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  • 2016年の大阪府・大阪市への要望
    2016年09月08日
    釜ヶ崎支援機構は、釜ヶ崎就労・生活保障制度の実現を目指す連絡会の一員として、行政に対して提言を行っています。

    さまざまな対策が実施されていますが、日雇労働者・ホームレス生活者の実情とうまくフィットしないために、制度のはざまに置かれて、野宿の困窮状態を続けている人々がいることを社会化していきたいと考えています。

    6月の就労対策・9月の生活支援に関する要望をアップいたします。

    9月末週に釜ヶ崎の日雇労働者対策全般についての要望を行う予定です。

    みなさまのご注目をぜひいただきますようお願いいたします!

    2016年6月17日

    大阪府知事 松井 一郎 様

    大阪市長  吉村 洋文 様

    釜ヶ崎の就労対策に関する要望書

    釜ヶ崎就労・生活保障制度の実現を目指す連絡会
    共同代表 本田哲郎・山田實・山中秀俊


     今年、5月のあいりんシェルター利用者数の平均は、21時閉門時の数えで、339人となっています。シェルター宿泊者数を除き、釜ヶ崎の路上で野宿する人は、100人前後です。シェルター利用者の中には、仕事に就くことができれば飯場や簡易宿泊所に宿泊し、失業すれば、再びシェルターに戻る者もいます。

     2015年6月のシェルター利用者調査では、ここ1ヶ月の宿泊場所を訊ねた質問に対して、14.8%の方が、「簡易宿泊所」と回答していますので、一日あたり約50人程度が生活困窮状態にあるものの、簡易宿泊所にその日は泊まっていると推測します。したがって、あいりんセンター寄り場で求職する者のうち、500を超える人々が、巡回相談・自立支援センターなどホームレスの自立の支援等に関する特別措置法による施策がもろもろ進展している中でも、未だに野宿に陥る手前の状態か、野宿を余儀なくされている状態に置かれています。

     ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)の結果、全国的には、ホームレス状態にある人の数の減少は下げ止まってしまった感があるものの大阪府においては漸減を続けています。しかしながら、釜ヶ崎に500人を超える人々がホームレス状態に置かれたままである以上、就労対策に関する責務と人権の擁護との視点から、緊急対策が十分な規模で実施されなければなりません。
     
     釜ヶ崎の高齢者には、90年代の建設求人の急激な減少により、野宿生活に至らざるをえなかったもともとの日雇労働者に加え、日本全体の高齢化の進展の中で、失業・社会保障制度の不備・親族との離別など種々の要素が重なり、常用就職と定年以後の年金生活という理想とされた形をとれずに、正規雇用から非正規雇用へ、そして日雇労働へとより不安定な就労形態へと移行せざるをえなかった人々がいます。国全体で高齢者の就労対策は取り組むべき問題ではあります。ただし、現実として、大阪においては、釜ヶ崎が最後にたどり着く場所となっており、住むところが確保された状態からハローワークやシルバー人材センターに通うことができない人が多数を占めています。こうした日々の生活をしのぐことで精いっぱいでありながらも働いて自活することを望んでいる人々に届く施策が実効的に展開されなければなりません。

     そのために今後の10年においては、高齢日雇労働者特別清掃事業の拡充を行い、少なくとも野宿状態に至らない・野宿状態を続けなくともよい就労対策を行うことが極めて重要です。

     財政再建の途上であっても、失業・野宿対策に対する予算が削減されることはあってはなりません。

     2016年は、建設業界の人手不足は一定の落ち着きを見せているものの、即戦力である技術を持つ高齢者の活用により賄われている側面が強く、若年者に対する建設業界への定着支援・訓練事業の必要性は今後も高まり続けると予測されます。

     そうした中で、若年の日雇労働者が活用できる建設業界における雇われやすさを可能にする訓練事業の創設が必要です。現状の建設労働者向けの訓練事業を見ますと、建設労働者確保育成助成金は、雇用主への助成の形であるため、日雇労働者は対象から外れてしまいます。
     
     西成労働福祉センターが実施している技能講習がありますが、訓練手当の支給がないため、貯えを十分にもつ労働者しか活用できません。訓練中の給付が可能なものとして求職者支援制度がありますが、住所を確保し銀行の通帳を設定することが必要になるなど野宿状態からの利用の難しさとともに、内容についてCADや設計などが中心で実技面の訓練がほとんどなく、釜ヶ崎の若年労働者のニーズに応えるものではありません。
     
     若年の日雇労働者はそのように制度面において社会的排除の下におかれています。仕事が途切れて野宿に陥る手前で、給付のある訓練制度が釜ヶ崎の実情に即した形で実施されることが重要です。自立への意欲助長につながるとともに、セーフティネットの一部としても機能する有効な就労対策であると考えます。
     
     自治体として釜ヶ崎の失業・野宿問題に対して鋭意努められることと併せて、日雇労働者・ホームレス生活者を対象とした就労対策を責任をもって実施するよう国に対して強く働きかけていただきますようお願いいたします。

     野宿状態にある労働者に実際に届く就労対策を求めて、以下要望します。



    (1)ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法の延長と同時に、就労対策を拡充できるよう国に求められたい。

    (2)55歳以上の高齢日雇労働者が、野宿状態から脱却できるよう、特掃事業を拡充されたい。

    (3)55歳以下の日雇労働者に対する就労支援策を具体的に講じられたい。
      長期的な視野で技能の向上、生活力の向上に資する給付付き訓練事業を就労支援策として実施されたい。

    (4)日雇雇用保険手帳の取得・維持を推進し、高齢者特別清掃や若年者向けの訓練事業において、日雇雇用保険の活用が可能となるように、国、大阪市とともに施策の充実を図られたい。

    以上



    2016年9月7日

    大阪市長 吉村 洋文 様

    釜ヶ崎の生活支援に関する要望書

    釜ヶ崎就労・生活保障制度の実現を目指す連絡会
    共同代表 本田哲郎・山田實・山中秀俊


     今年5月から開所したあいりんシェルター昼の居場所棟の利用は7月集計で一日平均261人となっています。今後も開設や利便性が周知されていくに連れて、利用者の増加が予測されます。
     
     2015年6月のシェルター利用者調査で「ふだん、どのような所に行っていますか(複数回答可)」とシェルター以外で利用している居場所について訊ねたところ、48.1%の方があいりん総合センターと回答しています。朝5時から9時の時間帯にあいりん総合センター以外に行き場所がない地域の実情があるため、昼の居場所棟の開所時間を拡大し、早朝より開所することが必要です。

     市立更生相談所が廃止され、西成区役所分館となる過程において、生活保護を受けることを望んでいない日雇労働者に対する支援の幅が狭められています。支障となる疾病を治療し、就労につなげる側面が、日雇労働者の医療支援には必要です。無料低額診療、短期行路扱いなど、いかなる制度の活用であれ、受診科目の限定につながらない施策を講じることが重要です。

     また越年対策において、日雇労働者が12月29日の午前中までに西成区役所分館へ相談に行けるとは限らないため、南港から釜ヶ崎地域内での越年対策へ替わったことの意義を踏まえ、29日午後以後の受け入れ態勢を整備すべきです。

     大阪府及び大阪市は、就労・福祉という枠を超えた領域で釜ヶ崎対策を行っていかなければなりません。大阪市は特に生活保護法及び生活困窮者自立支援法の運用について権限を持っているので、野宿状態にある者が、活用しやすい運用方法を市の裁量で実施するべきです。就労の意思が強く長期の野宿生活が確認できる者については、野宿しないでよい生活へ進む道筋がなだらかとなるよう実効的な対策を実施していくことが今求められています。

     生活保護による社会再包摂を、時の経過に任せて進めていく待ちの対策では間に合いません。

     今釜ヶ崎とその周辺に一日500人以上の規模で存在している野宿を余儀なくされている人々が、緊急かつ迅速に野宿から脱出できるよう私たちは求め、以下要望します。



    (1)昼の居場所棟を朝7時から開所されたい。また日曜及び祝日も開所されたい。

    (2)病気になった日雇労働者で医療費を工面できない者に対して、大阪社会医療センターの無料低額診療が実施されていますが、医療センターの診療科目にない眼科、歯科、耳鼻科について、必要な受診が制限されることがないようにされたい。

    (3)あいりんシェルターを利用し、技能講習を受ける者に対して、一時生活支援事業から弁当・衣服等の支給が可能となるよう制度を整えられたい。

    (4)路上、公園、河川敷等で長期間野宿を続けているものに対して、借り上げ型の低家賃住宅を提供するとともに、就労支援制度を作り、働きながら生活できる仕組みを作られたい。

    (5)生活保護法の具体的な運用については、自治体にかなりの裁量の余地があります。たとえば、東京都、川崎市、横浜市では簡易宿泊所で生活保護を受けることができます。また、北九州市では、野宿生活であっても生活扶助が窓口支給されます。現行の生活保護を勧めても、働いて暮らしたいとの思いを持つ釜ヶ崎労働者の希望と合致しないことが多々あることから、野宿生活からの脱却が進まないということがあります。そのため、住宅扶助単給と特掃の活用を運用の中に位置づけ、扶養照会や義務を緩和するなど、野宿から脱出できる支援を積極的に進められたい。

    (6)生活困窮者自立支援制度の住居確保給付金が長期にわたり野宿を続けざるをえない者が活用できない制度であるため、2年以内の離職票提出の免除などの緩和措置を実情に即して行えるよう国に対して働きかけられたい。

    (7)越年対策において、29日午後以後も必要な者には適宜支援が行われるようにされたい。シェルターに配置された市職員が面接を行う等の方法を講じられたい。