために、

4月15日には講談社のかたが鶴中にこられ、梅南中学校生徒会とともに話し合いがもたれた。  

6月15日には、みやうちさんが鶴中にこられ、約2時間の話し合いがもたれた。

2つの話し合いの中身は簡単にであるが、「生徒会新聞」に載せましたのでお読みください。

我が町西成が差別されたことを見抜き、素直に怒ったことから始まり、自分たちの町や自分自身を見つめなおし、何をどうすればできるのかを考え、一つ一つ実行していくことによって、少しずつではあるが自分自身とまわりを変えていく。

つらい思いを通してではありますが、この間の取り組みのなかで子ども達は大きく成長したと思います。


生徒会新聞 講談社の方との話し合いの報告
1996.4.20
大阪市立鶴見橋中学校生徒会

 前に「別冊フレンドという本に西成のことを「気の弱い人は近づかないほうが無難なトコロ」と書いてあったことで、鶴中生徒会として講談社と著者のみやうちさんに抗議をしました。

その時、抗議文と質問状を渡しました。抗議文の最後に「一度鶴中に来て、私たち一人ひとりの意見を聞いてください。」と書きました。

4月15日に講談社の人達に鶴中へ来てもらい、梅中と合同で話し合いをしました。

そして、納得行かないことや質問状に書いていない質問、それと自分が思っている事を思ったとおりに伝えました。

でも、相手は大人だから、自分の意見を緊張して言えなかった人もいました。

しかし、会が終わって、担当者に直接、がんばって思いを伝えた人もいました。

そこで、この話し合いに参加した生徒会執行部一人ひとりに感想を書いてもらいました。

一人ひとり感じ方や思いがちがうかもしれませんし、この会の雰囲気が十分伝えきれないかも知れませんが、講談社とみやうち沙矢さんからの文章を読んで感じたこと、取り組んでほしいことなどがあったら執行部に言いにきてください。


会長:K・A (パンフレットでは実名ですが、電子版では匿名としました。以下同じー電子版作成者注)

 みなさんに配られているプリントの一部にみやうち沙矢さんが書いたプリントがあると思います。

まず、これを自分一人で読んでください。

これに書いているように「西成は他の町と同じようにいろいろな人が住んでいて、良いところも悪いところもある。それはどの町も同じです。」と書いてあります。

みやうちさんはそれを「私も以前からずっとそう思っていました。」と書いてあります。

私たちはこれを読んでみやうちさんは西成の注釈をあーゆう風に書かれるとは考えもしなかったんじゃないかと思いました。

なぜかというとこれを読んでいるとみやうちさんがどれだけ西成が好きでどれだけ西成を大切に思っているのかが伝わってくるからです。

みやうちさんは今回のことですごく反省しているし、みやうちさん自身も西成を編集者の人の一方的な印象で、あーゆう風に書かれたことを西成が大好きな私たちと同じぐらいショックをうけたと思います。

だから、これからはみやうちさんを応援していってあげてはどうでしょうか。

みやうちさんのマンガは本当にすごく感動します。読んでみたら、みやうちさんのマンガの良さがわかります。私はみやうちゅさんが書くマンガもみやうちさん自身も好きです。

今回のことで少し嫌いになったこともありますが、みうやうちさんの文章を読んで前よりももっともっと好きになりました。

これは私の個人的な意見ですが、私たちがみやうちさんを応援してあげれば、みやうちさんはもっともっと今まで以上にすばらしいマンガが書けると思います。だから、みやうち沙矢さんを応援していきましょう。


副会長;S・A

講談社側の説明で研修会を設けても、「人権のことを言っても個人個人が聞いていなかったらいっしょなので、しかたない」というような発言の中の「しかたない」というところがひっかかって、がんばって質問しました。

今度は、みやうち沙矢さんと直接会って、堅苦しい雰囲気ではなくて、なごやかな雰囲気で、雑談も交えながら、西成のことをもっとわかりあえるような話し合いをしたいです。


執行委員;I・S

一番印象に残っているのは、杉本先生が

「高校に行っている子が、友だちに[あんたの学校があのマンガやめさせたんやろ]って言われたんですよ。まあその子は言い返せたから良かったけど、言い返せない子ならどうするんですか。会社の中だけで話し合われ、おわびを書いたら、みんながあっやめさせられたな、って思うでしょ。会社の中だけでなく新聞やなんかに出てやめた理由とかいってくれないとそういう誤解を持ったままになるんですよね」

と言われたとき、確かにこの問題を知らない人は、そうとるにちがいないと自分自身も思った。


執行委員;A・Y

講談社さんからの話しを聞いて、みやうちさんがやめなかったとわかったとき、よかったなと思いました。

理由は、西成のいい所とかみやうちさん自身の意見を全国に伝えてほしいからです。全国の中で、この本を読んでいる人達に西成っていうところは本当にこういうところなんだと思ってもらいたいです。


執行委員;M・M

ぼくは、編集者の人が

「新今宮駅周辺を通りかかったとき、道路に人が寝ていたり、ことばの調子におどろいたときの一面的な印象を書き加えました。」

と言ったのが気になりました。

ぼくの家は「夜回り」というのをしています。野宿をしている人におにぎりを配ることです。

ぼくの家で月曜日に梅田で配りにいきます。水曜日は日本橋あたりに配りにいきます。

できたら、講談社の人も「夜回り」にきてください。家の人もいってるので是非きてください。

そうしたら西成のことが少しでもわかってくれると思います。(話し合い本番では言えなかったのですが、終わってから、直接担当者に、声を震わせながらがんばっていっていたのが印象的でした)


執行委員;Y・M

ぼくは発言はしませんでしたが、思ったことを書きます。

講談社の人は普段から人権に関する研修会をひらいていますと言っていたけど、何であんな言葉が出てきたのかなあと思った。

研修会をひらいてもまだ、全国の人の西成に対するイメージが悪くなってると思うので、みやうちさんのマンガで西成のいいところをもっと書いていってもらいたいと思います。


生徒会新聞 みやうち沙矢さんとの話し合い報告
1996.7.
大阪市立鶴見橋中学校生徒会

 6月15日(土)に本校で、みやうち沙矢さんと話しをする機会がありました。

今回は、知らない、理解できていない所から出てきた偏見を、少しでもなくすためにも、みやうち沙矢さんのことを、そして、西成のことについていろいろな話しをしました。

マンガのことについてや、漫画家になった動機、西成の話などなど、いろいろな話しができたと思います。

はじめは、何から話ししたらいいのかわからず、緊張した雰囲気でしたが、徐々に打ち解け、少しですがお互いを知ることができたと思います。

今後、お互いに人権意識をさらにみがいて、いろいろな問題を学習していかなければならないと思っています。

一人ひとりの感想を書きましたので読んでください。


会長;K・A (パンフレットでは実名ですが、電子版では匿名としました。以下同じー電子版作成者注)

私は、みやうちさんと話をしてみて、やっぱり話ししてみないとお互いの考え方・気持ちがわかりあえないんだな〜と思いました。みやうちさんも楽しんで話しをしていて、すごく楽しかったです。貴重な体験をしたと思っています。


副会長;S・A

私は、みやうちさんと会ってとてもいい人だとわかりました。話ししてみると、みやうちさんが西成のことを思っていることがよくわかりました。

「[勉強しまっせ!]をもう一度連載しないんですか?」と質問したら、「もう連載しません」とみやうちさんが答えたとき、少しがっかりしました。

でも、これからもっといいマンガを書いてくれると思います。みやうちさんと話しができて本当に良かったです。


執行委員;I・S

みやうち沙矢さんに会うまでは、なんかかたそうな感じがしていたけど、会って質問や話しをしているうちに普通のそこらへんの人とそんなに変わりなかったと思う。

誰かが「どの漫画家に影響されましたか」「どうしてこの仕事をし始めたのか」というような質問をし、少しですが、みやうち沙矢さんのことがわかったような気がします。


執行委員;A・Y

みやうちさんとの話し合いで、ぼくが気になったことは、連載を中止するといったことです。

それを聞いてぼくは、なぜ中止するのかわかりませんでした。

みやうちさんは、感じの良い人なのでしゃべりやすかったし、質問もしやすかったです。質問していたなかで、いろいろみやうちさんが思っていることがわかりました。本当に有意義な一日でした。


執行委員;M・M

みやうちさんとの話し合いで、ぼくは、みやうちさんとじゃなく、講談社の人たちと話しをしました。

話しした内容は、全部、釜(釜ヶ崎)のことです。講談社の人たちに少しでも釜がどんなところか知ってもらいたかったのです。

そこで、ぼくが持ってきた本と学校にあった本を見せて、考えてもらいました。講談社の人とみやうちさんが帰るとき、ぼくの本をあげました。ほかの生徒会の人は、みやうちさんと楽しそうに話しをしていました。とてもいい経験になりました。


こんな取り組みも行われました

同和教育講演会

「釜ヶ崎」から見えてきたもの

ー西成・「釜ヶ崎」の差別を考えるー

講師;本多哲郎さん

カトリック司祭

社会福祉法人 聖フランシスコ会

「ふるさとの家」世話人

主催 大阪市同和教育研究協議会

福島区・此花区・西淀川区同和教育主担者会


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