「あいりん臨時緊急夜間避難所」とりあえず半年延長

2003年3月4日、「あいりん臨時緊急夜間避難所」で入所者アンケートを行った。このアンケートはこれで5回目。整理券配布数580枚、入所者数544人、有効回答数426人(回答率78.3%)。

入所者の姿 入所者の平均年齢は55.9歳(33〜72歳の範囲)でこれまでと大差ない。利用頻度については、入所者の半分がほぼ毎日利用しており、月20日以上の利用者も合わせて7割が常態的に利用している(表1)。

シェルターに対する希望 

「あいりん臨時緊急夜間避難所」は、2000年4月に、大阪市により3年間の期限付きで釜ヶ崎の三角公園南側の南海線跡地に設置された。今年の3月末日で期限が切れる。入所定員は600人。入所時間は毎日夕方6時〜翌朝5時で、夕方5時半にあいりん総合センター西側で整理券が配布される。また、シャワー(20機)や給湯器(3機)が利用可能、乾パンの支給があるが食事提供はない。釜ヶ崎支援機構は、市より委託を受けてシェルターを運営している。

希望について最も多いのが、弁当、おにぎり等の食事の提供(45人)であった。また、「景気は良くならないと思う。益々ホームレスが増えると思います。存続をお願いします」「なくなっては絶対困る。野宿はしたことがないので怖い」という存続や「もっとベッド数を増やして欲しい」という拡張を望む声(38人)、「午前5時の退出時間は、仕事のできない人間には辛い」という退所時間の延長を望む声(21人)が多かった。その他、シャワーの使用時間の延長や、冷暖房の設置等があげられていた(表3)。

シェルターは入所者にとって決して充分な環境とは言えないが、雨露をしのいで寒さから少しでも身を守ることはできる。襲撃の危険にさらされることもない。

 夜間宿所利用者に様々な要望があるように、周辺住民にも様々な要望がある。

 その再検討を踏まえて、国の基本方針・市の実施計画が定まるまで、方針未定のまま継続となった。


今宮連合振興町会連合会長・今宮連合第3振輿町会会長・今宮連合第4振興町会会長・今宮連合第5振輿町会会長・今宮連合第3・4・5振興町会 役員一同

要 望 書

 今般、南海線跡地にあいりん臨時夜間緊急避難所として、プレハプ設置計画を当地区に、一方的なる説明会が行われ、周辺の環境の著しい変化など、多大の迷惑を被る事、必至と住民一同反対しておりますが、民生局の強行突破に渋々ながら、従わずにいられない現状であります。

 この避難所設置により我々地域住民に対して、今後何等かの負担を強いることのない様、最善の努力をお願いする処であります。地域の環境浄化に我々地域住民として、次の事項を強く求めるものであります。このたび住民の意とするところを十分におくみ取りいただき、速やかに最善の努力を講じられるようお願い申し上げます。

 1:平成15年3月31日にお約束通り必ず完全撤去し、今後再び今宮校区内には設置しない事と、設置期限の誓約書を取り交わし、是を厳守する事。

2:管理運営に万全を期し、地区内の清掃と放置物件を除去する事。(放置自動車・屋台・大型ゴミ)

3:地域周辺の消毒を週一回必ず実行する事。

4:プレハブ入居者の結核と、伝染病予防の為、事前に健康診断をする事。

5:地域児童の安全登校に、最善の注意を払う事。

6:住民との間に、重大な事件が起こったときには、直ちに施設を閉鎖する事。

7:設置場所周辺の環境浄化施設(プランタン及び外壁美化等)と隣接区域に迷惑ならないように防音壁を設置し、防犯灯も増設する事。

8:海道消防署完成後の、仮庁舎の利用方法として、地域の集会所及び、今宮中学校校下の老人介護の支援センターサービスステーションに転用する事。

9:子供の遊園地並びに、老人の為のゲートボールの練習場等の憩いの場と、集会所を設置する事。(プレハブ設置場所の南側、南海跡地2区画)

10:三角公園の中に、トイレを増設(西南側)及び現在のトイレを拡張する事。

11:3年後の撤去した後の、施設跡地の利用方法は、地域住民の為に有効に使用する事に、努力を惜しまない事。

12:あいりん対策の苦情窓口を、大阪市(民生局保護課)に、設置する事。

13:南海線ガード沿いの路上の不法投棄のゴミ及び、不法駐車の撤去と露天商を排除する事。

14:南海線ガード下(花園交差点から阿倍野斎場)の車道の中央分離帯を撤去し、萩の茶屋から、天下茶屋方面(南北)に通行出来るようにする事。

15:地域の発展に住み良い明るい町づくりに助成する事に、力を借しまない事。

 以上15項目の要望に対し、平成12年3月15日までに、今宮連合振興町会連合町会宛に、文書にてご回答下さい。


投票に行こう大作戦実施

 「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」は、様々な人々の活動によって実現したものであるが、選挙によって選ばれた国会議員によって、国会で成立したものである。

釜ヶ崎を含む投票区「萩之茶屋地区」は、2001年参議院選挙時点で有権者数1万8千人であったが、投票した人は4千77人にすぎず、13,923人が棄権している。

 様々な要因があるにしても、この状態では、この地区の社会的存在が軽んじられ続けることが解消できないと考えられる。地区内での生活保護受給者が急増していること、野宿生活者も住民票設定してあれば投票する権利はあることなどを考えれば、萩之茶屋地区の投票率を上げることは可能である。

4月には統一地方選挙があることを踏まえ、昨年末の釜ヶ崎支援機構の理事会において、投票行動を呼びかけるキャンペーンに取り組むことが決定された。候補者・政党は誰でもどこでもいい、ともかく投票に行こう、と。

大阪市では、投票所に出向き、住所・生年月日を確認して投票用紙が手渡され、投票することになっている。郵送される書面をもっていかなければならないということではない。

野宿を余儀なくされている人々は、郵便物を受け取ることが困難な状況にあるが、選挙前3ヶ月以前に住民票が大阪市に登録してあれば、大阪で投票することができるわけだ。

現場通信や立て看板などで投票行動を呼びかけている。輪番労働者の関心は高まっていると言える。さて結果や如何に。何パーセントの上昇となるだろうか。


特掃の現場でのある日の出来事

車で現場へ移動中のことだが、助手席に乗っていた輪番労働者が、突然窓を大きく開けた。車は高速道路を80〜90kmで走行中である。運転していた私も、同乗していた他の労働者も驚いた。どうも、その人には車内の暖房が暑かったらしい。「びっくりするから、暑かったら暑いと言ってください」と注意を促すと、その人は言った。「すみません。昔はこんなんじゃ(一人で勝手な行動に出るようなことは)なかった。一人でテント暮らしをしていると、誰とも話をすることがない。たまに話しても会話は一方通行で分かり合うということがない。だから、一人でいるうちに、だんだんこうなってしまった」と。

なるほど。一見理解に苦しむ言動も、必ず理由がある。「知らなかった。ごめんな。でも、ものを言ってくれた方が分かりやすい」と私はその人に伝えた。

彼らが野宿の中の孤独に埋没してしまわないように、少しでも手をひっぱって人との接点を作ることも我々の仕事である、と肝に銘じている。(就労部門スタッフ)